大猪の解体
シュパシュパ――。
風の斬撃で猪の肉を削ぐ音が森をこだまする。ナイフでは、一番柔らかい腹の部分以外は切れなかった。思ったより、内臓の量が多く、とてもグロテスクだった。内臓は離れに捨てる。胃袋を持ち上げ、捨て場への移動する途中で中から消化していないゴブリンの腕や足が出てきた。
「ダメダメ! うどん、これは餌じゃないから」
時間は掛かったが、内臓は全て取り除いた。手足を風の斬撃で切り落とし、皮を剥ぎ、ユキとうどんにあげる。
首は既に取れていたので、猪に乗り上半分の皮を剥ぐ。露わになった生肉を斬撃で切りたいのだが、心臓はどこだろう? この大きさだし、絶対魔石があるはず。風の斬撃で魔石を壊したくない。
心臓は、猪の中心にあると思うんだけど…グッと腹の部分から腕を入れて探す。猪の中はまだ生温かい。残念ながら手は心臓まで届かない。肋骨が邪魔だ。
心臓部分を避け、猪を半分に切る為に、何度も風の斬撃を放つ。
半分に切れたが、また風の魔石を補充しないといけない。
切れた半身から手を入れて弄る。まだ届かない? 躊躇したが、これからの工程を考えると、時間を無駄に出来ない。えい、ままよ。
猪に顔を入れる。もちろん、目の前は見えないが、これなら届くだろう。
手が硬い物に打つかる。これかな? 片手じゃあ足りない大きさだ。顔を出して、息をする。両手を思いっきり入れて引っ張ると、出てきたのは、拳より大きな魔石だ。血や肉片で何色かが見えないので、魔石を水で洗う。
色は茶色? いや赤くもある。茶色と燃えるような赤のグラデーション。宝石のメノウのようだ。ここまで、大きい魔石は初めてかもしれない。
猪の足に齧り付いていたユキが、興味深く匂いを嗅ぎにくる。匂いを嗅いで、興味を失ったのか、足しゃぶりに戻った。ユキたちは、白っぽい魔石しか食べないのだろうか? 兎に角、この魔石の検証は別の日にしよう。
猪を細かく分割する。風の魔法で狙いを定めているが、均等に切れているわけではない。
「とりあえず、食べれそうなところは全部切れたかな。運び始めるから、ユキたちは、他の動物が横取りしないように見張っててね」
肉をログハウスまで運ぶのに、二十数回往復した。運び終わった時、時刻は既に15時を過ぎていた。
猪は車くらいの大きさで、多分1トンくらいの重さがあったのではないかと思う。実際、回収できた食用可能部位の肉は100キロ前後。残りの運べそうな肉もユキとうどんの為にちゃんとログハウスまで持ってきた。その場に置いてきた残りの猪は、ゴキちゃんズがどうにかするだろう。
肉を全て洗い終えた頃には、日が暮れていた。
残りの作業は、明日だな。今日はお風呂入って寝よう。
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