5-6 近衛騎士団
「ほ~う‥こんなところにアンリ王子の婚約者候補が来ているとはな」
暗闇から声が聞こえた。
カツーン
カツーン
カツーン
「あ…」
恐怖で足がすくむ。
「シルビアッ!逃げろっ!」
ユベールが鉄格子の中から叫ぶ。だけど…逃げる?一体どこへ?
その時―
「おいおい、ここから逃げられるとでも思っているのか?」
暗闇の中から現れたのはユベールと同じ、騎士の姿をした若者だった。その背後には2人の騎士も控えている。しかし、彼等に見覚えは全く無かった。それによく見れば彼等の着ている制服はユベール達が着ている制服とは色が違う。
「…近衛騎士団…」
ユベールは忌々し気に彼らを見ると言った。
「え?近衛騎士団…?」
「そうだな。外部の者なら我らの頃を知らなくても無理はないだろう?ユベール、説明してやれ」
先頭に立つ男はユベールを見ると言った。ユベールは溜息をつくと私を見た。
「彼らは…国王直属の騎士団だ。選りすぐりの精鋭達で構成されている」
「何言ってるんだ?お前だって何度も近衛騎士団に入るように国王から直接言われているだろう?それなのにいつまでたってもアンリ王子のまるで専属護衛騎士のような真似をして…挙句にこんな女の魔石探しの手伝い等始めて、殺人まで犯すんだからな?」
男は私を一瞥するとユベールの方を向いた。
「シルビアをこんな女と呼ぶなっ!それに俺はキリアンを殺してはいないっ!俺をここから出せっ!!」
ガシャンッ!
鉄格子を強く握りしめ、激しく揺すぶりながらユベールは怒りに満ちた目で男を見た。
「フンッ!せいぜいこの地下牢で大人しくしている事だな。生憎俺達は国王の命令でお前を地下牢へ閉じ込めたのだ。お前を牢屋から出せる権限は持っていないのさ」
そして近衛兵は私をジロリと見た。
「それにしても…余所者のくせに何故この地下牢が分った?」
「…」
私はその理由を答えるわけにはいかなかった。ただ、黙って近衛兵を見上げる。
「答えないつもりか?」
近衛兵は1歩私に近付いた。
「よせっ!シルビアに近付くなっ!」
ガシャッ!ガシャッ!
ユベールが鉄格子を激しく揺すぶる。
「うるさい!静かにしろっ!」
すると1人の近衛兵が鉄格子越しからユベールの腹を蹴り上げた。
ドスッ!
「ウグッ!」
腹を抱えてうずくまるユベール。
「ユベール様っ!」
私は慌ててユベールの方へ駆け寄ろうとし…あっさり掴まってしまった。
「は、離してっ!」
羽交い絞めにされて掴まる。いくら暴れても振りほどくことが出来ない。
「丁度良い、お前もこの地下牢へ放り込んでやろう」
え?!その言葉を聞いたとき、目の前が真っ暗になった。そんな…!ここで捕まればアンリ王子の元へ行けない!
「やめてっ!離してっ!」
必死で暴れるも軽々と抱えあげられてしまった。
「シルビアッ!」
ユベールが叫ぶ。
「まぁ、俺も鬼じゃない。せめてもの情けだ。2人同じ牢屋に入れてやろう」
するとユベールが言った。
「やめろ!カロンッ!シルビアを牢屋に入れるなっ!」
カロン?この人はカロンって言う名前なの?するとカロンが言った。
「下がれ、ユベール。この女が殺されたくなければな」
突如冷たい切っ先が私の首筋に突き付けられた。気付けばいつの間にかカロンは剣を抜いていたのだ。
「…クッ…」
ユベールは悔し気に唇を噛むと牢屋の一番奥の壁際まで下がった。
「おい、鍵を開けろ」
カロンは仲間の一人に命じると、鍵を開けさせた。
「ユベール…動くなよ?」
カロンは言うと、私を抱えたまま牢屋の扉を開けた。
キイイイ~…
さび付いた扉が開く音が地下牢に響き渡る。
カツン
カツン
カロンは牢屋の中に入ると突然私を横抱きにすると、何を思ったかユベールに叫んだ。
「ほらよっ!受け取れッ!」
ブンッ!
え?気付けば宙を飛んでいた。私は放り投げられていた。
「キャアアッ!!」
ぶつかるっ!
「シルビアッ!」
ドサッ!
あれ…痛くない―?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます