脱出

 石の魔石から壁に打った杭を足場に、ジグザクと負担を軽減しながら上へ向かう。

 推定体重25キロのバンズを抱え登るのは、それなりの重労働。階段にしたら三階分だが、息が上がる。足場が何度か揺れる。急いで上がらないと、ゴブリンたちと同じ墓場は勘弁!

 

「はぁはぁ。ダリア、付いてきてる?」

「は、はい」


 ダリアは、高所も問題なさそう。しっかりついて来ている。

 天井近くまで到着。やっと外だ! ゴゴとまた全体が揺れ、反対側奥の天井一部が崩れ落ちる。


「ダリア、急ぐよ」


 穴から這い上がり、外に出る。続くダリアが穴から出るのを確認。ユキたちが、遠くから穴に向かって吠えたので、ダリアの手を引きユキたちの所まで急いで走る。後ろからは、大規模な崩壊の音が聞こえる。振り返ると、穴のあった所には巨大なクレーターができていた。

 

「はぁはぁ。あと少し遅かったら、生き埋めになる所だったじゃん!」


 息を整え、シーツで背中に縛っていたバンズを解放する。


「大丈夫?」

「凄い音で……」


 クレーターを見たバンズは、足がすくんだのか、強張っている。

 腕を見ると、ゴブリンの歯形が付いている。何これ……こんな所、いつ噛まれた? 噛まれたら、ゴブリンとかないよね? ね? 

 不思議水をガブ飲みする。

 穴の中では暗くて見えなかったが、ダリアもバンズも身体中に小さな傷がたくさんできている。それに、ユキとうどんは白から灰色に変わっている。とりあえず、全員に不思議水を飲んでもらうが……


「みんな、汚い」

「ヴゥー」

「事実だから、反論しないでユキちゃん!」


 大体、ここはどこよ?

 辺りを見回しても、最初にゴブリン穴に落ちた場所とは、森の雰囲気が違う。ゴブリントンネルの中を随分歩いたから、森の奥まで来た?

 ギンに時計出してもらい、コンパスを確認する。南はあっちか。と言うことは、森の西部分にいるのか。


「とりあえず、身体を洗おう」

「ヴゥー」

「え? 乗れって? えー」


 ユキ、汚いじゃん。ユキの事いえないくらい私も汚いけど……。

 ユキが、早くしろと唸る。


「ダリアとバンズがいるじゃん?」


 うどんが、ダリアの後ろから脚の間に顔を入れ、掬うように背中に乗せる。ダリアのサイズなら、確かにうどんにも乗れるけどさ……


「バンズと一緒にユキに乗れって事?」


 そうだ、とでも言うようにまた背中を見せてくる。ダリアは、私よりもバランス良くうどんに乗っている。

 バンズに了承を取り、前にバンズを乗せ、その後ろに私が乗った。今までしがみつきながら乗っていたが、ダリアのようにピンと背中を真っ直ぐにしたら、以前よりもバランス良く乗れたような気がした。

 ユキとうどんが、西の方向に走り出す。

 え? そっちに行くの? どこ行くの?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る