ギンの魔法?
顔面凶器のガークに妻? いや、面倒見は良いし、安定した職業、それに子供には特に優しい。多分、良い夫ではあるけど……。
「本当にいるん?」
「何が?」
「妻が」
「……どう言う意味だ?」
「そのままの意味。エアー嫁とか妄想——」
ガークに『黙れ』と片手で口元を摘まれ口が尖る。
手からは独特な悪臭。くさっ。
ギンが私の顔を掴んでいたガークの手に触れると、ビクッとして手を離す。
「うお! なんだ? ピリっとしたぞ!」
ギンの攻撃? ガークにギンは見えていないが何かピリっと感じたらしい。ガークが、自分の手を見ながら不思議そうな顔をしている。
ガークの手は顔から離れたが、顔に変な臭いがついたままだ。
「手が臭い!」
「ああ。そういや少し前にゴブリン耳の整理をしてたからな」
「最低じゃん」
宿に戻り、不思議水で汚れた顔を洗う。食堂には通常よりたくさんの人が集まり、すでに酔っ払っている者もいた。面倒そう。
双子にガークの家で食事することを伝えると、とても嬉しそうに手を叩いていた。ガーク、本当に子供に人気だね。
ガーク家に行く準備をしながら、ギンに先程のことを質問。
「さっきのは、ギンの攻撃なの?」
「カエデ、痛いしてただえ~」
「ありがとうね。でも、あれは、おふざけだよ。痛くなかったよ。攻撃するのは、悪い人だけにだよ」
「分かっただえ~」
ギンは何かを考え込んでいるよう。ベニがギンは魔法も使えるようになると言っていたけど、さっきの攻撃もギンの魔法だったのかな?
私を助けるためだとしても、無差別に攻撃するのはやめて欲しい。これからは、良し悪しを学んでいこうねとギンを撫でる。
準備完了後、宿の外に出るとガークが待っていた。外はまだ明るい。ガークの案内でガーク家に向かう。双子もダリアとバンズもガークの側で並んで歩く。
「お菓子の賄賂とか渡してんの?」
「お前の中で、俺はどんな奴なんだよ。俺にも子供が二人いるから慣れてるだけだ」
「子供もいるんだ。ガークに似てるの?」
「幸運にも両方とも母親似だ」
それは、良かったね。ガークの子供は、九歳の男の子ショーン君と七歳の女の子トーワちゃんと言うそうだ。見かけだけなら、ダリアとバンズくらいか。
「子供に変なこと教えるなよ?」
「大丈夫。顔面凶器の話はしないよ」
ガークの家には、冒険者ギルドから歩いて10分ほどで到着。平家の一軒家だ。近いな。表には手入れされた庭があり、たくさんの花が咲いていた。
「お父さん! おかえり!」
家の中から小さな女の子が飛び出し、ガークに抱きつく。
「トーワ、ただいま。今日は、たくさん客を連れてきたぞ」
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