市場
メインの市場の場所は分かりやすかった。街の真ん中の大きな銅像の周りで開かれるから。市場は盛況でたくさんの店が出ている。南米の市場って感じだね。しかし、大きな銅像。しかも…ハイネック、着物、それから丸眼鏡…顔立ち日本人。絶対日本人だって。串屋で串焼きを買いながら聞く。
「あれ、だれ?」
「なんだいあんた。勇者キヨシは、子供でも知ってるよ。はい。串焼き三つ半銅貨ね」
あれがキヨシか。ムキムキを想像してたけど、普通の学生さんて感じ。パクリと串焼きを食べる。
うまっ!! 何これ? 醤油焼きじゃん! この、つくねみたいに肉団子になってるのもいい!
「ねぇねぇ。このタレなに?」
「ショーユだよ。あんた、本当に何にも知らないんだね。どこの田舎から来たのよ」
「ははは」
串焼き売りが説明するには、醤油も勇者キヨシがもたらした物で市場でも買うことができるそうだ。
キヨシ! やるじゃん。
この調子だったら、米もありそう。米も欲しいけど、味噌ないかな。味噌汁食べたい。
「お姉さん。ありがとう。串も美味しかったよ」
「カエル焼きは、うちの名物さ。また明日買いに来て!」
「え…」
カ、カエルだと…聞いてないです。兎食いのカエデちゃんからカエル食いのカエデちゃんにレベルアップ? ダウン? ま…おいしかったからいいや。
お腹も満たしたし、市場を周る。
最初に足を止めたのが、服屋。中古服が多いけど…十分使えそう。試着出来るので、トップ二つとズボンを持って試着室に入る。
「どうだい?」
「うーん。この上の二つ。ズボンは長すぎたかな」
「そうだねぇ。そうだい! これは、どうだい? 子供服だけど、丁度いいんじゃないかい?」
差し出されたのは、子供用だからか? 靴下もついたお股にボタンのあるスパッツのズボン。ボタンを取ればお股がお披露目される。トイレ用? 試着したら、意外と心地よいので購入する。
「銅貨八枚だよ」
三つで八千円くらい? 服は高めだね。上の方にかけてある紺と黒のマントが目に入る。随分と長くかけてるのか、マントには少し埃がついている。
「ねぇねぇ。あのマントいくら?」
「あれかい? あれは、銀貨一枚だよ」
「あのマントも買うから、銀貨一枚銅貨五枚でどう?」
考えてる、考えてる。
「そうだねぇ…銀貨一枚銅貨六枚はどうだい?」
「うん。それでいいよ」
異世界、初値引き交渉。銅貨二枚も得をした。二千円引きだ。
お金を払い、埃を払ってマントを羽織る。サイズも丁度いいんじゃない? 残りの服は、バックパックに詰めるフリしてギンに収納してもらう。
次は肉屋かな。
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