4-5 3人の令嬢達
午前9時―
魔石探しのテストに振り分けられた私達は全員大広間に集められていた。彼女たちはグループごとに集まり、アンリ王子が現れるのを待っていた。
それにしても…。
私は彼女たちの様子を伺った。それだけですぐに分ってしまった。どのグループが勝ち残り、どのグループがこの場を去るのかという事が。集まった彼女たちの顔を見ればそれはもう一目瞭然であった。
そして何故かまだユベールは姿を現していない。魔石は全て彼に預けてある。一体ユベールは何所にいるのだろう?辺りをキョロキョロ探していると、不意に背後から声を掛けられた。
「御機嫌よう、シルビア様」
振り向くと、そこに立っていたのは侯爵令嬢のイメルダだった。背後にはマグダレナとロシータの姿も見える。
「あ…ご、御機嫌よう。皆様」
「どうですか?シルビア様。本日は第1回目の選定の日ですけど?」
イメルダが意地悪そうな顔で尋ねて来た。背後の2人もクスクス笑って私を見ている。
「ええ。そうですね」
「自信のほどはどうですか?」
ロシータが尋ねて来た。
「さあ、どうでしょう」
ここで正直に言うのは何故かまずい気がしたので答えない事にした。
「何個集まったのですか?魔石は」
マグダレナが堂々と尋ねて来た。
「申し訳ありませんが、今申し上げるつもりはありません」
いやだ、こんな人達と関わりたくない。返事をしながら思った。
「皆の前で結果発表される前に私達で互いに魔石を見せ合いませんかしら?」
イメルダが提案してきたが、私はその申し出を断った。
「すみませんが、それは出来ません」
「あら、何故かしら?」
ロシータが不満げに腕組みをしながら尋ねて来た。
「それは私は魔石を持っていないからです」
「まあ!持っていないですって?!嘘をついてはいけなわ!早くお見せなさい!」
マグダレナがわざと大きな声を出し、周りの視線が私達に集中し始めた。ひょっとするとここで騒ぎを起こして、わざと私に魔石を出させ奪うつもりなのではないだろうか?だが、魔石を持っているのは私ではなくユベールなのだ。そして肝心のユベールは今、ここにはいない。私は困ってしまった。何とかこの場を逃げたくても、ここから離れる事が出来ないのに…。
「持っていない物を見せろと言われても…」
その時―
「お前達、俺の仲間に何をしている?」
不意に怒気を含んだ声が聞こえ、気付けばユベールが私の前に立ち、イメルダ達と対峙していた。
「ユベール様…!」
「大丈夫か?シルビア」
私の方を振り向いてユベールは声を掛けた。その声は…いつもより優し気に感じた。
「は、はい。大丈夫です」
するとユベールは私を見てフッと口元に笑みを浮かべた。え?見間違えでは無いだろうか?
しかし次の瞬間、ユベールはイメルダ達の方を振り向くと言った。
「恥ずかしいと思わないのか?複数人で1人を責めたてる行為が」
「べ、別に私達は責めたてたりなどしていないわ!」
ロシータが顔を真っ赤にさせたその時…。
「やあ、僕の婚約者候補たち。お待たせしたね!これから魔石のお披露目を始めるよ。」
いつの間に現れたのか、アンリ王子がジュリエッタを伴って扉を背に立っていた。
「行きましょう」
イメルダはロシータとマグダレナに声を掛ける。すると彼女たちは一度だけ私を睨み付けると、他の令嬢達と同様にアンリ王子の元へと向かった。
「全く、あさましい奴らだ」
ユベールは忌々し気に言うと私の方を振り向いた。
「ありがとうございます。ユベール様。」
「大丈夫だったか?」
「はい、大丈夫です。私は…いつもユベール様に助けられていますね。すみません」
頭を下げた。
「別に謝る必要は無い…それじゃ俺たちも行こう」
「はい」
そしてユベールは私に背を向けると、アンリ王子の元へ行く。
その後を私も追った―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます