第21話
「確認も取らずに押しかけてしまい申し訳ございません」
今回、先触れも無しに突然部屋を訪ねたので、時間がかかるか、1時間後にもう一度お越しくださいとか言われると思ったけど、驚くほどあっさり中に通された。
「その辺は気にしないでください。昨日から色々大変だったようですし、会議の前にリンファス王国陣営として意見のすり合わせは重要ですので。ところで上位精霊と契約を結んだと言うのは本当ですか?」
やっぱり聞かれるよね。団長さんは俺の事も焔の事も知ってるけど、部下もこの場所にいるし近衛騎士団団長なんだから聞かない訳には行かないよね。
「そうですね。結果的に契約を結ぶ事になりました。ディアーネさん出てきてください」
料理が絡まなければとても常識的なディアーネさんだから無難な挨拶をしてくれるでしょう。
「人間の皆さま初めまして、上位精霊のディアーネです。普段は精霊神様のお世話をしているのですが、精霊神様に、使徒であるコウ様の護衛をして欲しいと、お願いされて契約する事になりました。宜しくお願いします」
あれ、なんか思ってたのと違う。3分の2ぐらい、わざわざ言わなくていい情報入ってるし。精霊神様のお世話係とか、そのお世話係を護衛として契約させるぐらい、精霊神と使徒の俺の中も良好ですよアピールまでしちゃって、完璧にこっちに手を出すようなら、精霊神様が黙っていませんよ?って言うもはや脅迫だよねこの挨拶。
団長を含め相手側みんな固まっちゃってるじゃん。
ディアーネさんがドヤ顔で、どうです完璧でしょう?みたいな顔してるのがすげームカつく。
「ディアーネさん、この人達は味方なんだから、もっと普通の挨拶出来なかったんですか?」
「味方だからですよ。私は護衛のために契約していますので、味方だからと言って、あれこれ手伝わされると、護衛が出来なくなってしまいます。結果的に、護衛をしてってお願いしたのに何やってるの?と精霊神様の怒りをかう可能性も有るし、お互いの為にしっかりと伝える必要があった訳です」
言ってる事はわからなくはないけど、もうちょっとソフトな言い方があったろうに
「全くお願いを聞かないという訳でもないです。コウ様が人として国で生活しているのですから、しっかりとした依頼であればちゃんとお受けます」
「分かりました。王城にはしっかりと伝えさせて頂きます。コウ殿の実力は既に知れ渡っていますので、馬鹿な事を考える者はいないと思いますが」
「力を持っている者が理不尽にそれを振りかざすのは、確かにいけないことだ。
だが、全く力を使わないのも結果的に要らぬ戦いを引き起こす事になる。そうならないようにバランスを考えて力を使うのも、力を持つものの責務だ。」
そうフィアに耳元に小声で言われた。
完全に理解出来た訳では無いけど、いつもでは無いけど、俺も今のディアーネさんみたいな対応をしなきゃいけない場面もあるって言いたいのかな。
それが出来ないといつか望まない戦いを引き起こす事になると、出来るかな俺に。
できる出来ないじゃなくて、力を持っているんだから、出来ないといけないんだろうな。
責務って言ってたし。
「直ぐに出来るようになる必要はないぞ、ただ常に意識することは重要だけど。
今はディアーネが代わりにやってくれてるし、私だって居るからな。ゆっくり出来るようになればいい」
「そうだねありがとうフィア」
「んん、そろそろ会議の話に移りたいのだが」
ちょっとイチャイチャしすぎたかもしれない。取り敢えず今は本題に戻らなきゃ。
「そうですね。国王陛下はどのようなご指示をされたのですか?」
「リンファス王国としては飛行船リンドブルムの試験というのが1番の目的です。いい結果が出ていますので、直ぐに2番艦の建造が行われるよ思います。戦闘に関しては獣王国側を尊重し、支援要請があった場合、参加すると言う感じです」
基本は深くは関わりすぎないようにして、終わった後に国同士、上下関係ができるだけ出来ないように配慮してる感じかな?
それでも獣王国はリンファス王国への凄い貸しが出来てしまうのには変わりないけど。
それと、飛行船の2番艦建造か。島ウミガメデカすぎて、冒険者ギルドじゃ買い取り難しいかなって思ってたけど、このタイミングだったら国が買い取ってくれるかな?
聞いて見るだけならタダだし、聞いてみるのが早いな。
「戦闘に関しては承知しました。それと飛行船2番艦の話なのですが、その為の素材はもう用意出来てるのでしょうか?島ウミガメを丸々持ってますので、もし準備中であれば、販売する事も出来るのですが」
「島ウミガメは生きている時は魔法無効や甲羅の部分は魔法を反射してきます。死んだあとも強力な魔法耐性を持っている素材として使えます。飛行船の素材としては勿論、防具や魔道具の素材としてとても優秀なので是非買取させて頂きたいです。陛下の許可が必要ですが、直ぐに許可が降りると思います」
「分かりました。島ウミガメには手を付けづに保管しておきます」
その後、これ迄の会議でどんな事を話していたのか、話を聞いていたら会議の時間になったので、そのまま団長達と会議室に向かう事になった。
読んでいただきありがとうございます。
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