マザーズデー

 見上げた天井には沢山の穴が空いており、その暗闇の穴の中でキラリと光る無数の目が見える。


「あれ、全部ゴブリンなん?」


 穴からゴブリンが這いずり、天井をうごめくのが暗闇でも分かる。ここは、完全にゴブリンのコロニーだ。よく今までこの数が地上に出てこなかったよ。ううん。多分、出てくる寸前だった。トンネルは壊れ始めてたし、地上のゴブリンは一旦引いていた。


「あー、オークの掃除の依頼にしておくべきだった……」


 なんで、ここに入るまで気づかなかった? 音は何もしなかったし、敵意も感じなかった。もしかして、ゴブリン眠ってた? 

 ゴゴゴとまた振動を感じる。これ、崩落してる音だ。他の部分のトンネルも落ちてる?

 来た道を戻っても意味はない。それは、分かっている。けど、この数のゴブリンと暗闇で戦うのも不利すぎる。戻る意味はないが、狭い空間で撃ち殺した方が楽かもしれない。来た道を戻ろうとしたが……はい! 戻れません!


「ピンポイントで崩落! 嘘でしょ!?」


 ここから戦うしかないか。ダリアとバンズは、不安そうな顔だ。対してユキとうどん……それに、ギンはやる気だ。

 

 天井からゴブリンたちが降り始める。

 バチーンバチーンと、地面にゴブリンがスプラッターする音が次々と鳴り響く。

 そうだった。ゴブリンは、基本おバカなのだ。ご自分たちが自害する分は構わないが、直撃して巻き添いにされたら、たまったもんじゃない。

 ゴブリンレインが段々と酷くなる。勘弁して!


「壁側に逃げるよ!」


 できるだけ壁側に寄り、ゴブリン落下大会が終了するのを待つ。

 少しは頭の使えるゴブリンは、壁を伝わりながらヤモリのように四足歩行でジグザクに降り、こちらに向かってくる。

 間近まで迫ったゴブリンは、簡単にユキの氷柱とスパキラ剣で始末できるが、キリがない。


 天井から甲高いクマゼミのような鳴き声が聞こえる。初めて聞くその音が鳴り終わると、襲ってきていたゴブリンたちが一気に引いていく。

 盛っていた食料の山の上に、大きな何かが天井から降ってくる。

 落ちてきた何かをヘッドライトで照らすと、大きなコモドドラゴンがいた。

 

「メスです!」


 ダリアが後ろから叫ぶ。

 メスってか、コモドドラゴンじゃん。あれ、ゴブリンじゃなくない?

 素早いスピードで襲ってきたコモドドラゴンの首を切り落とす。あ? 余裕で瞬殺じゃん?


「まだです!」


 ダリアの声で、振り向くとコモドドラゴンの切れた首から新たな首が生えてくる。


「えぇぇぇぇ」


 それから、何度となくスパスパとコモドドラゴン切るが、その都度、体が再生される。

 コモドドラゴン自身は、さほど強くない。でも、この永遠とも思える解体ショーのループ、カエデちゃん辛いです!


「ダリア、あれの殺し方って知ってる?」

「魔石の破壊だと……思います」

「魔石、どこにあんの? 全部の部位を切ったんだけど!」

「多分……母体のメスは、安全の為、魔石が体内を移動してます」

「体内を移動……母体……」


 あれって、ゴブリンのマミーなの? 似てなくね?













***

いつもご愛読ありがとうございます。


母の日、おめでとうございます。


トロ猫





 

 

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