第17話

「申し訳ございません。みんなを説得するのに時間がかかっちゃって、この場にいる魔族は全て1箇所に集まりましたのでお願いしてよろしいでしょうか」


良かった。魔族の人達は俺たちのことを信用してくれたみたいだ。

いや、ちょっと違うか。世界神様を頼らないと死ぬしかないからか。

魔王も説得するのに時間がかかったって言ってるし。

俺らが騙してたとしても信用するしかないわけだ。


「そうか。じゃあ早速始めようかの。

後はシステムそのものを儂の世界の物に変えるから、HP概念とかは消えてしまうからそれも覚えておくように。魔法の使い方などは魔界についてから詳しく説明しようかの」


…魔法を教える。なにか忘れているような…。そうだ!!学校で授業をするって言ってたのにあっちの世界では半年過ぎてるなら

完全に授業放棄しちゃってるじゃん。

色々とやらかしてるな〜。

披露宴に関してはまだ半年ぐらい時間が有るからすっぽかしてないけど。

そうか。俺以外はメルが妊娠してるのを知ってたから、披露宴がこんなに後になってたのか。

フィアが出産してから数ヶ月後で良いんじゃない?って最初はなってたんだけど突然更に数ヶ月後にするって言われたからどうしたのかな?って思ってたんだよね。


帰ったら色々な人に謝りに行かなきゃいけないな。


「よし、では魔界へ転移するぞ」


足元に大きな魔法陣が現れる世界神様でも世界間を超える転移はちょっと大掛かりになるんだな。

…あれ?俺も魔法陣の中に入っちゃってるよ?

気づいた時にはもう遅く視界が真っ白に染まり視界が回復すると、先程までとは全く別の場所にたっていた。


「悪い魔族を倒してないのに!俺も帰って来ちゃったじゃないですか」


「さっきも言ったが、コウがいなくてもじゅうぶん勝てるから心配ない」


「それはそうかもしれませんけど。なんか凄い中途半端な感じになっちゃうじゃないですか」


「コウがいたからダンジョンで安全にレベル上げが出来たんだからじゅうぶん役に立ってたじゃろ。それより魔族達の面倒は儂が見ておくから、コウはフェムト達に会いに行ったらどうじゃ?丁度リバイアサンの里にある別荘に全員いるみたいじゃぞ」


そうか。元の異世界に帰って来たんだからフィア達に会いに行けるのか。

あ〜もう他のことは全部どうでも良くなって来たな。


「そうします」


「ああそうじゃ。最後になんじゃが、魔界と人間界を繋ぐゲートを例の島に設置しても良いかの?出来れば魔族たちが魔界の開拓をするのを支援してやって欲しいんじゃ」


魔界に移住してもらった魔族達をここまで来てはいさようならって言うのは嫌だしそのぐらいは全然OKだ。


「もちろんです」


「これで魔族も安心して魔界を開拓していけるじゃろう。呼び止めてしまってすまんかったの」


このままだと、なんだかんだと話が続いてしまいそうなので転移でリバイアサンの里にある別荘に転移した。


「俺の部屋に転移した筈なのになんで全員ここに居るの?」


「そりゃこっちの世界に帰ってくればコウがどこにいるかぐらい直ぐにわかるもん」


確かにフェムトならわかるか。


「みんな心配かけてごめん。それとただいま」


「「「おかえりなさい」」」


「ちょっと全員は流石に重い」


全員でいっせいに飛びかかって来たのでそのまま押し倒される。

避けるって選択肢はなかったし。

どのぐらいたっただろうかされるがままにもみくちゃにされてたけど、部屋に赤ちゃんの何声が響きわたった事でみんなピタッと止まった。


「トイレじゃないしお腹がすいたみたいですね」


部屋にはいたけど赤ちゃんを抱っこしていたからディアーネさんがそう言ってフィアに渡す。


「外見は俺じゃなくてフィアに似たみたいで本当に良かった。女の子なのに俺に似たら可哀想だし」


フィアのミルクを飲む我が子を見ながら心からそう思った。

将来はさぞモテることだろう。


「なんだ、フランもう良いのか?」


我が子の名前はフランと言うらしい。

自分の子供の名前を知らないってまじでヤバいやつだよね普通。

1人落ち込んでると頭をポンポンされる。

凄いちっちゃい感触だったので、頭をポンポンしたのはフランみたいだ。

慰めてくれた?転生者みたいだしそう言うことだろう。


「フランはコウに抱っこして貰いたいみたい」


断るわけがないのでフランを受け取り抱っこするの抱っこの仕方が悪いと全員に言われて抱っこの仕方講座が始まった。

前世込みでも赤ちゃんを抱っこする機会が無かったんだから許して欲しい。

フランはその姿を見て笑っていた。娘の笑いが取れたなら良いか。


「…寝ちゃったか。それよりフランが普通に俺の事を受け入れてくれて良かった」


転生者だし、こいつは奥さんが出産するときにそばに居ないでどっかに行ってたクズだって嫌われたら相当ダメージを受けることになってた。


そんな事になったら恨みで俺を召喚したあの異世界を滅ぼしに行くところだった。

やっぱり俺が暮らすのはここ以外有り得ないな。






読んでいただきありがとうございます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る