こじらせ男の無二無二
「……疲れたんじゃが」
午後3時。開店時から取り組んだ本日のバイトは終わりを迎え、今は休憩室にて絶賛休息中である。
今日は本当に疲れた。身体というよりは主に精神の面にて疲れた。料理をしていたら金髪美女が抱きついてきて、レジを打ったら金髪美女が抱きついてきて、休憩に入っていたら島を金髪美女が頭に乗せてきて……etc.
……うん。紛れもなくエリーa.k.a発情美女のおかg……せいだ。なんだって営業中n……あぁ、柔らかかったぁ……じゃなくて、もう本当に男たちと何故か優里の目がが大変だっt……あぁ、ぷるんぷるんしてたぁ…….。
だめだ。脳内の1割もoppaiに支配されて異常が出ている。残り9割はもちろん李梨沙だお♡
……はぁ、だめだ。李梨沙への愛にいつものキレが、ない。
一旦整理しようではないか皆の衆。
俺は21歳一般ピチピチ大学生の千堂大地。生まれから現在に至るまで真に愛した女性は榎本李梨沙のみ。
朝昼晩すべて李梨沙を想う順風満パワーなオタライフを送っていた中、突然の推しの引退。からの推しがアイドルからお隣さんへとジョブチェンジ。そして絶賛神棚に祀っている、突然顔面に投げられたタオル愛の投げキッス。死の試食係女神の祝福。推しの可愛い妹クソガキの襲来。そう、なぜか俺は推し一家から嫌われていた……
そして、それと反比例するかのように、かねてより仲は良かったバイトの同僚、白瀬優里と東城・K・エリーとの仲が急上昇。かと思ったら、推しがデレ期に突入!?えっ、ちょ、確変ですか!?そして昨夜の急接近!?!?!?!?
ここから導き出せる答えは一つ。
『遅咲きのモテ期』
そう、モテ期。人生に3度はあると言われるあの伝説の期間『モテ期』。異性と急接近できると言われるあの『モテ期』。複数の女性から告白されるかも!?の『モテ期』。優里とデートに行ったのも、エリーがoppaiを押し付けるのも、推しが、李梨沙が、あだ名で呼ばせてくれるのも、朝ごはんを作ってくれるのも、添い寝してくれるのも、全部『『『MOTEKI』』』のパワー!
まさかここで来るとはな。小中高と灰色とは言わないまでも女性関係で浮ついたことのなかった生粋のオタである俺に!ついにきた! きっと、人生のチャンス3回を融合召喚で1回に集約することで、推しを呼び寄せ、お隣さんにジョブチェンさせたのか!?神様グッジョブじゃん!
……やば。気づいちゃった。気づいちゃったよオイラ。これって、恋人確定フラグ立ってることね???もしかして、付き合ってください!はい!結婚してください!はい!〜ウエディングソング〜キャッキャウフフ〜の流れが、つながったことね!?!?
おいおいおい!そうと決まればこんなところで休憩している暇じゃないだろ、急いで帰らないと、チャンスは逃してはいけないんだよ!
そこからの行動は早かった。俺は机に突っ伏した体をガバッと起こして、リュックをバッと持って、家を目指してダッと走り出した!……擬音バカっぽ。
「お、大地お疲れ〜悪いけどちょっと手伝ってくんない?今忙しくてよ…」
「すんません!俺、急がないといけないんで!!!」
すまん店長!今の俺はメロスなんだ。頭の中はエロスだけどメンタルは愛の尊さを伝えるメロスなんだ!
「あ、大地くん、少し話が…」
「ごめん優里!今日は少し忙しくて!また今度で!」
すまん優里!普段なら、どしたん?話聞こうか?のメンタルな俺だが、今の俺はメロスなんだ!期間ギリギリいっそげ〜い!のメロスなんだ!(……いや、いつもあんま頼られたことなかったわ。)
「へい大地!今日もドラマ見に行ってm」
「シーユー!エリー!」
ソーリー!エリー!
やばい!世界がキラキラして見える!これが世界の本当の景色だったのか!あーやばい、ドキドキしてきた。ついに俺もリア獣の仲間入りか……感慨深すぎるだろ。ついこの前まで写真見ててグフフって言ってた俺が!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
つ、着いた。押すよ?インターホン押すよ?やば、初めてじゃないのになんでこんなに緊張してるんだよ!
ピーンポーン
「はーい」
スピーカーから声が聞こえる。良かった、家にいてくれた。
「あ、千堂です」
「大地くん?どうしたの?」
「少し、用事があって。……いいですか?」
「? うん、いいよ」
そういうと、スピーカーから彼女の声は聞こえなくなった。
やばい、手から汗が際限なく出てくる。えっと、来たはいいけど、なんて言おう……。ほぼ勢いだけでここまできたから何も考えがまとまんない……。ってか俺はしってここまできたのに、全然身嗜み整えてなくね!?汗やばいし
、髪の毛もやばいかも。あっ、匂いは!?……てか、モテ期かどうかとかわかんないのになんで告白しようとしてるんだ?相手はつい最近までとてつもない人気を誇っていたアイドル。ファンに対する接し方も常に神対応だった。……もしかして、李梨沙は俺にその対応をしていた……?確かに、彼女はアイドルをやめてそこまで日は経っていない。え、うわ、えー、もしかしてこれって俺の勘違い!?
ガチャ
そんなことを考えていると、扉を少し開き周りからは見えないようにしながらも、推しの可愛い可愛い目がこちらに向いていた。
「どうしたの?珍しいね、大地くんから来るなんて」
「あはは……えーと……」
あれ?やば、なんで俺ここにいるんだっけ。なんて言えば、やばい、まだ考えがまとまってな……
むに
「ん?むに?」
「……え?」
なんか左側の腕がむにむにする。
「もー!なんで置いて行くんデスカ!ひどいですよ大地!クソムシです!はぁ、まぁいいです。はやく部屋に入って続きをやりましょー!」
少ししっとりしたむにむにした感触のする方を見てみたら、見知った金髪の美女が俺の腕にくっついていた。……何故ここにエリーが。確か、今日は俺と同じで3時上がりだった。ん?そう言えばさっき
『へい大地!今日もドラマ見に行ってもいいですカ?観賞会やりましょー!あ、ちょ、待って、早いですよ〜!』
……おぅ。言ってたー。なんか重要なこと言ってたー。頭がバラ色一色で気づかんかった。まさか、気づかなかったけど、ついてきてたの?この子。
「……大地くん?」
ハッ!
俺は正面から聞こえた低音の声に驚き咄嗟に首を戻す。そこには、引越しの挨拶の時の表情が可愛く見えるほどの、アイドルが決して出してはいけないほどの、そんな表情で睨む李梨沙がいた。
「……部屋で?……ヤる?……その密着度……最っ底」
そう言うと、彼女の部屋の扉はバタンと大きな音を立てて閉まった。
千堂大地21歳。調子の良い時ほど落ち着いて行動するべきである。そう言った先人の真意が身をもって理解できた瞬間である。
そうか、お前らもそうだったのか、先人(失礼)
たまらず彼は空を見上げる。あぁ、綺麗な青空だ。左腕は相変わらずむにむにしていた。無二無二
——————————————
人の話はちゃんと聞きましょう。
次回投稿日はTwitterで報告します。
続きが早く見たい!面白い!と思っていただけたら是非評価、お気に入り、レビュー、ブックマーク等をしていただけると助かります!創作意欲がさらに高まります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます