129.2話 助っ人とギスギス

 

「……どこまで行く気?」


「もう少しです」



 山道を進んでいる。



「あの村です」



 しばらくすると立ち止まり、木々の隙間から見える小さな集落を指差す。どこにでもありそうな田舎。


 ネアは首を傾げつつ、無警戒に着いて行くマツに呆れながら杖を片手に最後尾を歩いていく。




「……どこに行く?」

「遠回りする必要ないのでは?」


 ネアとマツが、集落を回り込んで行こうとするオリジンに尋ねる。



「今彼女たちはあちらの崖近くにいますので」



 そう言ってお構い無しにフワフワと飛んでいく。




 しばらく木々の中を進み、ようやく止まる。


「居ました」



 オリジンの目線の先には、六人の女性が居た。



「……」

「何かしんみりした空気ですねー」



「さあ、行きますよ」



「…………ん」

「はーい!」



 ザッと足音を鳴らして木陰から出て六人の前に姿を現す三人組。六人は警戒して各々の武器を構えようとする。



「はじめまして。わたくしはオリジン。貴方たちにお願いがあって来ました」



「白っ!?」

「きれー」


「ちょっと、警戒して」


「すみません!」

「ご、ごめんなさい!」



 緑色のツインテールの女性がどこか幼い顔つきの少女二人に注意する。



「どういうことですか?」



 黒髪のポニーテールの少女がオリジンに丁寧に詳細を聞く。



「そうですね……クロお兄様を助けるのを手伝って欲しいのです」


「え、この人たち、ご主人様の知り合いなんですか!?」

「……黙ってて」

「いやでーす」

「は?」

「やります?」



「何があったんですか?」



 後ろでバチバチ睨み合ってるのも意に介さず、続きを促す。



「少し無茶をしていまして。勇者と聖女のお力を貸していただきたいのです」



「…………分かりました。やれるだけやります」

「よく分かんないけど、ハクちゃんがやるなら私もー」





「ハクさんとミースさん以外は要らないということですか?」


 紫の髪を結い込んだ少女が異議を唱える。



「いえ、皆さんでお越しいただいても全然大丈夫ですよ」


「それならよかったです。何か分断するための作戦かと疑いましたよ」



 すると、突然喧嘩を止めてネアが爆弾を放り込む。



「……オリジン……勝手に決めないで……多人数はいらない」


「ほう?」

「ヨザクラちゃん、喧嘩腰やめない?」



「……足手まとい」



「足でまといかどうか、直接試してみましょう」「ヨザクラちゃん!?」


「聞き捨てならないのは私もね」

「ミオちゃんも!?」



「ネアさん、喧嘩売らないで下さい。彼女たちは戦力になりますよ?」


「……勇者と聖女と紫は兎も角、他は役に立たない」

「どなたが勇者とか知ってるんですか?」



 マツが単純な疑問を口にする。



「……イベントで戦ったから……戦い方から」

「ほえー」




「はあ、もういいわ。私がこの子達とこの国でのんびりしてるからあんた達で行ってきなー」



 ミオはめんどくさいとぼやきながら、二人の少女を連れて立ち去る。



「それで、クロさんはどこに?」



 気まずくなった空気を変えるため話題を逸らすハク。


「北の果てにいます」


「どうやって行くんですか?」


「もちろん船です」



 自信満々に答えるオリジンにネアが口を挟む。



「……坂本に頼むの?」


「いえ、船は作ります」





「「「「「…………」」」」」



 オリジン以外の全員が絶句し、静寂が訪れる。




「もちろんサバイバルのような物ではないですけどね」




「……先に言って」



 こうして一行は、変な空気のまま近くの海辺に向かう。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る