3-14 仲間
「え?ま、まさか本当に牢屋に入れてしまったのですか?」
驚いてユベールを見た。
「ああ、そうだ」
「で、でも…アンリ王子は魔石を奪いあってもいいと言ってましたよね?」
「確かに言っていたな。だがあの女はルールを破ったんだ」
「え?」
「あの女はグループを組んでいた。なのに他の仲間たちには内緒であの男を雇い、お前を襲わせた。だからその罪で男もろとも牢屋に入れた。それだけじゃない。あの女の犯した罪は全体の罪だ。あの女は4人組のグループだったらしいが、全員失格にさせた。今頃は荷物をまとめてここを出ていく準備をしている事だろう」
「えっ?!そ、それはいくらなんでもやりすぎなのでは?」
ユベールの言葉はかなり衝撃的だった。
「何がやりすぎだ?お前に乱暴行為を働き、怪我まで負わせたのに?」
「ユベール様…ひょっとして…私が怪我をさせられたからですか?」
「ああ、それ以上何がある?」
「でも…この先もこういう事は起こりますよ?魔石の奪い合いは認められているのですよ?アンリ王子の言葉には魔石を奪う際、相手を傷つけることを禁止してはいないですよね?最悪相手を殺して奪ってでも…」
うつむきながら私は言った。だって、現に私はここで…12回も殺されて来たのだから。
「シルビア!」
いきなりユベールに名前を呼ばれて、ハッとした。気づけば眼前にユベールの顔があった。
「冗談でもそんな言葉は口にするな!アンリ王子の婚約者を決めるのに殺人が行われるはずがないだろう?!そんな事、認めるような人間ではない!」
ユベールの目は真剣だった。
「も、申し訳ございませんでした…失言をお許し下さい。決して悪気があったわけではないのです」
アンリ王子はユベールにとって大切な幼馴染であり、主君だった。私の言葉に気を悪くさせてしまったようだったのだろう。
「い、いや。俺の方こそ悪かった…つい、言葉を荒げてしまって。それで…やはり出掛けるのか?」
「ユベール様のご迷惑でなければ…」
魔石探しが始まったばかりだと言うのに、襲われてしまったのだ。この先、ユベールの協力が得られなくなる可能性もあるかもしれない。だとしたら自分の身を守る事の出来るアイテムを揃えておかなけらばならない。
「まあ、お前の体調が大丈夫そうなら付き合おう」
「はい、是非ともお願いします」
そして今度こそ私とユベールは外出することになった―。
****
ガラガラガラガラ…
馬車の中、私とユベールは向かい合わせに座っていた。ユベールは黙って馬車から窓の外を眺めている。一体何を考えているのだろう?ただ黙っているのも気詰まりだったので私は声を掛けた。
「すみません…わざわざ御者付きの馬車まで手配していただいて…」
するとユベールは私に視線を移すと言った。
「本当は俺が御者を勤めようと思ったのだがな。だが俺が目を離したすきに早速お前は襲われてしまったからな。御者をしていたらいざというときにお前を守れないだろう?」
「ユベール様…ありがとうございます。」
「別に、俺はお前の仲間だからな」
それだけ言うとユベールは再び窓の外へ目を向けた。少しは私の事を気にかけてくれるようになったのだろうか?だとしたら嬉しいのだけど。
ユベールの横顔を見ながら思うのだった―。
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