第12話
「ここが異世界!人が集まって屋台をやってるって思ったら、列に金色の鶏が並んでますよ!他にも獣人っぽい人とか並んでます。ファンタジーです」
島に帰ってきた途端、人化してご飯を食べに来ている幻獣種を見てアイが騒ぎ出した。
最初は殆どの幻獣種は人化出来なかったんだけど、ここで食事をするなら人化出来ないと不便だからって、人化できる連中から教えて貰っていつの間にか人化できる連中が増えててびっくりした。才能の無駄使いだと思う。
グリンカムビは念同魔法が使えるおかげで、鶏の姿のままでも、食事をするのに不便を感じないので人化は習得していない。
念同魔法で器用に食べるからなあいつら。
「感動するのは良いけどまずは家を用意しないと、今日野宿になるよ?」
「え?先輩の家が有るんじゃ無いんですか?先輩の島なんでしょうここ」
「この島とは別の場所になら沢山有るんだけど、いつも転移魔法で家に帰ってるからこの島には家を建てて無いんだよね」
それにアイは俺の家で暮らすからまだ良いけど、ハジメくん1家はそうは行かないから、この島に家を建てなきゃだし。
「家って普通、何ヶ所も持ってるものじゃ無いですよね?」
「自分の意思で建てた物件は2軒だけだよ?後はみんな、報酬で貰った家なの」
「だから、部屋ぐらい簡単に貸せるんだけど、それだと周りの人にバレちゃうから今回は使えないんだよね」
屋敷に俺が居るって伝わると、沢山人が尋ねてくるから、その対応も疲れるし。
基本門前払いだけど。
「先輩の話は分かりましたけど、家を建てるって簡単に出来るものなんですか?もしかしてラノベみたいに魔法で一気に建てたり出来るんですか?」
「俺は出来ないけど、幸いこの島にはプロが居るから一瞬で建築できるぞ」
ロスさんならご飯を代価にすごいものを建ててくれるはず。
「時間を止めたり出来るのに家は建てれないんですか?」
「全部氷の家でいいなら一瞬で作れるぞ。基本、適正を持ってない魔法は使えないから。頑張れば、少し地面を盛り上げるぐらいなら出来るけど、建築は無理」
「流石に全面氷は嫌です。プロの方にお願いしましょう。寒そうですし、外から丸見えは嫌です」
氷の家なんて俺も嫌だけど。魔法で生み出した氷だから、触れても冷たくない。
周りの温度も下がらない氷だって作れるし。
氷を作る時にわざと空気を含ませて、中が見えないようにもできるよ?
だとしても住みたいか?って聞かれると微妙だけど。だから、フェムトが悪ふざけで氷を使って作った水の精霊王の城も使ってない訳だし。
という訳で早速ロスさんを呼んで、彼女に家を建ててもらおう。
と言ううか多分だけど既に地中でスタンバってる気がする。
「って言ううわけで、ロスさんに建築をお願いしたいんですけど」
そう言った途端、地面から手が生えてきた。
やっぱりロスさんはおれが呼ぶまで地中でスタンバってた見たいだ。
今回はアイの足が掴まれた。
これにはアイも叫び声を上げるかなって思ってたんだけど一切喋らないしピクリとも動かない。
「立ったまま気絶してる…」
ビビりすぎて悲鳴を上げるとかそう言う次元じゃ無かったらしい。
ハジメくん一家は標的になったのが自分じゃ無くて良かったと思ってそうだ。
少し待っていればそのうち目を覚ますだろう。
「ロスさんも聞こえてたと思うんですけど、家を建ててもらいたいんですよ、何件か。
お礼は異世界の料理でどうですか?」
「もちろん任せて。異世界の料理の為にしっかり働く」
精霊ちょろすぎない?このままいくと、料理屋の店主はみんな精霊と出来るんじゃないか?
「ディアーネより料理が上手い人がいるならそうかも?」
何百年も料理をしてるディアーネさんより美味しい料理を作るのは簡単じゃないし。
ある日突然、料理人が地の精霊王と契約したなんてことは起きないか。
「それに精霊どうしだからこんな感じなだけであって、人間相手にはもっと厳しい。それで、どんな家を建てる?」
「俺はお任せで良いや。あとはあっちの人達の家もお願い」
「光の精霊の契約者…もしかして勇者?」
「そう。あっちに居るのは全員勇者の関係者」
「そう言う事なら分かった。でも、その分料理はいっぱい欲しい。後、マグロとアボカドのユッケ丼もまた食べたい」
「分かった。今までより多く用意しておく。マグロ丼の方もちゃんと用意しておく」
それを聞いたロスさんはハジメくん達の方にどんな家が良いか聞きに行った。
サリーさんが精霊王様に家を建てさせるなんてって萎縮してるけど、多分大丈夫だろう。
アイは…まだ気絶から立ち直ってないな。
目が覚めるまで待つの暇だな。
これで起きないかなと思い顔面に水を当てた。
「冷た!?って何するんですか先輩」
ほんとにこれで起きるもんだなと感心してる間にも、アイプンプン怒っている。
結構大雑把に水をかけたから服までビショビショになってるから、そっちは乾かしておこう。
アイの怒りが治まるまで誰も助けてくれなかったので、結局時間をとられることになった。
読んでいただきありがとうございます。
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