第53話
「やっと帰ってこれたよ」
「お疲れ様です。色々大変だったみたいですね」
ダンジョンから出るとダンジョンの入口が冒険者と領軍に包囲されていて、俺たちが突然出てきた時は軽くパニックになった。おかげで中で何があったのか責任者に話すことになってしまった。ここで報告しなくても結局領主に直接説明する必要があるのに…。
無駄に時間を消費してしまった。
やっと解放されてイスカ達と合流することができた。
「ダンジョンの中も色々大変だったけど、ダンジョンから出てからも大変だったよ。リアたちは何もなかった?」
「炊き出しから、瓦礫の撤去まで色々手伝ってたので、それなりに問題はおきましたが全部解決済みなので気にしないでください」
どこの誰がやらかしてくれたのか、しっかり聞いておきたいところだけど…。
リアがそう言うなら話を聞くのはやめておこう。
リアだってやられてそのままで終わらせるタイプじゃないし。しっかりやられたことは倍以上にしてやり返すタイプだ。
ソールシュルテンの王族として、水の精霊王の妻として、ちょっかいをかけてきた相手を社会的に潰したあとなんだろう。
正直、俺にボコされる方が数倍優しいと思う。
「リア達が上手くやったんだろうし、詳しくは聞かないよ。それにしてもボスが大人気だね」
少し離れたところでガルムのボスが子供たちに囲まれて撫でられたり背中によじ登られたりしている。
「ボスには、瓦礫の撤去やこのタイミングに悪事を働こうとする輩の取り締まりの手伝いをして貰っていたのですが。今では子供に大人気です」
ボスはかなり迫力のある見た目なので、やっぱり最初は避けられてたみたいだけど。
違法奴隷にしようと攫われてしまったエルフの女の子を残っていた女の子の持ち物の匂いから奴隷商人を見つけ出して救出してから、街の人達から気に入られて今ではマスコット的な存在にまで上り詰めてしまったらしい。
仲良くしてるのはいいけど。俺たちが帰る時に当然ボスも一緒に帰るわけなんだけど。
暴動が起きたりしない?
「ボスがずっといるわけでは無いと言うのは理解していると思うので大丈夫だとは思うんですけど…」
そうは言ってるけど、リアは心配そうにしている。
ボスの毛並みはもふもふしていてさわり心地最高だから、ああなるのも分からなくもないけど。
この街にずっといる訳にはいかないし、今のうちに思う存分もふもふを堪能して欲しい。
なので助けて欲しそうな顔でこちらを見ているボス。もう少しだけ我慢して欲しい。
裏切られた!と言う表情をしているボスに対して心の中で今度豪華なご飯を用意してあげることを決めた。
「それでリア。ダンジョンで何があったのか領主に説明したいんだけど、すぐにアポ取れるかな?」
ダンジョンに潜っている間に最低でも1回は領主と会って話をしているはずだ。
「ダンジョンのことは1番知りたいでしょうし。直接行ってもすぐに通されると思いますよ」
それなら早く領主の館に向かうか。
「ボス。領主様の屋敷に向かうぞ!」
ボスをおいていく訳にはいかないのでボスに声をかけると嬉しそうにこっちにすっ飛んできた。
ちゃんともふっている人達が離れたのを確認してから移動を始めたので周りの被害は出ていない。
リアの言う通り領主のところにはアポもなしに直接行ったのにも関わらず。
すぐに通して話を聞いてくれたので話自体は早めに終わった。
領主はずっとまじかよ…って顔をしてたけど。
この人からしたらいきなりダンジョンを乗っ取られて、自分の知らないところでダンジョンが取り返されたと思ったら、ダンジョンの中身がまた新しくなるからこれから2週間ダンジョンに入れなくなるとか…。
領主からしたら悪夢だろうからな。
と言ってもこれでも今回はマシな方なはずだから、諦めてくれ。
領主に対しての報告会が終わったのですぐに帰りたかったけど。救って貰ったお礼させて欲しいと言われて1晩領主の館で歓待を受けることになってしまった。
「ふぅ、ようやく家に帰ってこれた。ただいまフェムト」
「おかえり〜」
「それにしてもフェムトなんで大人状態なの?まだ午前中だよ?」
家に帰るといつも幼女形態のフェムトが大人の姿でお酒を飲んでいた。
「ちょっと本気を出す為に自分にした封印を解いたせいで幼女姿に戻れなくなっちゃったんだよね。1ヶ月ぐらいはこの姿のままになるかな」
「フェムトの本気ね〜。あの時グラトニーからの干渉が突然止まったのはフェムトがなにかしたからか」
ダンジョン神を狙った攻撃が突然止まったのはちょっと不自然だな?って思ってたけど。
フェムトがグラトニーに攻撃をしてたからだったわけだ。
「ダンジョン神がグラトニーの手に落ちたら大変だし。やられっぱなしと言うのも嫌だったからね」
「姿が大人状態なだけで、なにか問題がある訳じゃないよね?」
「ちょっと手加減を間違えて、ものを壊しちゃうぐらいかな?封印を解くのなんて何千年ぶりだから偶に手加減を間違えちゃうんだよね」
今の状態のフェムトとは絶対模擬戦とかはしないようにしようと決めた。
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