命がけの恋～13回目のデスループを回避する為、婚約者の『護衛騎士』を攻略する

5−21 魔法陣

「私達…一族…？」

私は信じられない気持ちでジュリエッタの話を聞いていた。確かに私の家系の先祖はかつて強い魔力を持っていた一族だと聞いていた…。だけど、ジュリエッタが300年前に生きていた魔女で、ご先祖様に滅ぼされていたなんて…。その時、私は重要な事を思い出した。

「ちょ、ちょっと待って…。今、人の心を魅了し…って言ってたけど…？」

その時、ハッとなって私は背後を振り返った。するといつの間にか、ロープが切れたアンリ王子が私の背後に立ち、羽交い締めにしてきたのだ。

「う…くぅ…」

アンリ王子にギリギリと首を締め上げられる。く、苦しい…っ。また私はここで死ぬのだろうか？今度はこんなに早く？7月7日を迎える前に…？嫌…またここで死ぬなんて…ユベール…意識が朦朧としてきた時―。

「シルビアーッ！！」

突如、扉が蹴破られユベールが部屋の中に飛び込んでくるとジュリエッタを突き飛ばし、抜刀するとこちらへ向かって走ってくる。

「クッ！」

アンリ王子が背後で叫び、私を前にドンッと突き飛ばした。

「キャアッ！」

「シルビアッ！」

ドサッ！

咄嗟にユベールが受け止めてくれた。

「シルビアッ！無事だったかっ？！」

「は、はい…っ！」

「ユ、ユベール…ッ！やっぱり…魔法が解けたのね…？」

ジュリエッタはゆらりと立ち上がった。傍にはいつの間にかアンリ王子が立っており、剣を構えている。

「ああ、そうだ。考えてみればおかしな話だ。何故今迄お前に惚れ込んでいたのか、今となっては少しも理由がわからない。今のお前は俺に取って魅力のかけらも感じられない。俺が好きな女はシルビアだからな」

ユベールはニヤリと笑みを浮かべた。

「クッ…！ま、まさかあの時と同じ事が起きるなんて…っ！」

「アンリッ！」

ジュリエッタはアンリ王子を呼び捨てすると言った。

「とりあえず引くわよっ！」

すると突然ジュリエッタとアンリ王子の足元に大きな魔法陣があらわれた。魔法陣からは赤い色の光の洪水が溢れ出している。余りの眩しさに目がくらみそうになった。

「待てっ！ジュリエッタッ！」

するとジュリエッタはニヤリと笑みを浮かべると、そのまま光の渦の中へ消えていった。そしてそれと同時に魔法陣もまるで地面に吸い込まれるかのようにかき消えてしまったー。

　光の渦が消えて、再び部屋の中が薄暗くなるとユベールが私を抱き寄せ、声を掛けてきた。

「シルビア、大丈夫だったか？」

「は、はい。大丈…んっ！」

ユベールが突然口付けてきた。そして私を抱きしめる腕に力を込めると言った。

「よ、良かった…」

私を抱きしめるユベールの身体が震えている。

「ユベール様？」

「お、お前が…アンリ王子に首をしめられている姿を見た時…また死んでしまうのでは無いかと思った…」

え？今…ユベールは何と言ったの？

「ユベール様…今、何て…？」

私は不思議そうな目でユベールを見た。

「どうしうた？シルビア」

ユベールは私をじっと見つめている。

「い、いえ。たった今、また私が死んでしまうのでは無いかと思った…って…」

「俺が？いつ？」

「え？覚えていないのですか…？」

「あ、ああ…」

ユベールは本当に何も分かっていないようだった。

「いいえ、何でも無いです…」

「そうか？とりあえず、この部屋を出よう」

「はい…」

そして私はユベールに肩を抱かれて、部屋を出た―。