5−25 ユベールとアンリ王子

 すると私の話を聞いたジュリエッタが鼻でフンと笑った。


「そう…とうとう全て思い出したのね?今までは過去の記憶を一切引きずること無くループし続けていたのに」


ジュリエッタはフワリとバルコニーへ降り立った。


「全く厄介な事をしてくれたわね…。まさかシルビア。ユベールに掛けた魅了の呪縛を解いて…仲間に…いえ、自分を愛する様に仕向けたのだから!」


「え…?」


その言葉にユベールは私の方をゆっくり振り向いた。


「シルビア…今の話…一体どういう事なんだ…?」


その顔は…青ざめていた。


「ユベール様、私は…」


言いかけた時、ジュリエッタが口を開いた。


「いいわ、説明なら私がするから。ユベール。私はね…シルビアの魔力を奪う為に…お前を利用して何度も何度もシルビアを殺させてきたのよ。魔力を奪うためには殺すしか無かったからね。」


「な、何だって…?」


ユベールの身体が震えている。


「300年前に私はシルビアの一族に滅ぼされたわ。シルビアの家系はずば抜けて魔力が高く、全員王宮に仕える優秀な魔術師だったのよ。そして私は命が尽きる前に魂だけを自分の意思で抜き取って…時を待ったのよ。大気中に漂い…この世界に魔力を有する者達から魔力を奪い…ようやく、この元の身体を取り戻す事が出来たのよ。後は私を滅ぼした憎き一族の末裔を殺し…残りの全ての魔力を奪うだけだった。だから利用させて貰ったのよ。ユベール…お前をね」


ジュリエッタはユベールを指さした。


「…お前が何を言っているのか、よく意味が伝わらないが…何故だっ!何故俺にシルビアを殺させてきたのだっ?!しかも何度もだってっ?!」


「それは私だってこんな回りくどいやり方を支度は無かったわよ!だけどね、私は呪いを掛けられたのよっ!シルビアの一族に…。彼等はいずれ私が復活する事を想定して…呪いをかけたのよ。自分の子孫達に手を下そうとするものなら、死の呪いが発動するという…呪いをね…だから、ユベール。お前を利用させて貰ったのよ!王の息子であるお前をね…っ!」


「「え…っ?!」」


その言葉に私もユベールも耳を疑った。


「ど、どういう事だっ!俺は…俺が王の息子だってっ?!」


するとジュリエッタは言った。


「この国はね…300年前は私の国だったのよ。だからまずは奪う為にこの国の王子であるユベールに近付いたのよ。お前を油断させる為に幼馴染という設定をわざわざ作ってね…それなのに、お前は思うように私に洗脳されなかったわ」


「…」


ユベールは黙ってジュリエッタの話を聞いている。


「だから、もっと洗脳しやすい相手を探したのよ。すると丁度直ぐ近くにいたのよ。侯爵家でユベールと仲が良かったアンリを誘拐して2人を入れ替えたの。そしてこの城に住む者たちも洗脳したのよ。2人が入れ替わった事に気付かれないようにね。


「ま、まさか…?」


私はユベールを見た。それじゃ…本当はユベールが…王族だったというのだろうか?

今、一体どんな気持ちでジュリエッタの話を聞いているのだろう…?


「そんな話はどうだっていい。だがな…俺はお前を許さない。ループがどうのと言う話は何の事かさっぱり分からないが…」


そしてユベールは私を見た。


「一番許せないのは俺にシルビアを殺させたということだっ!」


ユベールは剣をジュリエッタに向けた―。







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