ひとりでもツッコミはする
マリオネットは頑丈な方だと思うが、万一がある。
地上近くまで落ちたら、
なんとか止まると、躯体に損傷が無いか調べる。よし、無事だな。
カイマ達が間近にいるが、皆城をというか女を目指しているので、オレには見向きもしない。せいぜい障害物程度にしか思われてないらしく、進路さえ邪魔しなければ無事ですんだ。
アディが、アリやイモリみたいと言ってたが、なるほどたしかにアリ型カイマとイモリ型カイマのようだ。
皆濡れている、河の手前まで地下道を掘り、今はそこから河を泳いで渡って来ているのか。
よし、だいたい解った。アディのマリオネットを探そう。
[世界樹の実]の反応を感知すると、少し北の方にあるのがわかった。
が、
おかしい、なぜか移動している。
オレは気をつけながらそこに向かうと、信じられない光景を目にした。
数体のカイマがアディのマリオネットを運び去ろうとしていたのだ。
バカな、カイマ達は生殖本能に支配されて野生化しているのじゃないのか。
オレの計画というか作戦は、アディのマリオネットというより[世界樹の実]あって成り立つのだ。それを持っていかれては、すべてがだいなしとなる。
オレは走り寄り、マリオネットを取り返そうとする。しかし、カイマ達が邪魔をする。
ひゅっ
なに!?
あぶなくやられるところだった、しかし、さらに信じられない──剣で斬られかけたのだ。
「こいつら……」
衣服を着ている、道具を使う、身体的特長が見あたらない──間違いない、ヒト族のカイマだ。
なんということだ、ここにきて本能を抑える知性を持ったカイマが出てくるなんて!!
向こうもオレが異質なのを認めたらしい。
マリオネットを置いて、オレに向かってきた。
3体か、[世界樹の実]のチカラを使ってなら、どんな相手でも勝てる自信はあるが、
しかも向こうは武器も持っているし。
ありがたいのは、マリオネットをそんなに大事に思ってないようで、放ったらかしにして此方に来るということか。
とまどったが、時間が無いことを思いだしオレは突進した。
カイマ達は少し怯んだが、すぐに立て直しオレに向かってくる。
斬られても死なない事が、唯一優位なところか。あと痛みを感じないのもだ。
今のオレは五感のうち、視覚・聴覚・触覚が使える。そしてそれらをオン・オフできるのだ。
とはいえ、躯体が壊れすぎると意識は、世界樹本体に戻ってしまう。
そうなれば、戻るのに早くても3日はかかる。
ヒト族カイマは剣を振り回すが、どうやら剣術が備わっているわけではないらしい。
避けて避けて、気づかれない様にマリオネットに近づく。
壁の様に立ちはだかっていた3体が、位置をずらしたので、オレは一気に駆け抜ける。
マリオネットに届きかけた瞬間であった、ヒト族カイマが剣を投げたらしい、オレの足に刺さり地面に縫いつけられてしまった。ヤバい!
動けなくなったオレにトドメを刺すように、ヒト族カイマ達は、オレをバラバラにするように滅多刺しにしたのだった……。
痛覚をオフにしたので基本的には痛みを感じない。
だからバラバラにされても平気だが、オレがもうダメだと思うと、
逆にまだいけると思えるのなら、指先ひとつになってもそこに留まれる。
しかし、留まれても動けなければどうしようもない。
バラバラにされた時は、さすがにもうダメだと思ってしまい、安全装置が働くところだったが……。
「とわぁっ」
あぶなかった、一か八かの試しだったが上手くいった。
ぎりぎり触れたアディのマリオネットに、憑依し直すことができたのだ。
だらしなく寝転がっていたのが、生き生きと反動をつけて立ち上がる。
有り難いことに無傷だったが、なんか動かしづらい。
ヒト族カイマが驚いたようで、動けずにいる。
しかし、
なんでだ、
アリカイマとイモリカイマが襲ってきたぁぁぁ!!
「うわうわうわぁぁぁ」
なんでだなんでだなんでだぁぁぁ!!
掴みかかろうとするカイマ達を避けて身体をひねったら、動かしづらいのとカイマ達が襲ってきたのが解った。
オレ、女の身体になっているんだ。
アディのマリオネットはもともと女型で、ユーリに対抗したのか、胸と尻がやたらでかい。だから動かしづらかったのか。あのアホォォォォ!!!!
しかもビキニ姿かよ!!
ああそうだったね、そんな格好だったよね。
なんで
どうやって入れた?!
もういい!! ツッコミ疲れるたわ!!
オレは実のチカラを取り込み、その場の地面に四つん這いの格好をとる。
カイマたちよ、世界樹の底力、見せてやる!!
全力で両手両膝から根を伸ばし、その根を南へと向けた。躯体より根の体積が多くなると、意識はそちらに乗せやすくなる。おかげで女の姿を維持できなくなったので、カイマ達に襲われる危険は無くなった。
根を伸ばし伸ばし、王国の城壁南側にある本体の根と接触した。よっしゃあ!!
これで
高さはカイマ達より少し高いくらいまで伸ばして、そこまできたら、蔓草を生やし壁状態にする。
王国全体を囲いたかったが、北側の3割と東側の半分を空けてしまった。そこからカイマ達が変わらず王国を目指している。
だが、止めてみせる、世界樹の底力はまだ見せてないからな。
カイマ達よ、育った世界樹の垣根に来るがよい、相手してやるよ、コイツらとな。
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