鎌鼬の正体が二転する、二段構えの真相で面白かったです。
夜にしか泣かない弟の実の正体も、本当にただの赤子だったのかと疑ってしまいます。単に嫉妬だけで弟の首を切るにはあまりにも思い切りが良すぎる。文子は弟からなにか普通ではないものを直感したのではないか。
子育てに疲れて自傷虐待を繰り返す母親は弟を優先し、文子より大切に思っている。それは本当に愛情なのだろうか?
事件はまだ全てが明かされていない、怪談らしい余韻が残りました。
一家には狐や犬のように鎌鼬が憑りついていたのでは?
獣霊の憑依が祟っていたのかもしれない、そんな気がします。
作者からの返信
読んだ方が様々な想像を膨らませることができるように、敢えて明確なエンディングを迎えない作品を意識して書いた記憶があります。情報と情報の隙間を作ることで、読者が推理できるように書いた試験的な作品です。
明確な解答を求める方にとっては不完全燃焼な感じを抱くかもしれません。しかし、恐怖とは往々として、そういった「よく分からないモノ」に付きまとうものでもあります。志村様が想像力を膨らませてくれたことが何より嬉しいです。
何もしゃべることが出来ない赤ちゃんの真意がありそうで、不安な余韻が気持ちいいです。文子ちゃんの書いた手紙が、最近の事件で被害者になった子供が書いたものと重なり、気持ちがわかる悲しさとこの先どうなるのだろうという不安を感じてこれもまた良かったです。一つ気になったのが戦後5年後における「児童虐待」という言葉の取り扱い方が実際はどうだったんだろうかと考えました。もっと苛烈な言葉で書かれたのかなぁとか。
作者からの返信
コメントありがとうございます。懐かしい作品を取り上げて頂き、「ああ、そういう短編小説も書いていたなぁ……」と感慨にふけっております。
ご指摘いただいた通り、時代設定を考慮すると、もっと苛烈な表現が合っていたのかもしれません。この部分をどのように書いたら良いものか、或いは現代の感覚とは違った受け止め方を人々はしていたかもしれないなどと考えた記憶が朧気ながらあります。
正直に申し上げますと、取り上げた題材の重さに途中で気が付き、少なからず、及び腰になってしまったのだと考えています。今では時代考証が甘かったと反省しております。特に戦中、戦後の日本の情景、状態を扱うにはまだまだ未熟な点が多いのだと考えております。
貴重なご意見ありがとうございます。今後、執筆の際に参考とさせていただきます。まだまだ、百物語は続きますが、お付き合いしていただけると幸いです。