第54話
ソールシュルテンから帰ってきてフェムトと少し話をした後、すぐにカナデさんの研究所に向かう。グラトニーに対抗するための薬剤を開発して貰ってるので。それを使って倒したグラトニーをサンプルとして渡したり、薬剤の使ってこうして貰えると使いやすいかもと思ったことを報告する為だ。
「どうやら今回は大変だったみたいだね。コウダイくん」
「そうですね。色々想定外が重なったせいで大変でした」
「まぁ、無事なようで安心したよ。それで、早速スプレータイプの薬剤の使用感の報告に来てくれたってことで良いんだよね?」
「そうですね。あとはサンプルも持ってきましたよ」
「それは助かるよ。効きが悪くなってたりした?」
「見た感じは効きが悪くなったって感じはしなかったです。後はスプレータイプはもうちょっと射程を伸ばせれば良いかなって思いました」
「薬剤の効きに関しては機械を使って調べてみる必要が有るみたいだね。射程に関しては…どうしても巨大化しちゃうと思うけど。使いづらくない?」
「燃料とかはバックパックに詰め込んで背負う感じで火炎放射器見たいに大型化しちゃうのも俺はありだと思うんですよ」
今の片手サイズのスプレータイプも良いとは思うけど、機動力が落ちたとしても大型の火炎放射器タイプもあって良いんじゃ無いかなって思う。
「グラトニーはとにかく数が多い遠距離から大勢を巻き込める武器が必要だと思います」
「なるほど。そんなに数が多かった?」
「今回のダンジョン内で200万単位でグラトニーの相手をすることになりました。グラトニーの本格侵攻時は1箇所でこれ以上の数を相手にする必要があると思ってます」
「スプレータイプじゃ焼け石に水だね、それは。いっその事固定砲台として薬剤を大量に散布する装置でも作るか」
スプレータイプで一体倒している間に他のグラトニーに攻撃されてしまう。
スプレータイプの有効射程じゃグラトニーに囲まれてるだろうし。
「いっその事放水車とか作る?勿論、薬剤を散布する用で」
俺は兵器ってイメージが先行しちゃってたから火炎放射器って考えてたけど。確かに放水車の方が射程を確保できるし、盾としても使えるか。
「良いですね。放水車」
「問題は、この世界に車と言う概念を持ち込むことになっちゃうところだね。飛行船に比べたら問題は少ないかも知れないけど全く問題が無いわけじゃない…。自走させないで馬に引かせれば問題ないか?」
カナデさんが心配しているのは、この世界に車なんて生み出したら、それによって色々と問題が起きることだろう。
軍事用として使われたり、街中での交通事故だったり。起きそうな問題をいくつでもあげることができる。
既に飛行船が存在するし、整備された道なんて少ないし。そこまで流行らない可能性も有るけど…。いや、やっぱり一定数需要は存在するだろう。
「でも、車自体は既にこの世界に存在するからカナデさんが自重したところでとも言えるんですよね」
「そうだったの?」
キッチンカーを使っている元日本人がいることを説明する。
「商人達からしたらそれなりに有名な話みたいですし。既にキッチンカーを真似た車の開発に着手している人がいてもおかしくないですからね。遅くても数年後には車がこの世界の人間によって製造されるんじゃないですかね」
「そうなの?それにしてもなんでキッチンカー?まぁ、車が存在してるんなら気にせず作っちゃおうか」
「問題は短期間で放水車を開発、量産できるのかってところだと思うんですけど。何とかなりますか?」
効果的な対抗手段になると思うけど。グラトニーがせめて来る前に用意できないと意味が無い。
「前の異世界にいた時に放水車は作ってないけど。車自体は開発したこと有るから問題ないよ。せっかくだから薬剤を散布する消火器もついでに作るよ」
カナデさんが元々いた異世界は若干SF(宇宙に進出している訳ではなかったけど)っぽいファンタジーだったから、車ぐらいなら作ったこともあって当然か。
「それなら安心して、カナデさんに全投げして大丈夫そうですね。消火器も楽しみにしてます」
カナデさんは作るぞ!と1人で部屋を出ていってしまった。
「一応お客さんなんだけどな俺」
カナデさんの部屋に1人おいて行かれてしまったのでだされたお茶だけ飲み干して、俺も部屋を後にした。
「あれ?誰かが魔法の練習してる…ってフラン!」
カナデさんの研究所を後にして自分の家に向かって歩いている途中。ふと訓練所を見るとフランが実際に魔法を使って魔法の練習をしていた。
いくら前世の記憶が有るからって、まだ1歳半過ぎだよ?早すぎるでしょ?
「そんな心配しなくても、精霊のハーフだから普通の人より成長は早いし。魔力量が多いから早めに自分で魔力を扱えるようにならないと、ある日突然ボン!ってなっっちゃうこともあるし」
ボンって爆発するってこと!?
まぁ、必要なことなら仕方ないか…。
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