第5話
「待たせてしまい申し訳ない。私はグリランド王国、王国海軍のマグラス大佐です」
軍人っぽいなとは思ってたけど、まんま軍人さんでしかも将校クラス。
しかし、厳つい感じではなく、普通の服を来ていたら、近所で子供にも人気のある男性だ。
「コウと言います。こちらは妻のイスカ。
それなりに手荒なことをしたと自覚していますので、お気になさらず。」
あの状態だと何かアクションを起こしたら撃たれてた気もするし。後悔はしてないけど。
「遅くなってしまったのは警戒していたからではなく。御二方がお持ちになられた魔導車やビックスクイード、リリパットホエールは陸で生活する我々からすると、買取をするなら、どれもそれなりの金額が必要になるものでして、予算の確保の為に本国へと連絡をしていたのです」
なるほど、ちゃんとこの世界の人達からしても価値のあるものだったか。
そのせいで、マグラス大佐の言う本国。グリランド王国に俺とイスカのことが伝わってしまった訳だ。ゆくゆくは人間が生活する場所にも行く予定だったから、その時に俺たちの存在を知られることにはなったろうけど。
「なるほど。私たちは正直、その価値を理解していないし。貨幣についてもどれがどのぐらいの価値が有るかも知らない。正直騙そうと思えば騙せたと思うんですけど」
「御二方を騙して安く手に入れることに利益は有りませんから」
「成程。では、どれもお買い上げ頂けると」
「勿論。ですが金額が金額です。本国へご同行頂けると助かるのですが」
マグラス大佐と一緒に行けば、スムーズに入国できそうだし。一緒に行くのも悪くないか。潜水艦の中も気になるし。
潜水艦の中に長期間イスカと一緒に居ることで、よからぬ事を考えるやからも出てきそうだけど、もしそんなやつがいたら血祭りにあげれば良いだけだし。
「ちなみにここから、その本国までどのぐらいかかるんですか?」
「順調に進んで1ヶ月ぐらいです。ただ、この島に来たばかりですぐに帰ると言うのも難しく、3ヶ月程かかる事になります」
マグラス大佐からしたら開拓中の島に今日辿り着いたのに、国にとんぼがえりする訳には行かないか。
「マグラス大佐達の島に来た目的を考えればそうでしょうね。因みに、私たちだけでグリランド王国に向かうと言う選択肢は有りですか?」
「そうですね。その場合は私が紹介状を書きお渡し致します。本国からしたら特に旧ライン帝国製と思われる魔導車なんて1秒でも早く欲しいでしょうから。御二方だけでも問題ないかと」
旧ライン帝国製ね。感じ的に水没する前に存在した帝国ってことだろうけど。近くで直接見てないのに本国にそうだと報告するぐらい分かりやすい特徴でも有るのかね?
旧ライン帝国製の魔導車と言う言い方をした以上、他の国が作った魔導車も存在するんだろうけど。
「少し気になったのですが。この魔導車が旧ライン帝国製だと外装を見た程度で分かるものなんですか?」
「簡単です。海水に浸かっていたのに錆どころか、汚れ一つない。そんな事が可能なのは今も昔も旧ライン帝国のみですから」
成程。あんな海底に沈んでいて錆もなく綺麗なの凄いなと思ってたけど。こんな事が出来るのは、水面上昇による文明崩壊前もライン帝国と言う国しか出来なかったと。
「ご説明いただきありがとうございます。
陸についての知識がない2人で行って問題を起こしたら嫌なので、この島付近でマグラス大佐のご用事がひと段落するまでのんびりさせてい頂こうと思います。もとより、海を自由に旅をしながら暮らしていた身ですから。急ぐ必要も有りませんし」
それにしても、イカとクジラは直ぐに欲しいと言わないあたり、時間停止つきのマジックバック的なものがこの世界も存在するという事だろう。もしくはスキル。
確認して自分の首を閉めたくないからあっちから確認してこない限り、聞くのはやめておこう。
「そうですか。分かりました。本国にもそのように伝えさせていただきます。ところで、御二方はその間のご住まいをどうなされますか?宜しければ島の方にこちらでご用意させていただきますが」
どんな家なのかちょっと気になるな。俺が島に上陸した時は家なんて無かったし。テント的なものなのか。短時間で家を建てる方法が有るのか。それとも潜水艦の部屋に案内されるのか。
「陸地の住居と言うものに興味もあるので、お願いして良いですか」
「分かりました」
「そうそう、マグラス大佐はこの島を人が住めるように開拓するために来てるんですよね?島の開拓をしている間潜水艦はこの島にずっと停泊してるんですか?」
潜水艦の性能次第だけど俺たちが案内してあげれば道路に放置されている魔導車を手に入れられるだろう。
島の開拓作業がひと段落するまで暇つぶしにもなりそうだし。
「もし、潜水艦のスペックを知らないのであれですけど。大丈夫なら魔導車があった場所に案内しようかなって。まだ、沢山魔導車も沈んでいましたし」
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