メープルシロップ

 スパンスパン


 スパスパと斬れるのがとても楽しい。ゴブリン5人組もあっという間に断頭。バランスを崩して斬りつけた木の太い枝までスパッと切れた。


 これさ…数ヶ月前に発見したかったんだけど! 今までの、木こり活動の苦労はいったい何だったん!?

 何でこんなに斬れるのかは分からない。そう言う加工なのかな? 魔道具的な? 軽くて使える武器、最高の見つけものだ。

 切れた木の枝から水っぽい樹液が出てくる。これは、メープルシロップかな? 最後に食べた甘いものは…数ヶ月前に食べた羊羹だ。ドライフルーツも甘いが…

 ペロっと樹液を舐める。水っぽいけど微かに甘い。以前木を切りつけても樹液は出ていなかったので、今が楓の木の樹液の時期って事? 後で樹液集めをしよう。


 ログハウスに戻り、床収納の残りの荷物を出す。お金の入った袋を開けると…銅の貨は緑青ろくしょうで覆われている。

 袋には、以前、湖の近くで持ち帰った金貨と銀貨も入っていた。そういえば、昔、緑青は猛毒だと言う誤解があったそうだ。小学校の理科の先生が言ってた。田舎の婆ちゃんは、青錆を取るには酢と塩って言ってたな…酢ならまだあるけど…塩はカエデライフに必要なので使えない。

 魔石は、知っている種類から…初めて見るのも多い。気になった水色の魔石だけ取り、残りは…赤い魔石もあるので、後で手袋つけて分けよう。

 地図は、以前拾った物よりはっきりしているが、書いてある字は読めない。

 書物は、巻物で封がしてある。勝手に開けるのも躊躇するのだが…横から覗く感じ、どちらにしろ読めなさそうなので保留。

 メダルは、首からかけられるネックレス仕様だ。勲章のようにも見えるけど…細工は硬貨よりも繊細。鉄のような青いメダルだけど、錆びてもないし…何の素材だろう。とりあえず、ネックレスとしてつけておくか。



▲▲▲▲▲▲


 甘味甘味甘味。


 今日は天気が良く、少し暖かくなってきたんじゃないかな。

 メープルシロップの樹液集めをする。

 随分前にカナダのメープルシロップ農家のドキュメンタリーを見た。うろ覚えだけど…


 楓の木は若いのではなく、ある程度育った奴を選ぶ。丁度、木をハグして両手が届くくらいの太さだ。

 木の幹に斧で傷をつける。5センチ程穴を開けたが、樹液が出てこない。何で? 気を取り直して別の木で挑戦。穴を開けるとジワッと樹液が出る。当たりだ。

 ホースとかはないので、木で作ったくさびを切り口の下に打ちつける。くさびから樹液が伝わり、ポタッと落ちた所にバケツを置く。バケツの上には、半分ほど蓋をする。その後、十本の木に同じく樹液採集用の器具を取り付ける。バケツが足りない所には、ゴミ袋を設置した。

 ログハウスにあった小さめのプラスチックのバケツは海外の品物なのか…容量1ガロンと書いてある。ガロンって…見た感じ水なら4リットルくらい入りそうだけど…どれも、きちんと熱湯消毒している。


 次の日、設置したバケツの確認に行く。あれ? 思ったより少ないな。一日でバケツの一割くらいしか溜まっていない…何だっけ、40リットルを煮詰めて1リットル出来るって話だったので…ぜんぜんたりない。せめて500ml瓶一つ欲しい。もう数日集めるか。


 数日後、樹液は15L前後ほど集まったと思う。樹液はまだ出ているので、バケツはそのままにしている。


「グギャアア」


 あーいらっしゃーい。

 結界の外にある、樹液の器具に気づいたゴブリンが木につけていたくさびをペロペロ舐め始める。カブトムシか!

 あの木は後で燃やさないとな…


 ゴブリン達を斬首して、ログハウスに戻る。


(帰ったかえ)

「うん。今からメープルシロップを作り始める」


 正しくメープルウォーターという物だろう。樹液は水のよう。一応タオルでこして不純物を除去する。

 一番大きい鍋でも容量が足りないので、継ぎ足しながらメープルウォーターを煮る。


 五時間後…


(まだかえ!)


 ひたすら煮ながら灰汁を取る作業。ベニは楽しくなさそうだ。

 味見をする。徐々に甘くなっているね。

 更に一時間煮込む。色も濃くなり糖度も増して来て、泡立ち始める。出来たね。まだサラサラだけど、鍋の底には砂のようなのがある。メープルシュガーだね。

 メープルシロップを濾過し瓶に入れる。500mlとは行かないが、良い量ができた。メープルシュガーは更に煮込み冷やしたら、固体の物が出来た。


 楓の木からカエデが楓汁を作る。フフ。


 冷やして完成したメープルシロップを舐める。


 うまし!


 

 

 

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