第50話【レオン視点】
どうもみなさんこんにちはレオンです。
いやー、つらいわー。マジつらいわー。
将来有望の幼女たちが俺を取り合うとかマジで来てるわー。
まあ、うち二人は物理的に俺を切り捨てようとしている鬼とその弟子、さらにもう一人は王女の身分を利用して院長を追放しようと目論む幼女なんだけどね。ははは!
――負けるなあああああシオン! 負けるなあああああああああああリディアちゃん!
俺の命運は君たち二人にかかっている!
一回戦は俺の予想通り、
「レベッカ。師を破るにはまだ時期尚早ということです」
「ふふふ。わたくしの勝利ですわ」
「はぁ……はぁ……これで一歩シオンちゃんにおもてなしが近づいたかしら」
「相手が悪かった。ただそれだけよ」
響さん、レティファ、シオン、リディアちゃんが勝利を収める形で準決勝進出である。
ただのお遊戯にも拘らず、まるで本物の大会のような張り詰めた緊張感。
悪手に気がついたときに漏れる声以外、耳にすることはないという。
みんなどスケベ院長に何をお願いするつもりだったんだろう。
彼女たちがまだ幼く、悪い大人に目をつけられないよう孤児院の生活は決して贅沢とは言えない質素なものである。
これだけの才能溢れる美幼女と共にいて(といってもお金を稼ぐことができそうなのは錬金術師のクウぐらいのものであり※スピアちゃんは出版や認字率という高い壁。シオンは才覚に目覚めたばかり、レベッカたんは剣術なのでお金を稼ぐためにはリスクを負わせる必要がある、エリスは拉致の危険性が高いた表舞台にはまだ立たせられない。レティファは身分を利用させることになる。王族であることが発覚したとはいえ、公私混同の先に待つ未来など悲惨なものと相場が決まっている。リディアちゃんもレベッカたんと同じ。危険なリスクを負わせてしまう)いまだ貧しい思いしかさせていない院長。
見事優勝を勝ち取った暁には贅沢なお願いしようと躍起になるのも頷ける。
美味しいものや可愛いお洋服を買ってあげられなくてごめんね。
貯金は――あることにはあるんだけど、これは何かあったときの最後の手段だからさ。
中にはこれから教育という莫大な費用が発生することも考えればおいそれと手をつけられないのだ。ヒモになるためには心を鬼にしなければならん。
恨むならこんなゲス院長に拾われてしまった自分の運命を呪って欲しい。間違っても俺を呪わないでいただけるとありがたい。
俺以外はどうなってもいい! その代わり俺だけはあああああああ! というやつだ。
あいかわらずマジ院長。ワロタ。
そんな俺の内心をよそに。
奇しくも俺の首を狙う(二重の意味で)響さん、追放を目論むレティファの『さよならレオン組』と俺に
さよならレオン組には是非とも絶滅していただきたいものである。
俺がお願いをなんでも聞いてあげると告げた瞬間に見せた響さんのあの瞬発力。
間違いない。殺人鬼時代のものである。
よもや幼女たちとワイワイ楽しく盛り上がるために提案したそれを抹殺するために利用するとは夢にも思わなかった。
響さん、あなたには本当にガッガリしました。合体はおろか、そのFカップを鷲掴み、揉みしだいてすらいないのに。
くそっ、こんなことなら俺も参加して優勝したご褒美に「Hさせてください!」と迫るべきだったか。
なんにせよこんなところでクビになってたまるか!
準決勝は、
響さんVSリディア
レティファVSシオン
というカードである。
これは純粋に興味がある。
おそらくスーパーちょろインリディアちゃんの勝利はほぼ確実だろう。
言うまでもないがリディアちゃんは天才である。特に魔術方面に関しては間違いなく魔術協会が放っておかないレベル。
すでに万年Eランクの俺を超越している。比較することさえ烏滸がましいレベルだ。辛い。
これでも現役時代はどうして『魔術大学校に在籍できているか、わからない』『ここにいることが奇跡』『実力と結果が釣り合わない、まさに魔術――神秘の存在』と褒められてきた男だったんだが。いや、これどう考えても貶されてやがる。あかん、俺の過去マジでロクなものがねえな。やめだやめ。回想終了! あざした!
意識を現実に戻す。
人心掌握を持つレティファと先見の明に目覚めたシオン。ここは注目の対戦だろう。
見どころは俺の【天啓】により芽生えた『商売』をどこまでレティファが掌握できるか、もしくは前述の才能を覚醒させたシオンがどれだけその効果を発揮できるか。
俺を脳死させるため、瞳から光を消し、瞳孔を見開く
そのあたりが鍵を握るだろう。
……あれ、ちょっと待てよ。緊急事態からシオンを『おかえりレオン組』に入れたはいいものの、優勝したら「将来私のおもてなしで脳死してね。レオンちゃん」とか言われるじゃね? 結局、シオンも俺を殺すつもりじゃねえか! どうすんのよこれ! あやばい! タンマ! いや、タンマって歳がバレるな! 待った! やっぱりシオンが優勝するのは――、
「参りましたわ。強いんですのねシオン。全く歯が立ちませんでしたわ」
投了。
まさかのシオン圧勝である。なんと盤面の七割以上がシオンの石色だ。
やべえええええよ! こいつやべえええええええええええって! マジモンじゃねえか。マジで先見の明、発揮過ぎだろ!
「あーしの勝ちね響さん」
よおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉし!
さすがリディアちゃん! すごいぞリディアちゃん! 幼女に打ち負かされる年上系お姉さん。さすがの俺もざまぁ、だ。リバーシの勝敗で院長を屠ろうなど言語道断! 反省してください!
「ぐっ……! 参り、ました」
唇を噛み締め出血しながら頭を垂れる響さん。いや、悔しがり方! 露骨! 露骨すぐる! もうちょい隠そうよ! そんなに院長をクビにしたかったの⁉︎ もうそろそろ泣くよ俺⁉︎
「うっ、うっ……!」
いや、貴女が泣くんかーい! 幼女にリバーシでフルボッコにされて貴女が泣くんかーい! その涙の理由を知っている俺の方が号泣したいんですけど⁉︎ なんだこれ! 誰が勝っても負けても全然素直に賞賛できないのはなんで! 俺の周囲で一体なにが起こってんだよ!
あまりの不遇に背中が汗でびっしょりである。いや、発想を転換しよう。ボジティブに! ポジティブシンキングだ!
これで『レオンさよなら』組はけ散らかすことには成功したわけだ。最悪の事態は回避できたと思っていい。そうだ、そうだよ。そう考えれば全然マシな方さ!
残すは決勝戦。ここでリディアちゃんが勝利すれば優勝特権である「あーしのスカートの中に潜りなさいよ」とお願いされることになるだろう。そうなれば俺は幼女のスカートに潜り込める、リディアも笑顔、まさしくWin Winである。すげえぞ、Winしかない。これだ! これで行くしかない!
すまないシオン。元はといえば商売に必要な先見の明や頭脳を鍛えるために考案したリバーシだが、しょせんは遊戯。マインドクラッシュは勘弁願いたい。
安心してくれ。魔術大学校で恩を売ることに成功したレオモンド商会の令嬢からちょうど便りが返ってきたところだ。なんとあの代表と直接会えるところまで調整してくれたらしい! 君の輝かしい未来はもう約束されたようなものである。だからここで負けても問題ない。いや、むしろ敗北の苦汁を味あうことも人生には必要だ。
「さすが『商売』の才能持ち。やっぱり勝ち上がってきたわね」
「悪いけど勝たせてもらうわ。それがレオンちゃんの願いだから」
いや、負けてくれシオン。いや、これまで悔しい思いをしてきた君に優勝させてあげたい気持ちももちろん本物だ。しかし介護は行き過ぎだ。たしかに俺はヒモを夢見て孤児院を経営しているが、介護をして欲しいて頑張っているわけじゃない。
食事・排泄・入浴全て任せて、息だけしてくれればいいからは、もう死んでいるのと同じだ。
「お互い全力を尽くそうじゃない」
とリディアちゃん。スッと手を差し出し、握手を求める。いや、なんだこの少年漫画のような熱い展開は! 君たち幼女でしょ!
「そうね。でも悪いけど勝つのは私よ」
とこちらも臨戦状態のシオン。なんの疑いもなく握手に応じると、
「ふふっ、かかったわねシオン。勝負はもう始まっているっての!
『なっ⁉︎』
握手に応じるや否や、拘束系の魔術を発動するリディアちゃん。魔力で構成された蛇が繋がれた手にまとわりつく。
うわっ、汚ねえ!
変態どスケベ院長である俺にすらそう思わせる悪手である。肌に触れることで相手の思考や感情が読める異能。
それを武器に決勝戦に挑むつもりだ。ここまでその手を見せて来なかったのは決勝戦でやるつもりだったからか。
さすが、魔術師の天才リディアちゃん。魔術戦において
己の手札を最大限に駆使し、生き延びるためならなんでもするその根性。まさしく彼女が魔術師たる才覚を持ち合わせているその片鱗を見せた瞬間である。
だが、これだけはツッコンでおかないと死んでも死にきれないので言わせてもらう。
マジで汚え!
「正々堂々、戦いましょ?」
どの口が言ってんだリディアちゃん!
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