キャンプみたい

 森に入る冒険者が通常使わないであろうルートの獣道をユキたちに乗って進む。ユキも猛スピードでなく駆け足程度で移動してくれたので、顔へのダメージは少ない。

 途中休憩を挟んで準備した昼ご飯を頬張る。


「もう少し移動したいけど、二人は行けそう」

「「大丈夫です」」


 ホブゴブリンは体力もあるのか、二人とも疲れ知らずだ。出会った日から寝てる姿を見てないんだけど、大丈夫? 彼らの生態がいまいち分からない。

 こちらは、普通に腰と尻が痛いので不思議水を飲みストレッチをする。ギンはストレッチが好きなのか、相変わらず私と同じポーズを真似る。ギンも身体が凝るとかあるのだろうか? ツンツンとギンを突くと、突いていた指に乗られた。乗られた指に力を入れる。いつも肩に乗っていたから気づかなかったけど、ギンの体重が以前より少し増えたようだ。


「ギンちゃん、大きくなってきた?」

「大きくなるだえ~」


 今のギンは、ベニの三分の一もないほどのサイズだけど、将来はベニサイズまで成長するん?


「ユキ、うどん、お疲れ」


 ギンからオーク肉を出し、ユキたちに投げるといつものように空中でキャッチ、無心に肉に貪りつく。


 昼ご飯の後、再びユキたちに乗り迷いの森の方角へと進むこと数時間。腕時計の時間は15:30。ここまで来れば、他の冒険者と鉢合わせることもないだろう。

 キャンプにちょうど良い場所を発見。

 それにしても、通ってきた道にはゴブリンどころか兎一匹も見当たらなかった。こっちのルートは魔物や動物は出没はない? いつもだったら、めんどくさいくらい湧いて出てくるのに。ユキも先程から何度もクンクンと鼻を効かして、森の動物を探しているように見える。

 ユキから降りて、辺りを念入りに調べる。特に何も危険はないようだ。

 

「ここで、野営にしよう」


 ユキとうどんが何かを嗅ぎつけたのか、急に茂みの中へ走り去って行く。狩りの時間かな。

 ギンからキャンプ道具を久しぶりに出す。まだまだ新品並に綺麗な状態のテントをさっさと張り、中にブランケットを敷く。

 ダリアもバンズも子供サイズなので、ギリギリ3人でも寝ることができる、はず。二人は寝ないかもしれないけど、流石に今日は疲れているので横にはなりたい、はず。

 ダリアが興味深そうにドーム型のテントを眺めながらいう。


「こんなに簡単に家が出来るんですね」

「家……テントって言うんだけど、野営の時に寝るところ」

「それは家ではないんですか?」

「ホブゴブリンの家はこんな感じなん?」

「似てますね」


 話を聞くとホブゴブリンの家はドーム型状の土造り、ロワーの町にある宿のような大きな建物はないと言う。兎穴のような感じ? 野菜しか食べないし、ますます草食系じゃん。

 ホブゴブリン全員がダリアたちのように低身長であれば、小さな住処で事足りるだろうけど。


「ホブゴブリンは、みんな小さいの?」

「人族よりは小さいです」

「そうなんだ」


 この世界の人族は巨人並みなので比較がよく分からないけど……

 焚き火の準備はダリアとバンズに任せ、以前作った手作りのトリップワイヤーアラームを仕掛ける。

 ギンに玉を与え、夕食は野菜のスープと水パンに私は買っていた串焼きも食べる。


「芋も焼く?」

「「はい!」」


 ホブゴブリンの村の話で会話を弾ませながら芋を焼く。

 今、凄くキャンプって感じ。

 これよこれ。

 求めてた楽しいキャンプ。サバイバルではなく、ゴブリンフリーで美味しいものを食べながら自然を楽しむ。


(これぞキャンプ!)


 時刻は21時。二人は流石に疲れたようでテントの中で横になったので、一人で夜番をする。

 少しして、どこかに走っていったユキたちが帰ってくる。狩りが成功したのか満足そうに火の近くでゴロリと横になり尻尾を揺らす。


「何食べてきたの? 腹パンパンじゃん」


 ペロリとユキが舌舐めずりをしながら目を細める。よほど、美味しい物だったんだね。満足そうなので、いいけど。

 うどんが寝返りをしながら苦しそう声を出す。


「クゥーン」

「食い過ぎ」

 


 

 

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