132話 違和感と迫り来る黒

 


 〈っ! 気を付けて!〉



「どうした?」




 〈伏せて!〉



 まだ生きてたんか? 一応言われた通り伏せる。



「アチッ!?」



 何か今、凄い熱気の球体が飛んできた。伏せてなければ丸焦げだった。メロスに救われたな。



 〈うへぇ、また面倒そうなのが来たわね〉



 地面を見ていた顔を上げ、敵を見てみる。


 居たのは骸骨、スケルトンとか言うやつだろうか。それが立派な服を着て、武器も持っている。


 そいつらの背後には禍々しいオーラを放つ杖を持った、一回り大きい骸骨が居る。黒い外套でハッキリとは見えないが、骨は浮き彫りになってるので間違いない。


「誰だ?」



 武器を構えて立ち上がり、念の為聞いてみる。



「拙僧はプネウマ。魔王軍四天王の一人なり!」



 魔王軍四天王ってのは、たしかフニフニさんと、サキュバスさんを知ってる。こいつで三人目か。魔王軍なら協力関係だし話せば分かるだろう。



「俺は魔王と友好関係にある者だ。敵ではない」



「左様か」



「ああ。ところでここには何用で?」


「彼らを蘇らせ、連れて参るよう仰せつかりて来たり」



 古典かな? いちいち分かりにくいが、何となく分かる。


 ……どっちやねん。


「では、ここらで」



 小さくなって威嚇してるメロスを抱きかかえ、去る。



「待たれよ」



 ダメですかー?



「どうしました?」




「魔王様は孤高にして至高の王なり。しかるに、友は無し」



「いや、ちゃんと確認を取ってからだね……」



 というか、妙だな。あの魔王はかなり親しみやすそうだったが。



「魔王様を侮辱せし罪、死して詫びよ」



「話聞けや!」




「【グガッゴグガッグ】」「ケカキケカケーコ、コクカキコカケコ〖キッケクコ〗」「ケカキケカケーコ…………




 骸骨が喋ろうとして喋れてない。



 いや、あの感じ、スキルとか魔法か? ちょっとまずいかもしれん。一体一体、ちゃんと強そうだ。



「待てッ! 走りて退け!」



 走って逃げてしまった。助かったな。




 〈ご主人、まずいわ〉


「ん?」



 腕の中でメロスが訴える。こいつの察知能力は凄いから聞いた方がいい。



 〈さっきの魔力に反応して、動き出したわ〉



「何が?」



 〈後ろを見れば分かるわ〉






 黒。







 あの霧なんかよりくらい、漆黒の流動体が、こちらに迫ってきている。



「何アレ……?」



 〈呑まれたら、さっきの古の魔獣みたくなるわよ〉



「走れ、メロス!」



 邪魔だから布都御魂はストレージにぶち込む。



 〈アンタが抱えてる方がたぶん速いからこのままよろしくねー〉



「おい!」



 確かにそうかもしれんが、抱えてたらスピード落ちるぞ? それでも速いかもしれんが……。



「まさか、囮に使えと!?」


 〈言ってないわよ! 逃げ切りなさい!〉




 なんだ。しけてんな。俺は霧の出処探しに、黒塗りの魔探しで忙しいんだぞ。犠牲になってくれても…………ん?



「あれって黒塗りの魔?」


 〈そうだけど?〉



「なるほどー」



 なら逃げる必要はないな。せめてメロスは逃がしたい。よし。獲物は見つけたんだし、使っちゃえ。






「【深化】!!」




 いつも通り、うるさいアナウンスを無視して、黒く、大きくなった手で、メロスをぶん投げる。




 〈ちょっ!? なにやっ――――




 これなら安心だ。



 さて、とりあえず殴ってみるか。


 迫り来る黒塗りの魔に腕を振るう。







「は?」









 全く攻撃っぽくならず、俺の黒と黒塗りの魔の黒が混じり合い、吸収され、呑み込まれる――



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