ダンジョンデート

第1話

「という訳で午前中はハジメくんの町に行って、サラーさんって人に傭兵国の話を聞いてくる。午後はここにあるダンジョンに潜ってゴーレム狩りして金属集めの予定」


朝食をとりながら今日は何をする予定か伝えておく。


「え〜。せっかく臨時教師の仕事が終わってこっちに帰って来たのに、また外に行っちゃうの?」


「傭兵国の件が無ければゆっくりしたかったんだけどね。臨時教師の仕事をしてる時と違って毎日ちゃんとここに帰って来れるから」


声に出して直接こう言ったのはシャルだけだったけど、他の人も同じことを思っているようで、分かりやすく顔に出ている。

俺が異世界に召喚されたせいで突然居なくなって半年も帰って来れなかったのがだいぶ聞いているみたいだ。


「寄り道とかせずにすぐ帰ってくるから、それと午後のゴーレム狩りは辞めて家でみんなとゆっくりすることにするから」


前回潜った時に倒したアイアンゴーレムが綺麗に残ってるから、それだけでもそれなりの量になるし、ダンジョンに急いでゴーレム狩りに行かなくても問題ないだろう。


「ってことで町に来たわけだけど。サラーさんはどこにいるのかね〜。エイボン商会を探すのが1番早いかな」


サラーさんを探すために町をフラフラ歩いていると、そこそこ人が集まっている場所があったので近づくとエイボン商会と看板がでていた。

お店で売ってるものとしては日用品などの雑貨を取り扱ってる感じみたいだ。

この町だったら、冒険者向けの商品を販売した方が儲かりそうなものだけど、一切売ってないみたいだ。


だからこそ冒険者が買い物に来ないので、女性も安心して買い物に来れるのかもしれないけど。

会計は大人がやってるけど、品出しとかを子供がやってるし。荒っぽい冒険者が来て問題を起こされるのが嫌だからって理由かもしれないけど。


全員がそうって訳じゃないけど、やっぱり冒険者の中には力でなんでも解決できるって考えてる荒っぽい奴もいる。

いっぱいいる訳じゃないんだけど、人間ってのは悪いことの方が印象に残りやすいので、

冒険者全体がそういった目で見られてしまうことも少なくない。

戦う術を持たない一般人からしたら武器を持ち歩いてるってだけで怖いだろうし。

出来るだけ早く用事を済ませるって約束して来ちゃったし、サッサとサラーさんに会いに行くか。

働いてる子に聞いて見れば良いかな?と思い誰れに話しかけるのが良いかなと考えていると向こうからやってきて、話しかけられた。


「あの。コウ・アポストロス様でお間違い無いでしょうか?」


「そうだけど?」


「会長が謝罪させて頂きたいと。どうか会長に謝罪の機会を頂けないでしょうか?」


「まぁ、別にあの件は気にしてないし、気にする必要は無いけど。聞きたいことも有るし、サラーさんのところに案内してくれるかな?」


「ありがとうございます」


従業員に連れられてサラーさんがいるという部屋に向かった。


「先日はあのようなことをしてしまい申し訳ございませんでした」


サラーさんが綺麗な土下座で謝罪をしている。

俺って魔力を隠蔽してると一般人にしか見えないだろうし。もう別に気にしてないんだけどね。

謝罪を受け入れた方が話が早く進むだろう。


「謝罪を受け入れます。早速で申し訳ないんですが少し聞きたいことがあるんで顔をあげてください」


「私の知っていることならなんでもお話させていただきます」


「サラーさんには傭兵国の人物で注意するべき人と信用できる人を教えて欲しいんですよ」


完全に信用は出来ないけどリンファス王国が内紛に介入する時に参考ぐらいにはなるだろうからね。


「なるほど。私の意見で良いなら喜んでお話させていただきます。紙にも書いた物も用意させていただきます」


紙にも書いてくれるなら助かる。


サラーさんが俺に説明しながら紙に情報を書いていく。

悪い噂しかない傭兵とか上流階級の人間に関しても色々情報を持っていた。

やっぱりアラクネ製の衣服を取り扱っていたので上流階級の人間との接点が多かったみたいだ。


「貴重な情報ありがとうございます」



「お役に立てて光栄です。こんな情報をお求めになられたということは介━━。申し訳ございません。一商人が深入りすることでは無かったですね。聞かなかったことにして頂けると」


わざわざこんな事を聞くって事は何をするつもりかは、サラーさんなら直ぐに分かるだろう。ただ、普通の商人である自分がハッキリ言及するのもまずいと思って辞めたんだろう。


「まぁ、これから傭兵国からの難民も増える可能性もじゅうぶん考えられますから。

難民に紛れてリンファス王国で悪事を働きそうな人物の把握をしたかったんですよ」


適当な理由をでっち上げる。

目的とは違うけど、100パーセント嘘という訳でもない。実際傭兵国から悪人が流れてくる可能性も有るからね。


「成程。確かに予め警戒できる方が良いでしょうね」


「まぁ、悪いようにはなりませんよ」


「今の傭兵国以上に悪くなることなんて、まぁないでしょうね」


「今回は本当に助かりました。長時間お付き合いいただきありがとうございます」


サラーさんにお礼として魔物の肉をいくらか渡して部屋を退出する。

サラーさんから教えて貰った情報を活用するために王城に転移した。







読んでいただきありがとうございます。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る