バブみ道日丿宮組

お題:誰かの挫折 制限時間:15分

 後遺症というものだろうか。

 1人になってから、何も感じなくなった。

 楽しい、嬉しい、辛い、悲しい、びっくり。

 ボクの中にあったものはどこかへいってしまった。

 不良というものにもしかしたら当てはまるのかな。いや、知らない人から見たらただの同族殺しか。

 まぁ……ボクには関係のないこと。

「……あんまないな」

 闇に紛れて人を襲う。それはボクから魂が抜けて誕生したもの。

 あるものを奪って、ないものを与えるもの。

 何度も繰り返した行為。

 人には許されない行為、ただボクはもう人ではない。そんな存在はもう捨て去った。ボクはボクとなった。

「……苦い」

 解体したいくつか口に入れると少々臭かった。

 持ち物にたばこ。

 おそらくヘビースモーカーだったのだろう。これが燻製に使う木であればもう少し香ばしく味わい深いものであっただろう。

 だが、街をあるけばまともな肉にも出会う。口直しの機会はいくらでもある。成熟してない身体を求めるのもありかもしれない。

 ボクを飼育してくれた親はもう少し噛みごたえがあったかな?

「……なにさ」

 それにしてもこの男……ひどい顔だ。

 いくら刺されたからといって、こんなにくっきりとわかるくらい驚かなくてもいいだろうに。悲鳴をあげるまでに事切れたから緊張感が肉体に残ってしまったとも言える。

「……」

 ひどい顔なら、目玉をくり抜き食べてしまえばいい。

 そうすれば、ほら……いつもの食材だ。

「……ふぅ」

 満たされたような、満たされぬような、不思議な気分。

 もう少し、侵食すればいいのか。

 後少し、歪めばいいのか。

 ほんのちょっと後悔すればいいのか。

 誰もボクに応えてくれない。


 だって、もうこの街はほとんど食い尽くしてしまったのだから。


 この気持ちはきっとーー

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バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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