113話 ポイ捨てと将軍
人がいない。天守閣に近づいてるのに警護がいないのは明らかにおかしい。もしかしたらもぬけの殻なのかもしれない。行ってみなきゃいけないのは変わらないが。
クールタイムは終わったかな。
「こんなに居ないのであれば飛んでも撃ち落とされるなんてことはないから、飛んで行くよ」
「私飛べませんよ?」
「大丈夫。【飛翔】」
「きゃ!?」
マツを左手で抱え、念の為右手でキャシーちゃんのナイフを持って飛び立つ。
「目的地まで一直線だ!」
「ご主人様に運転やらせたら速度違反しまくりそうですね」
自分でも事故を起こす気がするから免許取らないんだよ。割りとせっかちだから。
「どこに行けばいいんでしょうね」
「高い所にお偉いさんは居るだろうし最上階に行けばいいでしょ」
お偉いさんってことは前会った将軍さんかな? 生きてるんだろうか?
「突入!」
壁をぶっ壊して最上階らしき所に入る。その部屋には二人、将軍さんと丸メガネをかけたおじさんが居た。
「やはり来たか。む、あの時の……」
「どうもー、貴方たちを殺せばたぶん何とかなるから殺すねー」
「雑ですね」
「大丈夫大丈夫ー」
「ここはお任せ下さい」
丸メガネさんが俺たちと将軍さんの間に割り込む。
「よせ、ここは二対二でいいであろう」
「申し訳ございません」
ん? 丸メガネさん、胸元に五芒星のマークが入ってる。もしや、かの有名な陰陽師では?
時代が違うか。それならその子孫の可能性が高いか。そういえば、安倍晴明関連のアイテムがあったな。ワンチャン裏切らないかな?
「君、陰陽師だよね?」
「……」
無言は肯定と一緒だぞ。ストレージから
「これが欲しいかい?」
「……」
無言で頷いてる。これはいける。
「なら将軍を君の手で殺してよ」
「……。っ!?」
「敵に惑わされるとは。愚か者め」
考えているところを将軍さんが後ろから刺しちゃったよ。どっちも潰れるのがベストだったが、片方だけでも充分か。
「もうよい。儂一人で全部終わらせてくれよう」
「
「ふっ、革命軍も、魔族も、鬼も、竜も、全て儂が滅ぼそうと思ったまでよ。儂の軍も側近も、役立たずばかりでうんざりだ」
何その強キャラ感。黒幕っぽいんだけど! ポジション奪うな!
「その書物も手に入れば儂に敵無しとなるだろう」
「おっけー。捨てるわ」
全力で外に投げる。何故か全員でそれを見届ける。あ、川に入った。流されて……見えなくなった。
「まあよい。無くとも儂は最強だ」
「マツ、来る」
「はい」
将軍さんが腰の刀に手を置く。抜刀術か。間合いに入らないように下がるか。
「【バックステップ】」
「【鬼拳】」
おい、ばか!
「【紫電一閃】」
「【サイドステップ】!」
嫌な予感がして避けて正解だった。高速で直進して、マツの胴体を真っ二つにした後、俺の居た所まで届いてる。
ギリギリ目で追えたが、至近距離なら反応出来なかっただろう。最強を自称するだけあって強い。
「まあ、あんたなんかよりずっと強い人を知ってるから最強ではないけど」
「【
今度は高速でジグザグで斬りかかってくる。さっきよりは遅いので弾いて凌ぐ。やべ、キャシーちゃんのナイフで受けちった。
そろそろ夜の女神ニュなんとかとの戦いで入ったヒビがやばいかもしれない。
そんなことを危惧してると、目の前で攻撃が止んだ。
「【滝崩し】」
上段からの溜め技が迫る。もう防ぐしかない。
「何!?」
受けきれた。流石!
「ちっ」
将軍さんが警戒して下がった。ここから【深化】を使って――
カランッ
軽い音、何かが床に落ちた音。
足元を見てみると案の定、ナイフの刃が。
くそ、愛着湧いてたのに。直す前に折れたか。仕方ない。今までお世話になりました。何回助けられたことか。せめて刃を拾っ――
「フワアァ、よく寝た。あれ? 何で私が出てるの?」
手に持っていたナイフの柄と、落ちていた刃が漆黒の煙となって、その中から人が出てきた。
人、どこにでも居そうな、茶髪の女性だ。そばかすもついてる。
「あ、ベルフェ呑まれてる。フフフッ、あー疲れた」
少し笑って座り込んだ。どういうこと? 誰か説明しろ!
「眠いしあそこで寝るかー」
女性が俺と将軍さんに指を指す。
「【怠惰の永眠】」
な、何だ? 急に眠く……
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