第11話

「何か見たことない物無いかな〜」


ひとまず、島の内側に向かってひたすら歩く一行。

テレビで見たアマゾンとか所謂、熱帯雨林って言われる様なイメージの森が広がっている。

シャルいわく大っきい川もあるらしい。


「何か見つかってくれないとホントにただ散歩してるだけですからね。現状」


確かにマルタの言う通りなんだよね。

マンゴーとかバナナが有る気がするんだよね。


似たような感じの獣王国でこんな果物採れない?って果物の特徴を言っても見た事無いですって言われたし。

フェムトに聞いても、精霊界中を探せば見つかるかも?管理はしてるけど流石に全ての植物を知ってる訳じゃないからと言う返答だった。

マンゴーはそんな日常的に食べるものじゃないから別に見つからなくて良いんだけど、バナナは欲しいな〜って思ってるんだよね。


バナナって野生種だと種がいっぱい入ってるんだっけ?

食べれればどっちでもいいか。


「あれ、カカオじゃ無いですか?」


メルがカカオポットを見つけて指を指す。


「この間食べたチョコレートは美味しかったです。チョコレートは人力じゃ作れないんですか?」


フェムトがディアーネさんを怒らせて、その時に許してもらう条件としてカカオポットを入れれば自動でチョコレートまで作ってくれる魔道具をフェムトが作った。

その結果みんなチョコレートを食べれるようになったわけだけど。

今ではみんなチョコレートの虜になっている。


「人力でも作れるけど、工程が多いしフェムトの魔道具で作った美味しさのチョコレートは出来ないと思うよ」



「獣王国でもカカオは採れますし、チョコレートを作れればと思ったんですが」


「作れるには作れるよ。フェムトの魔道具みたいに全自動の魔道具じゃなくて油を絞ったり、粉々にする魔道具を個別に用意すれば作れるだろうし」


全自動で何もかもやってくれる魔道具は無理でも工程事に分けて魔道具を作るなら、普通の錬金術師でも作れるだろう。

それがあれば美味しいチョコレートが作れるんじゃないかな?多分。


「それならフィロさんに相談すれば出来そうですね」


知り合いの錬金術師はフィロさんしかいないからそうなるのは当たり前だけど、無理はさせないでよ?

1度チョコを食べさせてこれを作るための魔道具と言えば必死になって作ってくれるでしょうと怖い事言っててちょっと不安。


「メル程々にね?ハジメくんとの結婚準備で大変だろうし」


「それは当然です。流石にそれは邪魔しません」


心外ですと言った感じで返事をされた。

そりゃ当たり前か。

それにそれ関係で忙しいのはメルも一緒だ。

俺も披露宴とか結婚記念のパレードとかしなきゃ行けないので色々決めなきゃ行けないことも多いのだが、そこら辺全く分からないのでフィア達にほぼ丸投げしてしまってる。

唯一披露宴の食事は俺とディアーネさんが担当なので色々話し合ってるけど。

男一人暮らしだった俺がそんな披露宴に出てくるような料理を作ったことある訳ないので難航中。

友人の披露宴で、出てきた料理を思い出しながらディアーネさんと試作中である。


「そんなのがホントに美味しいの?」


「あのまま食べるんじゃなくて、チョコレートと言う食べ物に加工して食べると言ってました」


チョコレートの話に釣られたのか2人の精霊王が現れた。

リースさんには後ろから肩を掴まれ、さらに上半身だけ土から出てきてるロスさんに両足を掴まれている。


リースさんは流石、風の精霊王。この世界では俺らしか食べたことの無いチョコレートの存在を既に知っていたようだ。

ロスさんはチョコレートは知らなかったけど

見た目が美味しくなさそうなカカオの実が美味しく食べられるって言うのが気になったってところだろうか。


「2人とも手を離してください、この状態じゃチョコレートの用意出来ないですよ?」


そう言うと即2人は俺から離れた。


とりあえず板チョコを渡せばいいか。

2人に1枚ずつ板チョコを渡す。


「これがチョコレート…」


「原型が無くて別物みたい」


リースさんは受け取ると早速板チョコを割って1口食べてニコニコしている。


ロスさんはカカオの実と板チョコを見比べて

コレホントにカカオの実から出来るの?と疑問を持ちつつ、リースさんの真似をして板チョコを1口食べた。

表情は変わってないけど、無言でどんどん食べているので美味しかったのだろう。


「凄い美味しかったわ。チョコも貰っちゃったし、仕事してますよアピールとして中間報告でもしようかしら」



「確かに中間報告は聞きたいですね」


索敵をしているシャルからすごい勢いで島全体に生き物が増えてますって聞いてはいるし、俺もシャルより範囲も精度も低いけど索敵をして生き物が増えてるのは分かってる。

けど、本人からの報告も聞いといた方が良いだろう。


「ある程度、把握してると思うけど、暑さに強い動物を精霊界含め色んなところから連れて来てるわ。虫も適当に捕まえて放してるから植物の受粉とか土の状態も大丈夫だと思うわよ」


精霊界からも動物を連れてきてるってことに若干の不安は有るけど、人間界にいても問題ない種類を連れてきてると信じてる。

他は何も問題ないしそのまま進めていって欲しい。

次はロスさんの報告だな。



読んでいただきありがとうございます。



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