第18話

「う〜。なんですかこれ、全く抵抗できません。精霊界に帰ってきちゃいましたし」


権能で動きを止められて、無理やり精霊界に連れてこられたディアーネさん。

どうやら、権能については知らないらしい。

フェムトのお喋り相手もしてるから、知ってるかと思ってたけど、そんな事は無いみたい。

逆に知ってる人とかいるんだろうか?

まあ、そんな事気にしても意味ないか。


そんな事考えていると

「2人とも、早かったね。数時間ぶり」


まるで最初からそこに居たかのように、フェムトが目の前に立っていて話しかけてきた。

精霊界は彼女の管理する世界なのだから、当然と言えば当然なんだろうが。


「数時間ぶりフェムト。チョコに関してはまだまだ時間がかかるので、待っててください」


フェムトにチョコの話なんてした事ないけど、同じく話したこと無かったこし餡について知られてたんだから、チョコもバレてるだろうし、この言い方でも理解してくれるだろう。


「コウの記憶分しかチョコの知識はないけど、確かに時間がかかりそうだよね。美味しいものを食べたいし気長に待つ事にするよ」


流石フェムト、神話に出てくるような傲慢な神様じゃ無く、しっかりと話を聞いてこちらの事情も考慮してくれる。色々片付いたら、人間界にフェムトを讃える大きな神殿でも作ろうかな?


「そんな事しなくていいから、それよりこし餡作りに来たんでしょ?早く作ろうよ」


確かにそれが目的だった。

早速作りに行こうと言おうとした瞬間、ふとフェムトが、いつの間にか手に持っていたものが目に入った。


「なんで明〇の板チョコ持ってるの?」


フェムトは日本でよく見る、mei〇iと書かれている包装紙に包まれたチョコを持っていた。

もしかして日本に行って買ってきたとか?

やっぱり規格外だなフェムトって。


「食神の権能に、なんであろうと自分の望む料理に変えちゃうっていうのがあってね。それを使って用意したんだよ」


魔人〇ウの能力みたいだな。チョコだから余計にそっくり。説明的にはチョコ以外でも出来るっぽいけど。


「俺が作る必要なくない?」


カカオ豆から作る手作りチョコって〇治みたいなメーカーが作るチョコとは別物だし。

魔道具でメランジャー再現すれば近い物を作れるかな?


「食神が『いくら美味しくても、これでは魂が宿らない』って言ってたよ。僕も権能でホイって出されたものよりも、料理人が作ってくれた料理の方が嬉しいし。」


あったことも無い食神様に失礼かもしれないけど、権能はコンビニのお弁当的な感じ?

凄い美味しいし、前世ではよくお世話になっていた。別に悪いものでは無いし、夕食に出てきたって問題ないと思う。

だが、ちょっと焦げてたり、煮込みすぎてたりしてコンビニ弁当より美味しくなくても、

例えばフィアが俺にその料理を作ってくれたと考えると、確かにコンビニ弁当よりフィアの作ってくれた料理の方が食べたいって思う。


また食べたくなってきたな。フィアが作ってくれたサンドイッチ、美味しかったし、嬉しかった。

今度お願いしてみようかな。


「何となく分かる気がするから、ちゃんと作ることにするよ。」


「それは良かった。コウの記憶を覗いて知識としてチョコの事を知っても、味は分からないから気になって作っちゃったけど、コウが作ったものを持ってきてくれるまで我慢することにするよ。これは、コウにあげるね」


そう言って明〇の板チョコを受け取った。

チョコを作る時に色々参考にできるだろうから食べずに取っておこう。


「今回はこし餡だけどね。ディアーネさんの料理場に行けば、器材も揃ってるし、粒あんよりは時間もかかるからそろそろ行こう」


そうして料理場に移動した一行、フェムトは味見役として見学中、ディアーネさんと俺は渋きりが終わった小豆を柔らかくなるまで様子を見ながら煮ている状態で、この後の工程の話をしていた。


「ここまでは、粒あんとほぼ変わらないんですね」


「まあ、小豆を濾すか濾さないかの違いぐらいだし」


そんな話をしている間に、小豆が丁度いい柔らかさになったので、次は実際に小豆を濾す作業になる。


ボウルの上にザルを重ねて茹でた小豆を入れザルの底が浸るぐらいまで水も入れ、小豆を濾して皮を取り除く。


それが終わったら1度水を足して、濾した小豆が入っている液体を混ぜて、小豆が沈殿して来るまで待つ。

そして、沈殿したら上澄みを捨てる。

これを2~3回繰り返したら、ボウルとザルの上にさらし置いてその上にさっき作った小豆汁を流し入れて、しっかり水気を絞る。

(これが生あん)

砂糖と水を鍋入れて中火にかけ、沸騰したら

生あんを入れて、水分が無くなってきたら塩をひとつまみ入れて、かき混ぜた後火を止める。

容器に移して餡子が冷めたら、こし餡の完成。

日本なら冷ますのに時間がかかったけど、魔法ってホント便利、一瞬でちょうどいい温度になった。


「豆感が無くなったけど、凄い滑らかになってる。これも美味しいね」


試食してそう言ったフェムトが容器ごと持っていこうとしてたので慌てて止める。


羊羹を作って見たいから、全部持ってかれると困る。

料理に使いたいからと説明してフェムトには我慢してもらう。

後は羊羹を作るために寒天かそれに似たものが有るかだけど、それはディアーネさんに聞けば分かるか。


そう思って既にこし餡を量産しだしている、ディアーネさんに質問した。



読んでいただきありがとうございます。











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