第30話【レオン視点】
どうもみなさんこんにちは。
愛するよりも愛されたい、非モテの象徴、レオンです。
いやぁ、やっちゃいましたね。とうとう最後の神セブンに【天啓】使っちゃった。てへっ☆
響さんの返事も待たずに発動したせいで、折檻が怖いです。
ちな俺の手を握りながら「……おもてなし。レオンちゃんにおもてなし……」とぶつぶつ呟いている幼女はもっと怖いです。
やべえヤツのやべえ才能を覚醒させちゃったかも。
内心でビビりまくる俺ではあったが、これでロリヒモ光源氏スパイラルが大前進したことは言うまでもないだろう。
シオンは孤児院経営の方針・計画に魅入って様子。外見も大人びてくれば『商売』の才覚を存分に発揮できることだろう。
……シオンが成人したら夜道には気をつけよう。拉致・軟禁されたら、過度のおもてなしで脳死しかねん。
とりあえず瞳孔を開くのだけはやめて欲しい。
さて、そんなわけでシオンのお手々を握って帰ってきたわけなのだが、
レベッカ「話しかけないで!」
クウ「放っておいて欲しい、なの!」
レティファ「話しかけないでくださいませ」
スピア「ふーん、です」
エリス「その……ごめんなさい」
リディア「……」
神セブンが冷たい。
なんかめっちゃ冷たかった。
俺が話しかけようとしても、全然相手にしてくれないのである。
しかもシオンも「ふふん」と勝ち気な笑みを浮かべるので、それと相まって険悪な雰囲気に支配されていた。
もっ、もしかしてそういうお年頃なのだろうか。
「お父さん臭い!」
「お父さん嫌い!」
「お父さんなんか死ねばいいのに! やっちゃえバーサーカー」
とか、言っちゃう時期なのだろうか。あかん、死ぬ。死んじゃう。
俺はシオン一人に冷たくされただけでも幽体離脱してしまうんだぞ?
全員から一斉に嫌われるとか魂が消滅してしまうかもしれん。
というわけですぐさまリディアちゃんに事情聴取。というかまだご褒美もらってない。
スカートの中に潜らせてくれる件はどうなったのさ!
「……シオンを宥めているときの会話、聞かれちゃった。てへっ☆」
これが本物のてへぺろ。幼女がやると破壊力がハンパじゃないな。相変わらずリディアちゃんはきゃわわ。
撮影して永久保存しておきたい気持ちに駆られたが、どうしても聞き流せないことがありまして。
宥めているときの会話を聞かれた……?
それってつまり――。
巣立っていったみんなから寄付を募る計画が露呈したってこと……?
俺の愛情はしょせん紛い物――お金のために優しくしていると思われたってこと……?
だから突然みんな冷たく……?
いや、間違いじゃない。
みんなの反応も当然だ。表面上はだだ甘院長のくせに瞳の奥が$マークになっているとかマジ軽蔑もんだもんね。
それはわかってる。自業自得だってことは十分理解しているつもり。
けど……!
いぎゃあああああああああああああああ!
嫌われた! みんなに嫌われた! 銭ゲバ院長だって思われた。もうマジつらたんリスカしょ……。
膝から崩れ落ちるように四つん這いになる俺。オワタ。俺のハーレムヒモ生活が!
「わっ、悪かったわよ……! けど仕方ないじゃない! レティファたちが声を拾えってしつこかったんだから!」
絶望する俺に事情を説明するリディアちゃん。おのれレティファ……!
さては俺の本性をいち早く疑い始めやがったな⁉︎ ぐぬぬ……!
「別に心配しなくてもあんたのことを嫌って――」
「――レオンさん。申し訳ありませんが執務室に来ていただけますか。お話がありますので」
リディアちゃんが何かを言いかけたところでタイミング悪く響さんから声がかかる。
視線だけ向けると、ゴゴゴとドス黒いオーラを纏う鬼嫁がいた。
うそーん。娘に拒絶されたあげく、嫁さんからも呼び出し食らうとか、ヤバくない?
そりゃは手段こそ褒められたものじゃないかもしれないけどさ、ちゃんと宥めたじゃん! シオンの涙消したじゃん!
褒めてよ! みんなもっと俺を褒めてよ! むしろ慰めて欲しいぐらいなんだけど! なんで俺の異世界転生はこんなにお辛いんだ! もっと俺を甘やかしてよ! お願いだからおぎゃらせてよ!
間違ってる! こんなの絶対、間違っているよ!
「早く来ていただけますか?」
「あっ、はい。すぐに行きます。少々お待ちくださいませ」
響さんの底冷えするような声音と刺すような視線により一気に現実に引き戻される俺。
……よし。ロリヒモ光源氏計画を変更しよう。軌道修正だ。
そうだな……脳死作戦に切り替えよう。食事も入浴も排泄も――俺の全てをシオンに委ねよう。考えてみれば悪くない。
思考を放棄できる上に何不自由ない暮らし。高級食材だって毎日食べられるだろうし、シオンば美人確定だ。
お願いすればエッチもさせてくれるかもしれない。悪くないどころか好条件も良いところだ。
そうと決まればさっさとお説教されてこよう。シオンの教育に心血注ごう。
本当は神セブンみんなの頭に良い遊びを思いついていたところだし。
頭を切り替えて俺は響さんの元に向かうことにした。
☆
(まずいですわね……)
リディアの遠見系魔術によりレオンの本心を盗み聞いていたレティファは焦燥に駆られていた。
(まさかレオン様が最も期待を寄せているのがシオンとは思いませんでしたわ)
王女であることが発覚してからというものレティファは心のどこかで優越感を禁じえなかった。
なにせ王族である。平民の男を手に入れることなど造作もない身分。
女王となればレオンを手に入れる手段など腐るほどある。むろん褒められたことではないが、その余裕がレティファの平常心を保っていることもまた事実であった。
(シオンの才能は『商売』。神セブンの中でも博識で頭の回転が早い彼女なら王国外での暮らしさえも選択肢に出てくるのは時間の問題。レオン様を養いながらどこでもやっていける才能ですわ。女王になったところで国外に連れ去られては外交問題に発展しますわ――これは真剣に考えなくてはいけませんわね)
神セブンという天才たちを前にレオンを独占する方向をきっぱりと諦めたレティファは熟考する。
(レオン様は平民の枠に収まらない王の器たる人物。わたくし一人が独占しようなどと烏滸がましいでしてよ。となると、神セブンを取り込み、飲み込む立場にならなければいけませんわね――女王になることでレベッカは剣聖として近衛騎士に、クウには王国発展のため特別枠の予算を準備し、錬金術に没頭させるのがいいですわ。スピアは王国と独占契約。文化事業の柱ですわね。エリスは新宗教。一般階級への法医術を解禁し、それを他ならぬわたくし――女王が支援する。これで民の支持は揺らぐことはありませんわ。リディアには王都の魔術学校に教授としての席を用意いたしますわ。必死に隠しているようですけど、魔術とは神秘。魔術師ならばその探究心は決して殺せませんわ)
「みなさん。聞いてくださいまし。わたくし――王都に戻ろうと思いますの」
「「「「「レティファ⁉︎」」」」」
☆
執務室にて。
「どうして私が呼び出したかはお分かりですかレオンさん」
と響さん。あー、怒った顔も可愛いな。
なんでうちの嫁さんってこんなきゃわわなんだろうか。
これから折檻が待っているというのに心が安らぐ。
「私と二人きりになりたかったから、でしょうか?」
「なっ、なな……ふざけないでください!!!!!!」
――バンッ!!!! っと机を真っ二つにする勢いで否定する響さん。
そっ、そんな必死に否定することないじゃん! そりゃ折檻が控えた状況でふざけたのは悪かったけどさ。
「違います!」
だからわかってますよ。そんなにハッキリと告げられた泣きますよ? いいんですね⁉︎
「至急レオンさんに伝えなければいけないことが三つあるんです」
みっ、三つ⁉︎
いやいやいや! 身に覚えが無さすぎるんですけど⁉︎
えっ、ちょっ、ええ⁉︎ 三つ⁉︎ 三つもあるの⁉︎
やだもうレオン怖い! ちびっちゃいそうなんですけど!
「……はぁ。レティファが王都に戻りたいと私に伝えてきました」
いわゆる頭痛がする様子――こめかみを指でおさえながらそんなことを告げてくる響さん。
レティファが王都に戻りたい……?
いぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
嫌だ嫌だ嫌だああああああああああああああああああああああああああァァァァァァ!
俺が銭ゲバ院長だと発覚したからか⁉︎
最低な男だとバレたからか⁉︎
俺は響さんの目の前だということも失念して、白目を剥き、ダダをこねるクソガキのように地面を転がり回る。
そんなああああああああああああああ!
うぎゃああああああああああああああ!
くそが! 床がキンキンに冷えてやがる!
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