第42話 女兵士

 立ち入り禁止区域に入り込むには、それなりの下準備は必要だろう。闇雲に突き進んでも、簡単には入れないはずだ。そこに何らかの秘密があるのだとすれば、上層部だって厳重に管理するだろう。そんな話を繰り返していると、同僚と言う一人の女性が口を開いた。彼女は九条とも仲が良いらしく、今回のことにも、二つ返事で協力すると言ったそうだ。


「今までの話を、仲間に伝えたんだけど……」と切り出した。彼女の仲間の二人は、兵士を連れて現れた士官を連行し、どこかに監禁したそうだ。

「一人が、警備兵と面識があるらしいのよ。協力を仰げるかそれとなく確認したいって」

「警備兵か……」

「警備上の問題とか、教えてもらえれば助かるが、信用できるのか?」

「彼は信用できると言ってるけど、私は実際に会ったことはないし」と自信なさそうに答えた。


「禁止区域にも入れるのか?」と近藤が訊ねると、

「それは聞いてみなくちゃ分からないらしいわ」と、返した。

「入れないにしても、警備情報を得られるだけでも助かるな」

「ああ」巡回があるとし、その頻度、人数、ルートなど、知りたい情報多い。

特に知りたいのは、防衛装置の有無である。


「それと、警備兵の動きが活発になってるらしいわ。私たちの部隊にもやって来たみたい」

「だろうな。あの士官は本部への連絡は切ってないだろうし」

「それは遮断できる場所に監禁したから大丈夫らしいけど、その分、余計に慌ただしいみたい」

「行方知れずとなれば当然だろうな。しらみつぶし。ローラー作戦も頷ける。だとしたら、ここも危ないな」

「そうね。もっと安全な場所を探さなくちゃ」と、九条が言った。


「それはそうとして、もっと仲間が必要だ」と近藤が言った。

「それと武器だな」背中に装備されている武器は、ここに戻った際に回収されている。それは僕らに限ったことではなく、九条たちも回収されている。名目上は点検保守となっているが、僕には違った意図が見えていた。武器の全面禁止ならば分かるが、警備兵たちは武器を所持していた。同族しかいないこの場所でだ。そのことからも、反乱を起こさせないための処置に思えたのだ。近藤もそれを思ったのだろう、対抗手段のためにも武器を手に入れることを強く推した。

「武器庫を抑えるか?」と、小林が言い、

「そのためにも警備情報はほしいな」と答えると、

「わかったわ。聞きだせるか試してみるように伝えるわ」と、女兵士は請け負ってくれた。


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