やっと

「行き違いがあり、不快な思いをさせた」


 フェルナンドがコリンたちに釈明をする。門番も仕事をしただけだしね。

 コリンたちが、無事に牢屋から解放される。洞窟にいた全員ではなかったので、数人は普通に門を通ったようだ。カイ、アリアやエディ姉弟もいない。

 

「カイとアリアは、この町の出で問題なく通ったはずだ。エディとリーヤは、最後に見た時、体調の悪くなったオスカーを介抱していたが…ここにいないのなら先に町に入っているだろう」


 確かにオスカーは、凄く顔色悪そうだった。大丈夫かな? 話すくらいは出来てるみたいだから…大丈夫だよね?

 コリンたちは、没収されていたお宝も返してもらったようだ。


「カエデさんのおかげで、また助かりました」

「コリン…運が悪いね」

「いやはや、本当に…」


 賊関連の聞き取りが終わったコリンたちは、このまま商業ギルドと言う所に向かうそうだ。先に門を通った仲間もそこにいるだろうと予想していた。今後の宿の手配やお宝を売る交渉を商業ギルドでするらしい。賊からの戦利品は、お金はそのままいただいて良い。宝石など価値のある物を売る場合は、盗難届が出てないかを照らし合わせる時間が必要だそうだ。


「量も多いから、一ヶ月以上はかかるかも知れない。その間はこの町にいるさ。だがな…あの四人は、どうするのだろうか…」


 ロワーの街に行く途中で誘拐された母子に、双子だ。そうか、彼らはコリンと同じキャラバンではない。どうするのかと尋ねたら、母子の方は、このロワーに親類がいるらしい。それなら安心だね。双子は…村が襲われたって言ったからなぁ。フェルナンドに事情を話す。


「ガーザであるか…聞く限り、村の場所は、ここから遠く地図にも載らないような小さな村であろうな」


 双子は、村を出た事のないお上りさんだ。門番の壁も大はしゃぎで見ていた。今も落ち着きはない。私から見たら高校生に見えるが、二人はなんと十二歳だった。小学生かよ!

 フェルナンドに視線を送る。オスカーに頼まれて私たちに親切にしてるだけだろうけど…多分子供好きそうだし、双子の事をほっとけないでしょ?


「活きの良い二十八歳なのであろう? こちらは、墓に一歩入った初老だ」

「みっちり、後三十年以上は生きそうだけど」


 フェルナンドと水面下で双子のなすり付け合いをしたが…結局、私が負けた。うん。そうだよね。フェルナンドにそんな義理ないし。カイとカイの孤児院になすりつけられるだろうか? 双子が不安な顔でこちらを見るので、この問題は一時棚上げにする。

 オスカーに会おうと思ったが、医者に処方された鎮痛剤で寝ているらしい。仕方ないので伝言をフェルナンドに頼む。

 

「ちゃんと伝える。冒険者ギルドで、こちらと今後連絡が取れるよう、これを渡せ。首の件も説明しているが、懐からいきなり出すのは遠慮しろ」


 冒険者ギルド用の手紙と短期の身分証にユキとうどんの登録書を渡される。冒険者ギルドまで案内人も付けてもらった。ゲオルドだ。


「ゲ…オルド。よろしく」


 ちゃんと覚えた。双子を連れ町に入る。やっとで町だよ。長い…長かった。カエデよく頑張ったよ。自分を撫でるとギンにも頭を撫でられた。

 時刻は夜の七時。森と違ってまだ外が薄暗いだけだ。日照時間が長いの? 門には夕方前に到着したので…四時間も拘束されていた。

 とりあえず、泊まるところと美味しい物だね。

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