第27話

王都上空に着いたと連絡を受けたので、いつでも降りられるように甲板に向かった。

甲板では殿下が、兵士たちを鼓舞する為に演説でもしてるのかなと思っていたけど、みな黙ってただ王都を飛行船から見下ろしていた。


「静かすぎない?殿下の演説前でみんな黙ってたとか?ひょっとして1番悪いタイミングで甲板来ちゃったかな?」


ボソッと呟いたのがフィアに聞こえていたらしく、それ、本気で言ってるのか?という顔でこっちを凝視してきた。


「どう考えても、王都の惨状を見て声も出ない出ないだけだろう」


そっかー、自分の国の王都が氷漬けになってるのは、ちょっと刺激が強すぎたって事か。


そんな事より、凍らせた時には無かった魔力反応が有るんだよね。

恐らく邪神の使徒か帝国の兵士どっちかだと思うんだけど。

時間が動き出した後に、確認しに来たのか?

もしくは、1人で殲滅出来ると思ってるのか。

どちらにせよ、無駄な犠牲を出したくないし、俺が直接相手をしよう。


そんな事を考えていたら、殿下が話しかけてきた。


「申し訳ない。皆この光景を見て、驚いているみたいで、かく言う私も数分前までは同じように王都をただ眺めていたのですが」


「都市が丸々凍るなんて 、精霊だったら上位精霊以上じゃないと出来ないですからね。ましてや自分の国の王都なのですから、そうなるのも仕方の無いことだと思いますよ」


「それでこの後の動きなのですが、このまま城の中庭まで移動してそのまま着陸。その後、反乱に加担した者たちを1箇所に集めてから、一般人を解放。反乱軍は尋問などの必要に応じて順次解放していくと言うので大丈夫でしょうか?」


「基本それで問題ないんだけど、ベラフにいた間に1人王都に侵入してきた奴がいるみたいなんです。多分敵だと思うので、余計な被害を出したくないし俺が相手するつもりなんですけど良いですか?」


「分かりました。ここまで来たら、もうコウ殿に任せる方がいいと思うので、お願いします。ただ、私もついて行って良いですか?」


殿下も一緒にか、殿下の知り合いかもしれないし、その場合一緒に来てくれた方が楽か。

護衛はしっかりしないといけないけど。

殿下からしたら、自分の家な訳だし、道案内も頼めるな。


「分かりました。でも、最低限護衛も連れてきてくださいね。俺も不意打ち等されないように注意はしますが」


「私自身もそれなりに戦うことも出来るのですが、王族ですし仕方ないですか。

分かりました。ちゃんと護衛も連れてきます」


話をしている間も飛行船は移動を続け着陸地点である城の中庭上空まで到着した。

殿下が兵士たちに作戦の最終確認をしつつ鼓舞もしている。

だけど今回、戦闘じゃなくて正直、後処理みたいなものだから、殿下も兵士も若干苦笑いをしている。

まあ、手を抜くような人達じゃないから大丈夫だろう。


ついに飛行船が中庭に着陸し、決められた順番ごとに降りて、王都中に兵士が展開していく。


兵士達が全員降りた後、コウ達も飛行船から降りて、魔力感知で感知した恐らく敵が待っている方に向かって歩き出す。


「コウ殿は魔力感知で、敵と思われる反応を感知してるのですよね?その者の魔力量はどれぐらいなのですか?」


反応に向かって歩いていると護衛の1人にこんな質問をされる。


「んー。対して多くないかな?多分魔法使いタイプというよりも魔法剣士とかそんな感じだと思うよ。それにしても、こんなに派手に動いてるのに、全く動かずこちらを待ってるんだよね。よっぽど自分の力に自信があるのかな?」


かなり真剣に質問してきた護衛に対しコウは軽く回答をする。その様子を見て着いてきている全員が、この人は敵と認識してないんだなと確信した。


コウはその様子を見て、油断だけはしないようにと釘をさされる前に、こちらから油断はしてないよと伝えておく。


「大丈夫、油断をするつもりは無いよ。またフィアをさらわれる訳には行かないし」


実際、魔力感知で分かっている付近にスキルや魔法が使えないように権能を使っている。

相手がそれに気づいて、逃げたりしようとしたら動きも止めようと思っていたが、相手は全く気づかず動かず待っているので、そのままにしている。


既に敵はまな板の上の鯉と言った感じで、生かすも殺すもコウの自由と言った感じなのだ。


「アウルス殿下、このまま真っ直ぐ行くと、どこに着きます?」


真っ直ぐ伸びた廊下の先に一際大きて豪華な扉がある。恐らく謁見の間だろうなと思いつつ、アウルス殿下に質問をする。


「謁見の間です。あそこにいるんですね?」


「そうですね。相手は出てくる気がないみたいなので、こっちから行きましょうか」


扉を開けるために近づこうとしたらフィアに止められてしまう。


「私が魔法で開けよう。近づいた瞬間扉ごと攻撃される可能性もある」


そう言ってフィアが魔法を使ったのだろう。自動ドアみたいに、ドアが勝手に動きだし開かれる。


中を見ると玉座に15歳ぐらいの男の子が座っていてこちらに話しかけてきた。


「わざわざ、自分達から死ぬために来てくれてありがとう。自分から行くのが面倒だったんだ」


何か、喋ってるけど少年を目視した瞬間空間ではなく少年に直接権能を使っている。

今回はしっかり動きも止めているので、彼はもう既に喋る以外何も出来ないんだけど、気づかないのかな?

もうただの遊びだし、気づくまで付き合ってやるか。


「まさか瞬神がいるなんて!コウ殿お気をつけください、奴は時間加速のスキルを持っています。スキルを使われる前に倒さないと勝ち目がありません」


もう既にスキルを使えない事を知らない殿下が、焦って話しかけてくる。


その姿を見て瞬神とか言われてる少年はケラケラ笑ってるけど、

いつ気づくんだろう(笑)自分がスキルどころかもう動くことも出来ないって。

もうちょっとこの喜劇に付き合ってやるか。


読んでいただきありがとうございます。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る