第61話
「うわぁーグラトニー以外何も見えない」
人がいない海上のポイントにフェムトに転移してもらい辺りを見渡すと辺り一面グラトニーだらけで、グラトニー以外が見えない。
他の場所も同じことになってるとか本当に地獄だな。
早く殲滅を始めるか。
収納魔法からグラトニーを溶かす薬剤を大量に取り出して魔法で操ってグラトニーにぶちまけて行く。
空の裂け目を直接閉じたりすることもできるけど。寧ろ此処に戦力を割いてくれた方が他の場所が楽になるかも知れないし、空の裂け目に関してはノータッチで溢れてくるグラトニーをドンドン倒していく。
時々、人型や竜型のような強そうなグラトニーが出てくるけど、そういった個体は権能を使って何かされる前に倒している。
数だけは多いから見逃したりしてそうなのが懸念点だけど。これだけ数がいるから取り逃しはでるものとして考えておくしかない。
「それにしても、もっと強そうなグラトニーがいっぱい出てくるかと思ったけど、そんな事無かったな。とりあえず雑魚でこっちを消耗させるのが狙いか」
自分たちの損耗を気にしないのなら、悪くない作戦だとは思う。
グラトニーは数を揃えるのは大得意って感じだろうし、1番合ってる作戦かもしれない。
薬剤を使わなくても倒す手段が有るから、持ってくる薬剤の量を抑えたってのも有るけど。もう4分の1しか残ってない。
俺ほどではなくても他の場所でも薬剤の量はドンドン減っているはず。
薬剤がそこを尽きたタイミングで強いグラトニーが攻めて来たらきついんじゃ無いか?
やっぱり電撃作戦で親玉を速攻排除しに行った方が良いのかな?
こっちからグラトニーの親玉を倒しに行くのは確定しているけど。その前にグラトニーの全体数を減らさないと親玉の相手をしている間に世界が滅びる可能性があるので、親玉に関してはまだノータッチで、神達が逃げられないように監視しているだけの状態だ。
親玉を倒したところでグラトニーは止まらないし、寧ろ守りを完全に捨てた特攻を始める可能性もあるって言われちゃったら。
言われた通り、グラトニーの数をチマチマ削ることからやるしかない。
「そろそろ、薬剤を使うのをやめて本格的に数を減らすか」
権能と水属性魔法を同時に使用してグラトニーをドンドン倒していく。
権能で金属に変換する能力を使えなくして、グラトニーをコアごと氷漬けにして砕いて倒す。
今の一撃で裂け目から出て来てたグラトニーは全部倒したんだけど、裂け目からすぐにグラトニーが補充される。
やっぱりとにかく数で、こちらを疲れさせるのが目的かな?
ここで俺がグラトニーを倒せば倒す程他の場所のグラトニーの圧力が減るかも知れないし、グラトニーの思惑通りにここでグラトニーを倒しまくるか。
ちょっと疲れた振りとかすれば 、引っかかってトドメを指すために上位のグラトニーも出てくるかも知れないし。
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ー神界ー
「最初はどこもかしこも大量のグラトニーが現れて人間側が押され気味だったが。コウくんが暴れだしてからはそっちに集中しだしたおかげでいくらか持ち直しているな」
世界神を筆頭に神達はグラトニーの親玉を監視しながら人間界での人類対グラトニーの戦いの戦況も確認していた。
「コウの所だけじゃなくて神獣がいる所もだね。9割方コウのところに流れている感じだけど。コウや神獣の消耗狙いなのかも知れないけど、あの程度の物量じゃグラトニーが全滅するのが先だね。あれだったらむしろ、コウと神獣はガン無視して人間の街を襲った方が戦果をあげられると思うんだけど」
最初は世界中に現れた空の裂け目からバランスよく現れていたグラトニーたちだったが。
コウや神獣たちが暴れだしてからは9割9分コウや神獣たちのところに現れるようになった。
そのおかげで、陥落寸前だった場所の人類側が盛り返して来ている。
「恐らくだがグラトニーの本能なんだろう。グラトニーは数で攻めて自分より強いものを取り込み強くなる生物。コウや神獣たちを見て取り込みたいと言う本能に抗えなかったのだろう」
「本能ねぇ〜。それにしたって本能に一直線過ぎない?コウの年齢1桁の子供にでも演技ってバレそうなぐらい下手っクソな疲れた演技にバカみたいに引っかかって、幹部っぽいグラトニーが返り討ちになってるけど」
フェムトは下手っクソな演技を後で弄ってやろうと思いながらコウの戦闘を見ている。
「まぁ、敵が馬鹿で助かったじゃないか。おかげで被害が少なくなってるし。が、親玉に関しては舐めてかかると痛い目にあうだろう。極論、親玉さえ生き残っていればグラトニー達は数を元通りにすることができる。絶対に逃がさないように監視するんだぞ」
世界神がほかの神々にそう厳命する。
世界神とフェムトしか喋ってないけど。実際にはもっと沢山の神が今この場にいる。
変に2人の会話の邪魔をして機嫌を損ねたくないので話さない。
それから半日ほどしてようやくグラトニーの数が底をつき始めた。
神々は本命の親玉討伐に向けて最終準備を始めた。
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