湖には

 犬どもの所為で、時間は掛かったが湖に到着した。相変わらずの絶景だ。光に照らされた湖はキラキラと輝いている。とりあえず羊羹を貪り食う。

 さて、いよいよ審判の時だ。湖に向かい水色の魔石を取り出す。ここからどうするんだろう? 魔石を水につけてみるが何も起きない。


チャポンチャポンチャポン


「水を吸え!」


 ダメか~。もしかして空にしないといけないとか? 残りも少ないし全部水を出し、また水面に魔石を付ける。おおおお!吸ってる吸ってる。ブラックホールみたいだな。結構吸うね。これだったら数週間分の水が補給できたかもしれない。補充できて良かったよ! 水を吸い終わったようなので、魔石を首からかける。

 次に向かうのは白骨遺体の場所だ。今日はスコップを持って来たので彼らを埋めてあげようと思う。お掃除ゴキちゃんズがここまで縄張りにしているかわからないけど、キラキラ装備のおかげでこの人達は連れ去られずに済んだのだろう。ここの土はログハウス周辺より硬く、掘るのが難しい。申し訳ないが、残りの使えそうな装備は頂いて骨はみんな同じ穴に埋めた。墓標には、近くの大きな石を置いて手を合わせた。ここがどのような所かは分からないのけど、家族や愛する人たちにお別れも言えず無念だっただろうね。


「安らかにお眠りください」


 今日の目標は大体終わったので、湖を観察して行くことにした。あわよくば湖に魚がいるかもしれない。あ! ここにこごみが生えている。こごみはクセがなくて美味しんだよね。天ぷらとか出来たら最高だけど、油が勿体無いから無理だね。よし、収穫していこう。


プチプチプチ


 あ! この毛深いのはシダだな。紛らわしい。出身が田舎ってこう言う時に役に立つんだね。ありがとうお婆ちゃん!

 こごみも袋一杯に取れたところで、湖を観察する。反対側は遠くてあんまり見えないな。それに動物が全然居ないのも不思議。水飲み場なので、動物がいてもおかしくないんだけどな。鳥の一羽も見えない。魚もここから見る限りいないようだ。今日は晴天だから雲が湖に反射して幻想的だな。

 あれ? 水が膨らんできてない?


ゴゴゴ ザブーン


 はは…帰ろう帰ろう。

 今まで走った事ないくらいの全速力で湖から逃げる。何故なら水が盛り上がりザブーンと出て来たのは見たこともないくらいのデカいイカだったからだ。

 イカって湖にいなくない!? なんなんだここの世界…


「はぁはぁ、全速力出し過ぎて吐きそう」


 ログハウスには、いつもの半分の時間で着いた。どうりで湖に他の動物がいないんだよ! あんな化け物がいるだもん。あれと戦うのは無理だな。でもこれからも数週間に一度は水の補給に行かないといけない。困ったなー。

 うん。とりあえず対処法も分からないのでスルーだな。うん。スルー。

 その夕方こごみを調理しながら思った、あのイカは食べられるのだろうかと…じゅるり…イカ飯が急に食べたくなった。

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