第7話
「この後は、当人たちでゆっくり話をと思っていたが、それは私も聞いた方がいいということかな?」
この話、マルタ殿下に魔法を使う練習をさせたいって話だから、話を通しておかないと大変なことになるだろうし。
「マルタ殿下には、魔力制御の訓練をして貰う予定なので、陛下にも聞いて頂きたいのですが」
国王は難しい顔をする。
当たり前だ、魔力抵抗が極端に低いマルタ
殿下だ、魔力を制御しようと少し魔力を動かしただけで大怪我する可能性がある。
「それは、安全なのか?」
国王というより完全にお父さんの顔をしている。
「絶対に安全です。と言うのも精霊神様から頂いた、魔力制御練習用の魔道具があるからです」
そう言い、テーブルの上に一つの指輪をおいた。
昨日 、俺の前にひょっこり現れたフェムトが、可哀想だからとマルタ殿下用に作った魔道具だ。
「精霊神様がお作りになられた魔道具?」
国王がそう言ってフリーズした。
「話が戻ってしまうのですが、コウさん私の事はマルタと呼び捨てにしてください。婚約者なのですから。オフィーリアお姉様も同じ旦那様の妻として呼び捨てで呼んでください」
それもそうか。
「これからはマルタって呼びますね」
「はい、それと精霊神様がコウさんに授けられた神具を、私なんかが使う訳にはいきません。恐れ多いです」
なんか勘違いしてるみたいだ。
「俺が精霊王なのは知ってる?」
すっかり忘れていたが国王は俺の正体をしっかり話してるだろうか?
「それについては、昨日お父様から聞きました」
それならいいか。
「精霊王って精霊神に任命されてなるものだから当然知り合いな訳で、ちょこちょこ会って話をするんだけど、その時にマルタが可哀想だからって貰った魔道具なんだよ。つまり、その指輪はマルタの為に精霊神様が
作った魔道具って事だね」
その話を聞いてフィアは苦笑い、正面に座ってる2人は、なんて言えばいいか分からないようなすごい顔をしている。
「マルタ大人しく受け取った方がいいと思うぞ?そのうち精霊神様ご本人に会う事になるだろうし」
いやいや何をご冗談をって顔を2人がしてるが、近いうちに会うことになると思うよ?
「実際、マルタ以外が使っても、意味が無い魔道具だから使ってくれないと困る」
「どう云う効果なんだ?」
「装着者の魔力抵抗以上の魔力を操作しようとすると、キャンセルされます」
たったそれだけの効果だ、普通だったら要らない。マルタの場合これがあれば安全に練習出来る。
「確かにマルタ専用だな。ところで魔力制御の練習をしてなんの意味がある?」
フェムトに教えて貰ったこの世界の常識では
そうなるだろうな、だけど魔力制御は1番重要な技術だと言ってもいいものだ。
これもフェムトから教えて貰ったものだけど。
フェムトには本当お世話になりっぱなしだ。
感謝を込めて、フェムトを崇める教会とか建てるべきだろうか?
(直接、逢いに来てくれる方が嬉しいかな)
脳に直接フェムトの声が聞こえてきたんだけど、神様だからでいいか。
「無詠唱魔法を覚えるのに重要だからです。マルタには無詠唱魔法を使えるようになってもらいます」
「詠唱魔法が使えないマルタが!流石に無理があるんじゃないか?」
人間の常識ではそうだよな。
詠唱魔法を極める事で、その魔法を無詠唱で使えるようになるってのが常識だからな。
「無詠唱魔法は別に詠唱魔法が使える必要は全くありません。魔力制御とイメージがしっかり出来れば、使うことが出来ます」
同じ詠唱魔法を使い続けた結果、魔法のイメージがしやすくなって無詠唱魔法が発動した。別に極めたと言う訳では無いはずだ。
「そもそも詠唱魔法は、決められた呪文を唱えれば決められた魔力量が消費され、決められた威力の魔法が発動する。いわば規格化された魔法です」
詠唱魔法は誰がどう使おうと、同じ消費魔力、同じ威力が出る魔法だ、アレンジとか出来ない。よって練習すれば威力が上がるとかもない。
せいぜい噛まないように練習するぐらい?
「比べて無詠唱は、自分がどんな魔法が使いたいのか明確にイメージし、必要なだけの
魔力を自分自身で制御する必要があります。」
その代わり上手く扱えれば、魔力量を調整して、威力を自由に変えられるし、工夫しだいで同じ魔力量でも威力を上げることも可能だ。
「という訳で、詠唱魔法と無詠唱魔法は全くの別物です。どちらにも利点が有りますが
マルタには魔力消費を出来るだけ減らして
詠唱魔法のアイスアローと同じぐらいの威力がある無詠唱魔法をまず使えるように練習をして貰う予定です」
国王は今の話を聞いて何か考えている。
さっきまでとは違い王としての顔をしている。
「もし、マルタが無詠唱魔法を使えるようになったら、今の話を魔法学園で講義をして貰うことは可能か?」
毎日学園で講義は嫌だな。
「毎日とかじゃなければ」
「分かった。実際に結果が出てからにはなるが、結果次第ではお願いする事になる」
実際に簡単な練習をやってみるか。
「今試しに、練習して見ましょうか?」
無詠唱魔法が使えるというのはよっぽど重要なことらしい。即許可がおりた。
「まず指輪をつけて、魔力を手に集めて見てください」
全く魔力制御の練習をしない訳では無いらしく、魔力を感じて多少体内を動かせる程度には練習するらしい。
マルタはその練習をした時に体質が判明したみたいだが。
「コウさん全く操作出来ないです」
制御が魔道具によってキャンセルされている。マルタの魔力抵抗以上の魔力を制御しようとしてるからだ。
「もっと操作する魔力量を減らして」
その後、1時間ほど悪戦苦闘し何とか手に魔力を集められるようになった。
「やっとできた」
「どんどん次いこう。集めた魔力を使って水球をつくるイメージをして魔法を使う」
何度か挑戦して直径5cm程の水球を作ることに成功する。
「出来ました!本当に出来ました!」
嬉しそうに水球を眺めている。
「でも、この大きさではなんの役にもたちません」
直ぐに落ち込んでしまう。
1回に操れる魔力量が少ないから仕方の無い事だが。
「今は魔力を使ってゼロから水球を作りました。では空気中の水分を集めて水球を作ったら?」
言われた事を試すためだろう。魔力を手に集め出している。
五分ぐらいかかったか?だが同じ魔力量で
倍の大きさの水球が完成した。
「このようにアイデア次第でこれだけ効率をよくできます」
まだ発動に時間が、かかり過ぎて実戦で使えるかは難しいが。
それに攻撃に使うなら氷を作れるようにならないと、窒息とかを狙うのなら別だが。
「後は、魔力制御の訓練をしっかりすれば、もっと色々出来るようになりますよ」
「はい!頑張って練習します」
そう言って今日1番の笑顔で 返事をしてくれた。
読んでいただきありがとうございます。
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