第15話

「さてと、さっさと源泉を使えるようにしちゃいますか」


地面に手をついて源泉を直接操作する。

少しすると間欠泉のように源泉が吹き出した。

うん、何も考えずにやっちゃったけど、これって結構大惨事だよね。

ひとまず吹き出した源泉が人にかからないように落ち着かせる。

一緒に舞い上がった土や石に関しては人に当たらなそうなので無視。

そんな事よりどうにかしないといけないことがあるからな。


「精霊王様?」


フィロさんが笑顔でキレている。


「イメージ的にはもうちょっと大人しい感じになる予定だったんです。俺の思っていたより岩盤が柔らかくて…。ほんとすいませんでした」


「…まぁ、地下何千mという深さにある。源泉を掘るんだからかなりのパワーが必要なのは分かりますし、私以外はこの場から離れさせていますので、問題は無いんですけどね」


「ありがとうございます。後は手伝うこと無いですよね?」


「魔道具とかも準備してあるので大丈夫です」


「なら、これから忙しいと思いますし。自分はこれで失礼しますね。あ、そうそう。これベヒーモスのお肉です。良かったら食べてください。筋が多いので煮込み料理にすると美味しいですよ」


フィロさんにまだ食べたこと無いであろうベヒーモスの肉を渡す。

煮込み料理以外だとかたくてあまり美味しくないベヒーモスの肉だけど、長時間手間をかけて煮込むと柔らかくなって美味しく食べることが出来る。


「ありがとうございます。それと学生さん達の面接ですが。近いうちに王都に帰る予定がありますので、その日に面接をしてしまいましょう。服装は制服で構わないと伝えておいてください。そんなに堅苦しいものにするつもりは無いですし」


服装について言及されてから気づいたけど、普通、日本で言う就活スーツ的なものが必要だよな。

しかも相手は貴族なんだからそれなりの値段がするものを用意しなきゃならないだろうし。

制服で良いなら準備も必要ないし良かった。

実際制服で行ったら怒られたとかは無いだろうし。


「じゃあその通り伝えておきます」


ーーーー


「マルタ。これは何があったのかな?」


話しも着いたのでマルタのところに帰ってくると革鎧を着た集団が簀巻きにされている場面だった。


「襲って来たので捕まえたんですよ。自分たちのことを山賊って言ってるんですけどコウさんはどう思いますか?」


「どっかの貴族の私兵じゃない?」


自称山賊の装備や体が綺麗すぎる。

俺の勝手なイメージだけど、装備はもっとボロボロだろうし、体だって清潔に保ち続けるのは無理だろう。

こいつら毎日お風呂入ってるんじゃないの?って感じするし。

装備に関しては綺麗と言うよりは新品って感じ。鎧のままじゃ山賊じゃないって一瞬でバレるので取り敢えず皮装備を買いました感が凄い。


だとしても少なくとも今のリンファスの貴族はこんなバレバレなことしないと思うんだよな。


「…お前たち傭兵国の関係者だろ?」


1番可能性があるとしたら傭兵国かなと思って半ば当てずっぽうで言ってみたけど、傭兵国と言われて捕まってる連中が動揺しだした。

あってたとしても反応しちゃダメでしょう。


「傭兵国の関係者ですか。わざわざアガール帝国跡地を横断してきたということですか?ご苦労なことです。それにわざわざ内紛に他国が介入する大義名分を作って。何がしたかったんですかね?」


マルタが中々に辛辣だ。

俺もその通りだとは思うけど。


「それが目的かもよ。勢力のどれかがリンファス王国に介入させて、戦況をぐちゃぐちゃにしたかったのかも?」


そんな事をして何をしたいのか分からないけど、反応を見る限りそのつもりらしい。



「厄介ですね。全員殺して無かったことにしたいですけど、既に大勢の人に見られてる訳ですから無理ですね。傭兵国の村の状態は悲惨と聞きますし、これを口実に介入するのもありですか。その場合、国側も反乱軍側も討伐対象でしょうけど」


「国盗りをするの?属国化するにしても飛び地になるし大変なんじゃない?それにポメアン共和国だっけが隣接してるんでしょ?面倒臭い国だって聞いてるよ?」


ポメアン共和国は未だに犯罪奴隷以外の奴隷も合法としている国でヒューマン至上主義の国だ。

海賊たちがコノハを違法奴隷として売りさばこうとしていたのも恐らくこの国だろうと聞いている。


「飛び地だとしても今は飛行船が有るのでそこまで問題にはならないでしょう。ポメアン共和国も傭兵国を落としてしっかりとした国を作れば今より厳しく奴隷商を取り締まれるでしょうから」


傭兵国は冒険者ギルドは存在せずに独自の組織が存在し、そこに所属する人達は国名にもある傭兵と呼ばれる。


傭兵は金さえ貰えればなんでもやる連中も多いため、奴隷商に金を積まれて奴隷商のために働いてる者も多いらしい。

確かにこれを口実に介入して傭兵国を潰した方が良いのかもしれない。


捕まえた自称山賊、恐らく傭兵国の連中をそのまま連れていくのは面倒なので、俺が転移で王都まで連行することになった。

一応、尋問をして貰って情報収集をして貰うことになる。


と言うか緊急自体ということにして、生徒ごと王都に転移することにした。

転移場所は魔法学校の校庭。

中々の騒ぎになったけど、先生達が頑張ったおかげで何とかおさまった。






読んでいただきありがとうございます。

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