第26話
「ただいまフィア。俺がいない間に誰か来たりした?」
「メル殿下が尋ねてきたぐらいで他は何も無かったぞ。言われた通り、精霊神に会いに行ってると正直に答えたが本当に良かったのか?」
「問題ないよ。元々使徒である事は隠してなかったし、すでに色々暴露しちゃってるし。
わざわざ、自分から言いふらす事はしないが、聞かれたら答えるぐらいのスタンスで良いかなぐらいで良いかなって」
「それぐらいがちょうどいいかもな。こちらから、広めなくとも勝手に話が広がっていくだろうしな。それこそ、今回関わった人全ての記憶を改変したりしない限りは」
フィアがそう言ってこちらを見てくる。
「そんな事俺には出来ないよ。フェムトなら片手間で出来るだろうけど。神様の中でもしっかり規則が有るみたいで、勝手に記憶の改変なんかしたら何らかの罰則を受ける事になるみたいだから、やらないだろうし。規則を破ろうとする神を押さえつけるのが大変だって愚痴ってたよ」
「なんというか、もっと優雅な暮らしをしてるものだと思ってたんだが、神々も大変なのだな」
俺も最初はずっと宴会してるのかなーとか思ってたけど。実際真面目な神様は人間以上にブラックな環境で社畜をしていた。
世界の管理だけならそれなりに余裕を持ってできるらしいのだが、暇つぶしで、世界を終わらせるような力を持った魔物を作ろうとしたり、わざと悪人に加護を与えて暴れさせようとしたりする神を押さえつける仕事まであるから、余裕がなくてブラックな環境になってしまうらしい。
「話が変わっちゃうけど、メル殿下の用事はなんだったの?」
そう聞きはしたが、もし重要な事だったら最初に話してるだろうし、重要な話では無かったんだろうと予想する。
「何となく予想は出来てるだろうが、コウと話がしたかったと言っていた。私が言うのもなんだが、しっかり話ができる機会を作ってあげて欲しい。流石に不憫でな。今回だって時間ギリギリまでコウのこと待っていたのに会えないし、メル殿下が帰って直ぐにコウが戻ってきたしな」
確かに、前回話した時も途中でフェムトが来たせいで、しっかり話せてないし。
今回はタイミングが悪くて、話せなかったみたいだし。
王都を取り返せれば、多少は時間が取れるかな?逆に仕事が増えて時間が取れないかもしれないか。
今からだと、また話してる途中で中断することになりそうだし、王都を取り返した後に、予め時間を決めた方が邪魔が入らず話せるかな?
「俺もちゃんと話したかったし、精霊界でフェムトの手伝いもしなきゃいけないけど、ゆっくり話するぐらいの時間なら大丈夫なはず」
「精霊界でフェムト様の手伝い?どうしてそんなことに?」
「大勢を一瞬で回復させる道具を貰う代わりに手伝うことになった。それに今回手伝うのは本来だったら、俺がやる仕事だったみたいだし」
「まぁ、そういう事なら仕方ないか」
そう言って少し寂しそうな顔をする。
「それでなんだけど、フィアが良ければ一緒に来て欲しいんだよ。1人だと寂しいし、1ヶ月ぐらいかかるみたいなんだよね」
「じゃあ、ついて行かなかったら 、コウに1ヶ月会えない?」
「流石に1ヶ月ずっと帰ってこないってことは無いけど、帰って来れるのは良くて1週間に一回ぐらいかな多分」
「着いていく!」
圧がすごい。絶対に着いて行くからなっていう気迫を感じる。
おれとしても着いてきてくれる方が嬉しいし、おいてくつもりは無いけど。
「じゃあ、ディアーネさんが人間界に残って、もしも何かあったら俺に教える係ね」
ディアーネさんが、えっ!と声をあげて焦りだした。
「いきなり何を言ってるんですか?
コウ様が精霊界に行くなら私も精霊界に帰りますよ?」
やっぱりそうだよね。俺がいない間何かあっても、対応できる人がいて欲しいんだよね。
ディアーネさんなら実力もあるし、精霊界と人間界を自由に行き来できるから適任だと思ってたんだけど。
何を言ってるんですか!絶対一緒に帰りますからね?と言ってるディアーネさんを何とか説得するしかないか。
「新作料理1つでどうですか?」
何で釣るかなんて分かりきっている。
料理、寧ろディアーネさんにはこれ以外方法なんてないだろう。
「1つじゃ少ないです。3つ教えてください」
やっぱりのってきたけど、3つ教えろと来たか。日本の料理はディアーネに対して切り札になるから、一気に教えたくないんだよね。
そんなに沢山知ってるわけじゃないし。
「おかずとかじゃなくて、メインの料理1つならどうですか?」
それを聞いて、ディアーネさんが悩み出した。これは行けるか!
「なら、メイン1品に軽いおかずを1品の合計2品これでどうですか?」
まあ、それならメインに合うものを作るだけだし、イメージ的には1,5品ぐらいの感覚だし。
「分かった、メインとおかず1品ずつそれで行きましょう」
「分かりました!で、私はコウ様がいない間誰の指示で動けば?」
フィアがいればフィアに頼むんだけど、今回は一緒だし、そうなるとマルタかな?
「水色の髪の毛の女の子覚えてる?」
「焔の子孫の女の子ですね。覚えてますよ、反転もしていましたし。」
見るだけで、そこまでわかるんだ。俺は精霊の血が流れてるぐらいしか分からないけど。
それに焔の事は呼び捨てなんだ。
「焔は同時期に生まれた精霊ですし、仲が良かったですから、あっちが精霊王になってもそのまま呼んでます」
「そうだったんですね。その子がマルタって言うんだけど、マルタの護衛をしつつ指示をして貰って」
「分かりました。焔もいるらしいですし、暇つぶしもできそうなので、コウ様がいない間はマルタ様の所にいることにします」
ひとまずこれで、俺が人間界にいなくても、何かあったら直ぐに分かるなと考えていたら、ドアがノックされる。
「アルトです。王都上空まで到着致しましたので、甲板までお願いします」
どうやら王都に到着したらしい。
すぐに出ます。と答え椅子から立ち上がり、ドアへと向かった。
読んでいただきありがとうございます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます