閑話休題

後日談というか、今回のオチ


 後日談というか、今回のオチ。

 ゴールデンウィーク2日目の朝に俺たちはこんなことを言い合っていた。


「あんなふうに言ってくれてすっごく嬉しかったのに、隼人って肝心なところヘタレだよね」


「うぐっ……そう言うこと言われると結構、傷つくんだけど……」


「でも事実」


「うっ——」


「こんなにそばにいるって言うのに、どうして何もしないのよっ。私、結構待ってたんだけど? 寝室で、普通に、勝負下着で‼‼」


「い、いやぁ……なんか、直ぐにしてしまうのも……違う気がしてなっ。その、もっと関係を踏んでからというか……俺たち、まだ恋人なり立てだろ?」


「幼馴染で一緒にいたのは16年くらいだよね?」


「こ、恋人としてなっ‼‼」


「でも、私色々知ってるんだけどね? そこら辺にいる恋人になってから5年とかの人たちよりもたくさん知ってるよ、隼人のこと」


「……そ、それとこれとは違うからなっ。それとこれとは。よそはよそ、うちはうちってもんだ!」


「なんでお父さんみたいなこと……」


 というわけで、あり。

 俺は全くと言って変わっていなかった。


 齢18歳、そして今年で19歳。

 最後の十代を歩む俺はまだまだ子供だったというわけだ。


 エッチ……もそうだが、ましてはキスすらも出来なかった。


 まぁ、ヘタレでもクズでも罵ってくれればいいさ。俺的にはもう少し日を置きたい。いくら葵が望んでいたとはいえ、直ぐにそれに及ぶのはちょっと嫌だしな。ここはもっと——焦らしてみる。


 そうしてやれば、あいつももっと好きになってくれて、要求してくれるようになるだろ。これはすべて、計算通りだ。そうだ、焦らすための——計算通りだ。


 ちなみにハグはしたから許せ‼‼

 

 ぼそっと呟いた葵、そんなつまらなそうな表情を見て、俺はボケを一発。


「ははっ、将来を見越して……なんて」


「——しょ、将来? あ……っ~~~~そ、そっかぁ……」


 一発すら当たらなかった。


 クリティカルヒットはしたがな。


「何照れてんだよ、きもいぞ。俺に散々言ってくるくせによぉ」


「そ、それとこれとは違うでしょ‼‼ わ、私は自分から言ってるじゃん! ちゃんとね! このくらい許せっ、う、嬉しいんだからっ——」


「ほほう……嬉しい、ね」


「ぇ、ええ! 悪い!?」


「——悪くない、でも葵ってやっぱりむっつりだなぁってな」


 ぼそっと言ってやると、葵はボっと顔を赤くしたが隠すように振り返って、数秒。


 拳を握り締めながら向き直ると、俺の方に指を指した。


「は、ははっ‼‼ 私はむっつりですかもね、ですかもですかも‼‼ んで、そんなむっつりスケベな私に、へ、ヘタレな隼人はなんか言えるの⁉」


「す、スケベまでとは言ってないんだがな……」


「——っ‼‼ それはいいの‼‼ それよりも、何もしない隼人の方がじゃん‼‼」


「な、何もしてないわけではないっ——ぎゅー、したし……」


「あれで、私が満足するとでも!?」


「い、いや……」


「じゃあ、なんかしてこいし‼‼」


 必死に、叫ぶように言ってくる彼女。拳を握り締めて、ぐぬぬと喉を鳴らす。


 いつになく迫力のある葵に俺は一歩退いた。


「—―」


「なんで下がるの……」


「い、いやぁ……なんとなく」


「なんとなくで下がられちゃ、私も悲しいんだけど?」


「……怖かった」


「こ、こわっ―—別に、そんな顔してないし……」


「さっきのは普通にヤバかったぞ?」


「んぐっ―—そ、そういうことは言ってくるし……」


 まったく、注文が多いな。

 今日の葵は。


 とは言っても、さすがにここまで必死に言ってくれて俺も何もしないのは違うと思い、退いた足を前に出して、俺は葵の両肩を掴んだ。


「——っそ、そうよ……し、してきなさい?」


「……どうして急に命令口調なんだよ、あれか、お嬢様プレイしたいのか?」


「ぷ、ぷれい……っ、別にそういう意味で言ったわけじゃっ!」


「じゃあ、してやらないぞ?」


「な、何を……」


「キス」


「し、してくれるの⁉」


 俺が目の前で呟くと、葵の瞳は晴れるように光った。


「——が、がっつくなって……」


「が、ががっ……がっついてないし……」


「まぁ、どっちでもいいから……なんか、言うことないのか?」


「し、してきなさい……」


「なにをだ?」


「き、き、きききき……きす、を……」


「キリギリスか?」


「んな⁉ そ、そんなこと言ってない……」


「じゃあ、ちゃんと言ってくれ」


「うぅ…………ふぅ。キスを―—しなさい‼‼」


「っ。了解しましたよ」


 真っ赤な頬。

 ぐっと目を瞑った葵に俺は顔を近づける。


「ん」


「——っ」


「……はいよ、感想は?」


「……お、終わり? き、キスは?」


「しただろ、おでこに」


 何の悪気もなく、当然のようにそう言うと葵は目を瞑り、ぐぬぬと唸りだした。


 そして、すぐに顔を上げると——


「そ、それは……キスって……言わないでしょうがあああああああ‼‼‼‼」








 てなわけで、まあ、俺たちはまだまだ恋人としては半人前と言うわけなのだ。

 ヘタレの俺と、スケベな彼女。


 そんな二人は、今日も階段を登る。









<あとがきと言うか今回の落ち>


 化物語をパロってみたんですが分かりましたかね?

 まだまだ二人の物語は続きそうですね。

 

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