フェニックスからのお願い
第1話
ダンジョンを攻略してキュアノスに帰ったら、ホワイトタイガーの獣人の赤ちゃんを抱っこしたメルが出迎えてくれた。
2日前に産まれたらしい。2人っきりの時間を邪魔するにもあれだし。フェムトがついていて母子に万が一のことが起きるなんて有り得ないという事で、黙っていたようだ。
確かにフェムトがいて何が起きるなんて考えられないけどさ。
分娩室には男は入れないし、いても居なくても変わらないのは分かるけどさ。
「ともあれ、無事に産まれてきてくれて良かった。名前ってもう決まってるの?」
「フィアお姉様の時みたいに特殊な事情が無ければ、コウさんがいない所で名前をつけたりしませんよ。という訳で今から名前会議です」
メルの寝室で2人で名前の候補をいくつか出し合う。
「こっち風の名前っぽいけど。日本風な名前がいいかな?って思うんですけど」
「
「可愛い名前ですし。いいと思いますよ。この子の名前はコハクで決定という事で」
結構早く決まったかな?って思ってたんだけど窓から外を見るともうすっかり暗くなっていた。
そう言えば、途中何度かコハクにミルクをあげたりしてたな。
ぐっすり眠っているコハクの頭を撫でる。
獣人の子は生まれてすぐでも髪の毛とシッポの毛が生えてる。
女の子だし、フランと同じく奥さん側に似てよかったと言う思いと少しでも良いから俺に似た部分とかないかな?っという思ってしまう。
名前も決まったので、報告を兼ねて全員で食堂に集まった。
「と言うわけで名前はコハクになりました」
発表に合わせて拍手で盛り上げてくれる。
「名前で思ったんだけどさ。結局コウが家名を与えられたりしなかったね。どこかしらに国が家名をつけると思ってたんだけど」
「フェムト様、コウに対して家名を与えるなんて言える王族はいないと思います」
「そっか。それじゃあ自分でつけて名乗っちゃえば?」
娘の名前をつけ終わったと思ったら家名か。
名前を考えるの得意じゃないんだけどな。
でも、家名あった方が良いか。
島の名前と同じくキュアノスにするか?
なんかそれは違う気がする。
「アスール」
「アスールね。じゃあ、みんなの家名をアスールに変更するね」
フェムトがわざとらしくエイ!と言うとみんなの体が一瞬だけ光る。
ステータスを確認すると、名前がコウ・アポストロス・アスールになっていた。
みんなにも家名としてアスールが追加されているみたいだ。
今まではみんな実家の家名だったからみんな一緒って言うのはなんか良いな。
言葉で表現はしにくいけど。
みんなもニヤニヤしてるし同じ気持ちだろう。
「そうだフェムト。ダンジョンから持って帰って来たもので、危ないものがないか確認して欲しいんだけど」
「危ないものならコウが触った時点で効果が出てると思うから大丈夫だと思うけど。どんなのが有るの?」
今回のダンジョン探索で手に入れたものを色々出していく。
まずは氷の洋梨が大人気だったけど。火山の階層で採集した泥に、しっかり美肌効果があると確認された途端、泥が1番人気になった。
「直ぐにじゃなくていいんだけど、このマグマに浮かべても大丈夫な木もう何本か取ってきて貰える?」
「別に良いけど。何に使うの?」
「フェニックスの巣の材料に使えるなと思って。大人になれば周りを燃やさないようにしっかり制御出来るんだけど、子供のうちは周りを燃やしちゃうこともあるから。燃えるものが何も無いはげ山に普段住んでるんだけど。石に寝ると体が痛いし、何か良い素材は無いですか?って相談されてたんだ」
フェニックスの巣の材料か。役に立つなら取ってこよう。
そこでふと気づく。
「剪定した世界樹の枝をあげれば良かったんじゃないの?」
世界樹ならフェニックスの炎でも燃えることは無いだろう。ダメだ、普通に薪として使ってたし、俺も燻製のチップとして使ったじゃん。
そう考えると、耐火性だけは世界樹より高いのか…そう考えると凄いな。
「世界樹本体自体はその木と同レベルの耐火性を持ってるけどね。剪定したり折れたりすると耐火性は無くなっちゃうんだよね。それにもし、大丈夫だったとしてもニーズヘッグはくれなかっただろうし」
そうなの?二ーズさん俺にはホイホイくれるよ?
俺はもう作ってないけど、世界樹のチップでよく燻製も作ってるらしいし。
「それは世界樹と自分を救ってくれたコウだからだよ。ニーズヘッグの役割は世界樹の守護。それには当然、剪定したり折れたりした枝も含まれる。ホイホイ人の手に渡っていい素材じゃ無いからね」
確かに。燻製のチップに使ったら燻製がエリクサーになったし。
世界樹の枝で作った木剣は魔力を通せばオリハルコンすらバターのように切り避ける切れ味を誇る。
俺が作った精霊石とか神獣連中の鱗とかも傷をつけることができた。
そんなものがホイホイ出回ってたら大変な事になるよな。
「コウの場合、世界樹の素材よりやばい精霊石が作れるからって言うのもあると思うけど」
俺の精霊石も剣に加工すれば、切れ味や耐久度は世界樹以上の物が作れるからね。
危ないしフィア達にしかあげて無い。
獣王国に一時期、水を確保する道具として貸してたけど、なんだかんだ言って帰って来たし。
「せっかくフェニックスでも使える良い素材が見つかった訳だし、今度集めてくるよ」
フェニックス見てみたいし。
カッコイイ系かなもふもふ小鳥系かな?とフェニックスに会うのを楽しみにするコウだった。
読んでいただきありがとうございます。
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