第10話

フィロさんが落ち着くまで、元々知り合いだったフィアに任せて、ボーッとしてたんだけど、何故かテントや野営する時に便利な魔道具を全部無料で貰える事になっていた。

最終的にはフィアが何言っても料金を受け取ろうとしないから、コウが説得してくれとフィアに押し付けられた。


「水の精霊王様からお金をいただくなんて、そんな事出来ません」


フィロさんはこの言葉だけを喋る機械になってしまった。

これで納得してくれるか分からないけどやってみるか。


「もし、フィロさんがお店で王族の方からお金をいただくなんて出来ません。どうぞ、お好きなだけ持って行ってくださいって言われたらどうします?」


「勿論、しっかりお金を払いますよ?

お店の方の生活も有りますし、本当にタダで貰ったら王族としての品格にも関わります」


よし!思った通りの回答ありがとうございます。


「今も同じ事が言えますね?」


最初はどういう事?って顔をしてたけど、少ししたら言いたいことが分かったみたいで、

苦笑いをしながら謝られた。

代金もちゃんと受け取ってくれた。

おまけだと言って錬金術で作る使い捨ての

アイテムも渡されたけど、このぐらいは厚意として受け取っておこうと思ったので貰っておいた。


「買い物だけですぐ終わる予定だったの予想以上に疲れた」


でも、いくつかお店を回らなきゃ行けないかな?って思ってたけど、フィロさんのところで全部手に入ったし、良かったと言えば良かったけど。


用事も終わったし、馬車で屋敷に帰るだけと思っていたのだが、馬車が屋敷とは別方向に動き出した。


罠にはめられた?とも一瞬思ったけど、他の皆が焦ったりしてなかったので、予定通りということだろう。


「今、どこに向かってるのこれ?」


「お洋服屋さんですよ。約束したでしょう?皆で行きましょうねって」


俺の質問にマルタがそう答えた。

そんな約束もしたなそう言えば、夕飯の時間までに帰れるかな?


それにしても、少なくともフィアは俺と同じ容易された物を着ればいい派だと思ってたんだけど。


フィアの方を見ると目を逸らされた。


「甘いですよコウさん。フィアお姉様は自分の着る服に興味が無いだけです」


そうだ!ルージュは?ルージュならつまんない帰ろうって言い出すだろう。あれっ?

そう言えばルージュがいない…まさか。


「ちなみにルージュちゃんは暇だろうから先に帰ってもらいました。今頃、ディアーネさんの作ったおやつでも食べている頃でしょう」


バッチリ対策されていらっしゃる。


「でも、ルージュ1人で帰したの?危なくない?」


もし、ルージュをさらおうとする奴がいたら

大変だからな〜(さらおうとした奴が)


「忘れたんですか?私も精霊魔法を使えるようになったから、私が転移で直接屋敷に送りました」


そうだった、その手があったか。


「まぁ服屋に行くの自体は普段より疲れるだけで、別に嫌じゃないけどね。皆も服買うんでしょ?」


「それは勿論!コウさんも私たちに着て欲しい服があったら遠慮なく言ってくださいね」


「「「えっ!?」」」


フィアたちは、どうやらマルタの着せ替え人形になるのは俺だけだと勝手に思っていたらしい。


結局、自分たちも着せ替え人形になるとわかった途端、服屋に行きたくないと抵抗しだした、フィア、メル、イスカを抑えながら服屋へと向かった。



ーーーーー



「ご利用ありがとうございました!」


同行者全員がマルタの着せ替え人形になって数時間。

お会計を終えて外へ出たら日はもう沈み外は真っ暗になっていた。


と言っても大通りなどには錬金術師が作った

魔石で動く街灯のようなものがあるので、それなりに明るい。


「コウもこちら側の人間だと思っていたのに、結構ノリノリで私たち服を選んでいたな」


服を選んだと言っても全身コーディネートした訳じゃなくて、これ来て欲しいなって服を選んで、他はマルタにその服にあうものを選んで貰った感じだ。


マルタの服を選んだ時は、全身コーディネートさせられたけど、店の人が俺が選んだ物を持つフリをしながらさり気なくアドバイスしてくれたので助かった。

これが良いと思います。とはっきりは言ってくれなかったけど、それをしちゃうと店の人が選んだ物になるからという事だろう。


マルタも喜んでくれたし、多分問題なかったと思う。


服のセンスはあれだけど選んでくれた事が嬉しいとかじゃなければ…。


「フィアだって、俺の服を選ぶ時はノリノリだっただろ?」


実際、マルタよりフィアの方が持ってきた量多かった。

普通にセンスは良かったから全部買ったけど。


誰が選んだ服なのか分かるように閉まっておこう。

2人きりで出かける時とか、一緒に出かける人が選んだ服を着てった方が良いだろうし。


「今度こそ屋敷に帰ろう。一応明日からダンジョンに潜るんだし、しっかり寝て疲れが残らないようにしないと皆もついてくるんでしょ?」


ハジメくん達とダンジョン行く事になったけど一緒に来る?皆、行くって言ってたから、

明日からダンジョンアタックなんだけど、

みんな明日から遠足だ!ぐらいのテンションなんだよね。


まぁ実際、みんなの実力的に遠足気分なのもわからなくもないけど。


それでも、油断していると足元をすくわれかねないので、明日もこの感じだったら気を引き締めるよう言った方が良さそうだな。




読んでいただきありがとうございます。








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