誠の幼い頃のエピソード

誠は、男湯へ、姉と紀子は女湯へ進み、洲本温泉の入浴を満喫していた。

「紀子ちゃん、本当に久しぶりね!元気で何よりね!まさか誠とお付き合いしていた思わなかったわ!・・・誠に彼女が出来たって聞いた事はあったけど、紀子ちゃんだったとはね!」

「私も、驚きました!あの時お世話していただいた方の弟さんだとは知らなかったです。誠君の幼い頃のエピソードありますか?」

「誠は、小さい頃から、甘えん坊だったわね!よくこの銭湯に来た時なんか、10歳ぐらい迄、私とお母さんと一緒に女湯に入っていたのよ!・・・あとね、よくいちびっていたわ」

「えっ!いちびる???」

「あら!いちびるって言葉、使わないかしら?」

「あっ!いえ!聞いた事はあります!たしか、調子にのって、ふざけ過ぎる事よね!」

「そうなのよ!ふざけ過ぎてよく怪我ばっかりしていたから、もう大変だったわ!」

「へぇ!そうだったんですか?今の誠君はそういう感じには見えないんですけどね、幼い頃は大変だったんですか?」

「もう大変だったわ!4~5歳ぐらいの頃だったわね、いちびって、箪笥に頭をぶつけて、額を切った事もあったわよ!」

「えっ!なんで、そんな怪我を?」

「知っているかしら。テレビアニメで『ルパン三世』って放送していたのを」

「ええ!私も見てました」

「そのアニメで途中でコマーシャルに入る時と、終わって本題に入る時、主人公のルパンが車に飛び乗るシーンを知っているかしら?」

「ええ!たしか失敗して、外れたハンドルを持ったまま投げ出されるんでしたね」

「ええ!それを誠ったら、布団の上で真似しちゃって、勢いついて、箪笥の方まで飛ばされて、頭を打っちゃって、もう大騒ぎ、誠も顔中血だらけで大泣きしちゃって、すぐに病院に連れて行った事もあったわよ!」

「かなり、やんちゃだったんですね!」

「もう大変だったわ」

「かなりのイチビリだったんですね!」

「ええ!・・・紀子ちゃんは『いちびる』って言葉、あまり使わなさそうね!『いちびる』って関西でしか使わないみたいだけど。紀子ちゃんも関西が地元でしょう?」

「ええ!私は神戸で産まれたんですけど、お母さんは、産山村出身なので、お父さんは、地元の神戸ですが、私、お母さん似かも知れないです」

「うぶやま・・・村・・・って何処かしら?」

「熊本です。熊本の・・・阿蘇山の・・・東側・・・って言ったらわかりますか?・・・あと、すぐそばには、波野って所も有ります、けっこう田舎ですが!」

「へぇ!私、熊本に一度だけ行った事あるけど、熊本市と、阿蘇山に行ったぐらいで、産山とか波野って所迄は、知らなかったわ!自然がいっぱいあるんでしょうね!」

「ええ!かなり静かな所です」

「へぇ!良いわね!一度行ってみたいわね!」

「熊本も、良いとこいっぱい有りますよ!阿蘇山のほかに、黒川温泉も良いとこですよ」

「黒川温泉・・・聞いた事あるけど、石を積み上げて出来た橋から水が吹き出すのも近くにあるわよね」

「えっ!あっ!通潤橋の事ですか?・・・通潤橋は、黒川温泉からかなり離れてます・・・黒川温泉は、阿蘇山の北側、産山村の隣・・・大分県との県境近くです。・・・通潤橋は、逆の方向で、山都って所に有ります!・・・阿蘇山の南側になるので、だいぶ離れてます!」

「へぇ!やまとって所だったのね!私、黒川温泉も通潤橋・・・?って所も人吉って所にあるんだと、思っていたわ、人吉って行ったこと無いけど、聞いた事あるのよ、熊本って、良いとこばかりなのね!また行ってみたいわ!紀子ちゃんは、熊本に田舎があるのね!いいなあ!!」

「あっ!でもお母さんも私が産まれる前に籍を神戸に移しちゃったので、・・・私も、たまには熊本に帰省はしますけど、もう今は、お母さんの実家も今はもう無いですし・・・もう田舎の痕跡はもう無いです」

誠の姉と紀子は長々と、湯船に足だけ浸けながら話が進んだ。

約1時間程入って、出た時には、誠は、もうすでに出ていた。



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