108話 作戦聞きと諸事情
ご飯を食べてちらっと掲示板と公式サイトを見てみたが、どうやら俺たちの薄い情報が好奇心を刺激するのかもしれない。そんなことより、9位のクランが大変気になってきた。別にただ単にどういったことをしているか気になるだけで行きたいとは言ってない。行きたい。めっちゃ行ってみたい。
「皆さんに最終的に決定した作戦をお伝えします」
数日ぶりにソルさんと会ったが変わらず事務的だ。
「皆さんにはその腕を見込んで負担を強いる形となりましたがお願いします」
前置きが長いと怖いんよ。
「一人または二人で江痔城に乗り込み将軍の首をとっていただき、残りで江痔城城下町を荒らして戦力を分散させてください」
江痔ってこないだの町か。個性的な名前だ。
「……軍は?」
「そうですね。きちんと言わなければいけませんね…………」
普通に相手の軍を引きつけとくんじゃないん?
「今回の作戦では軍を動かすことはしません。異界人なら死んでもリスクは無いという決定になりました」
うーむ、一理あるが、都合のいい道具扱いは嫌だな。
「もう一つの理由としては、海があるので多人数を動かすのが難しいのです」
なるほど。そういう理由もあるからソルさんもそうしたのか、しゃあないな。
「……提案したのは誰?」
「ルート中佐という狼獣人ですが……?」
「そう……」
何かネアが少し怒ってるように見える。珍しい。何か地雷を踏み抜いたのかもな。
ネアが立ってどこかへ行ってしまった。止めた方がいいかもしれないが、一度俺もネアの制止を無視してるからな。どうなっても何とかしよう。子分の尻拭いも親分の仕事だし。
「とりあえず話を進めるけど、実力的にお、ボクが行くよ」
RP忘れかけてた。セーフ!
「それでしたら私も行きます」
マツか、脳筋特攻さえ止めれば充分な戦力か。
「では、昼頃から作戦開始ですので坂本さんに舟を出してもらってください」
「君と、あともう一人着いてきた人は何もしないのかい?」
ずっと会ってないあの魔女風のおばあさん。どこで何してるのやら。
「フニトユチ様は竜避けの結界構築の準備をしています。昼頃に完成しますので作戦をそのような形にしたのです。わたくしは少しやることがありますので参加できません」
そうだ! フニフニさんだわ、名前。
「それでは、これで失礼します。騒ぎになる前に行った方がいいでしょう。ご健闘を」
騒ぎ? そういえば何か外が騒がしい気がするが……
「ご主人様、急いだ方がいいかもしれません」
「うん、とりあえず海岸に行こう」
「いたぞ! よくも!」
数人の狼の獣人が追いかけてくる。これは確実に殺ってますね〜。
「……乗って」
ネアが俺らの横から巨大な鳥に乗って現れた。どこにいたんだよ、その鳥。全員でぎゅうぎゅうになりつつ……とはならずにシロとマツだけ掴まれて運ばれている。俺とリューゲは鳥の背中に乗っているのでのんびりできる。
「逆ハー気取りですか! よかったですね!」
マツが煽る。よくこの状況で煽れたな。
「……落とす」
「できるものならどうz――」
「……」
本当に落としちゃったよ。リューゲは笑いを堪えて肩を震わせてるし、シロは明日は我が身とばかりに震えてる。ハクは羽があるから大丈夫だろ。
「覚えてなさい!」
下でマツが追いかけられながらもすごい速さで走っている。
「……」
ネアの表情が心なしか和らいだ気がする。もしかしたら地雷を踏み抜かれていたのを感じ取って、自分を犠牲に慰めようとしたのかもしれない。流石謙譲。
「着いたら十発本気で殴ります!」
お前の全力パンチは普通に死ねる。さっきのは考えすぎかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます