第36話

「ここがその洞窟?結構深そうな縦穴だね」


魔族だけでは調査をするのは危険そうということで調査が後回しにされていた縦穴。

そこは全く見えないし。小石を下に落としてもいつまでたっても音が聞こえない。

そこに着くまで相当深いという事だろう。


「まぁ、飛べる俺がエリーを抱っこして降りれば、そこにたどり着くこと自体は安全だろうけど。毒性のあるガスとか気にしなきゃ行けないことはいっぱいある」



「なにか対策あったりするの?」


ボスを村に送還させ終えたエリーがなにか対策が有るんでしょう?と聞いてくる。


「まぁ、ガスを含み毒性のあるものを検知できる魔道具とガスマスクが有るから、多分大丈夫だと思うけど…。少しでも体調が可笑しいと思ったらお互いすぐに報告するようにしよう。体調が可笑しいと思ったら転移で離脱するのもあり」


フェムトが教えながらアイが作った物だから大丈夫だとは思うけど。魔道具に反応しない毒性のあるものがあるかもしれないからもしもの時の対策を話しておくのは重要だ。


ニーズさんの本気の毒でも、即死はしなかったし。俺が対処する前に毒で死ぬってことはないと思う。時間が少しでも有れば、権能で体が毒に侵される前まで時間を巻き戻せるから、毒の対処もできる。


ガスマスクをエリーに渡して自分も装着する。

毒性の物質に反応する魔道具の起動も忘れない。


「仕方が無いけど、視界がすごく狭くなるねこれ」


実は俺とアイの趣味でガスマスクになってるだけで、その気になれば一定範囲を常に正常な空気で充満させる魔道具とかも作れると言っていた。

それなら視界が悪くなることのないんだけどね。


しっかりガスマスクを装着していることを確認して縦穴洞窟のそこを目指して、降下を開始する。

速度をだして底を目指すこともできるけど。何があっても対処出来るようにゆっくり下に降りていく。


「毒性の空気で満たされてるみたい。さっきから魔道具が反応しっぱなしだ」


数百メートル降下したところで、毒を検知する魔道具からアラート音が鳴り響く。

毒の強さを十段階で表示する機能が有るけど。今はレベル6。

普通の人は一息でも吸ったら即死するレベルの毒の強さだ。

逆に吸わなければ効果はない。

これより上のレベルは肌とかに触れるだけで肌が焼け爛れたり溶けたりする。

最強クラスの毒を使えるニーズさんの抜け殻を使った防具を着ているので、当然高レベルの毒耐性が付与されている。

なので、毒に触れても触れた部位が溶けたりとかの心配は大丈夫なはず。


なので正直、毒対策なんてしなくても問題ない。ただ、やっぱり毒を浄化せずにそのまま呼吸するのは気持ち的に嫌なのでガスマスクを着用している。


「このレベルの毒だと相当対策しないと進めない。村に対策装備を売ることは出来るけど。それを買うだけの旨みがこの縦穴洞窟にあるかどうか…」


「今のところ無いかな〜。やたら強い毒が充満しているだけで何もないし」


強い毒が充満しているせいでキノコとかも生えてないし、生き物もいないからね。

もし、いるとしたら毒に耐性のある高ランクの魔物だろうけど。それはそれで倒すのが大変だし。毒素材って使いずらいからね。扱いも難しいし。

それなら、毒持ちじゃない同じぐらいの強さをもった他の魔物を倒した方が使い道が沢山ある。


その後もゆっくり底を目指すけど、毒の強さがどんどん上がるだけで、それ以外は何も変化が起きなかったが…


「これは凄い」


ライトによって照らされた先は巨大な水晶がいくつも壁から突き出している光景が広がっている。


地球ににある。人間の何倍もある巨大な結晶で埋め尽くされてる洞窟の写真とそっくりだ。


「凄いけど。この水晶から毒の元っぽいよね?」


水晶が見えた途端、毒の強さがまた一段階上がったのを見ながら、毒の発生源はあの水晶何じゃないかとエリーが予想する。


まぁ、怪しいのはあの水晶しかないよな。



「サンプルとして一欠片持って帰ってフェムトに見せれば、どんな物なのか説明してくれるでしょきっと」


壁から生えてる小さいものを採集する。

その採集の時に使ったタガネは水晶に触れた部分から腐食されてすぐに使いものにならなくなってしまった。おかげでいくつもタガネを消費してしまった。


「金属にもこれほど効果が有るなら、グラトニー対策として使えそうだな」


このままじゃ、金属以外にも効果のある毒を周囲に撒き散らすから、何か対策をしないと使いようが無いけど。

水晶が沢山有るからかもしれないけど。この場所から10km以上うえまで毒が充満した空間を作り出せるぐらい、毒を発生させてるんだから、戦場で何も考えずにだしたら。

それだけで敵味方問わず大混乱だ。


「これは村では使い道ないかな〜。強いてあげるなら景色を楽しむぐらい?」


「自分の何倍もある水晶がいくつも生えてるのは圧巻だよね。それでまだ洞窟にそこ自体にはついて無いわけだけど。底目指してみる?」


巨大な水晶で空間が埋め尽くされているのが見えたところで止まったので、まだ洞窟のそこ自体は確認できてない。

底を目指す場合、水晶と水晶の間を縫って下を目指さないといけないから結構大変だ。


「これ以上は調査しなくて良いかな。何が有るのかはわかったし」


エリーがそう判断したので転移して洞窟から脱出した。


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読んでいただきありがとうございます。






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