美聖女戦士は強く正しく美しく
姿や声はゾフィ隊長のものだったが、物腰や口調がまるで違う。
バルキリーのブルンヒュルデ、たしか北欧神話で聞いた名前だ。フレイヤもそうだったな。これはいったいどういうことだろう。
「ゆっくりとお話をしたいところですが、今はやめておきましょう。では、
そう言うが早いか、ゾフィ隊長は背中の翼を羽ばたかせ、上空のカイマ達の新手に向かっていく。
「すごい……」
手から現れた光の
呆気にとられていたが、女王陛下がつらそうな雰囲気なのに気がついたので、近寄って大丈夫か尋ねる。
「お気遣い無用です、世界樹様。それより女王陛下などと呼ばずにエルザとお呼び下さい」
「では、エルザ女王。ゾフィ隊長達はどうなったのです。空から女神らしき方がそれぞれの親衛隊達に憑依したのは見えましたが。それとゾフィ隊長は今、ブルンヒュルデと名乗りましたが、それも関係あるのですか」
「さすがは世界樹様、神霊体が視えるのですね。あの方々は女神族の長フレイヤ様の娘で、戦乙女のバルキリー、土地によってはワルキューレとかバルキュリアと呼ばれる方々です。女神族の信徒に危機が訪れた時、御力を貸していただけるのです」
(ああ、この人は
アディの
「バルキリー様は親衛隊の
(へえ、神霊界の連中って現世の連中を下にみているのに、よくやるわね。例えていうならヒト族がサルに交尾するようなものなのよ)
例えが酷すぎるので、オレはオブラートに包んだ言葉で、その事を尋ねた。
「ええ、仰る通り、神族はあまり神憑依を好みません。ですから条件を出されました。
親衛隊達が皆女性なのは、そういう理由もあったのか。たしかに全員美人で
「神霊族は誤魔化しを赦しません、ですからあのような裸に近い姿をしてみせるのです」
それで露出の高い鎧なのね。
あとおそらくだが、翼が現れるので背中も肌を露出しているんだろうな。
他にも訊きたい事はあるが、エルザ女王はさらにつらそうになってきた。
──そうか
今回の願いはカイマ達のせん滅だ。長引けば長引くほどエルザ女王、おそらく親衛隊達にも負担がかかるんだ。
夜明けまではまだまだ時間がある、このままではエルザ女王達の体力が持たないぞ。
アディに現状を知りたいからと、また偵察に行ってもらう。
バルキリー達の活躍のせいか、大広場あたりは静かになった。今のうちに状況を整理しよう。
カイマ達は日光に弱い、だから夜明けまで粘ればヤツ等は地下に戻る。
そうすればこちらから出て、地下道ごと埋めて勝ち戦になると思ってた。
しかし、カイマの数が多すぎて夜明けまでもちそうもない。
カイマ全滅目的で召喚したバルキリー達が、いくら強くても13対数百では勝てない。もし倒せたとしても時間がかかる。女王と親衛隊達の身体が持たないかもしれない。
今思いついた事をエルザ女王に話すと、苦しそうな声で答える。
「それゆえ丈夫なことと、信仰心が強い者が選ばれるのです。たとえその身が壊れようとも、こちらがかまわないことを望まれますゆえ」
冗談じゃない!!
神様に献身的な事が、正しく美しいことじゃないぞ!!
恩も義理も無いが、オレの心がそれをイヤだと言っている。何とかしなければ。
(もどったよ~)
戻ったアディの映像をユーリと共に視る。
まっすぐ真上に昇ったアディが下を観る、長方形の城壁の周りはカイマで埋め尽くされていた。
ついに西側まで来ていたか。まるで角砂糖に群がるアリみたいだな。
そのアリ達は数にものを言わせ、城壁衛兵達をものともせずどんどん城内に入りはじめていた。
城内の衛兵と一般の男達が命懸けで女達を守っているが、守りきれず殺されて、女を拐おうとするカイマを他の男達やバルキリー達が殺して奪い返す。
そんな場面があちこちで起きていた。
「このままではダメだ……」
思わず声に出てしまった。
「だがどうする、夜明けまでの時間稼ぎ以外に他のやり方はあるのか」
ユーリの問いに、オレは答えられなかった。
(もう逃げ出さない? アイツ等はヤバイよ、アブな過ぎるよ、アタシ襲われた時、本当に恐かったんだから。カイマの子を種付けされるかと思ったわよ)
「
(分かんないわよ、アイツ等はどんな相手でも種付けするし、マリオネットは世界樹が材料だもの)
「アディ、そういえば躯体はどうした」
(コウモリカイマに拐われて空に連れられたんで、
オレはあらためてアディの躯体を索敵をしてみた。
あった
城の外の東側にある。躯体の損傷までは分からないが、もうひとつ見つけた。
「[世界樹の実]も一緒にある」
その時、オレは現状打破してこの不利な状況を逆転できる方法が閃いた。
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