せーので
「カハっ・・・・」
遠のいた意識を幸いにも覚醒させたのは、家屋に打ちつけられた、悪魔の拳により壊された身体の痛みであった。
「これはまずいな」
ラーファは全身に力が入らなくなり、身体の痛みも次第に感じなくなっていた。
「おまえも美味そうだな」
悪魔はラーファをつまみ上げ、顔を上に向け、口を大きく開けた。
「精霊の扉を開き・・彼の者を切り裂け・・・
ラーファは薄れゆく意識の中で、フッと微笑み、悪魔の口の中めがけて魔法を放った。
完全に油断していた悪魔は、口の中に広がる痛みに驚いた。
「お前!何するんだよ!!」
怒りに身を任せ、悪魔はラーファを思いっきりぶん投げた。
「く・・ここまでか・・すまない・・社長」
ラーファは目に涙を浮かべ、自分の弱さを悔いていた。
自分に襲いかかる衝撃を待っていたラーファであるが、そのときは訪れなかった。
「・・・まだ、死んでもらっては困る」
モビルスーツ姿のミルカが、ラーファを空中で受け止めた。
「ミルカさん・・住民の、避難は・・・・」
振り向くことさえ、出来ないラーファはそれでも、住人の安否を確認した。
「・・・大丈夫。エリーナが引き継いでくれたから」
ミルカはそっと、着陸しながら答えた。
「・・・・せん」
家屋の陰に座り、背中をもたれさせながらラーファは呟いた。
「・・・?」
ミルカは聞こえなかったようで、しゃがんで、顔を近くに寄せた。
「・・・・・すみばぜん!!・・わだし・・役に立てなくで!!」
ラーファは安心したからか、涙腺をキツく縛っていた緊張が抜け、己の無力さを嘆き、涙が止まらなくなっていた。
「・・・ラーファは優しい。それだけで十分に強い。・・・ゆっくり、休んでいると良い」
そう言い残すとラーファは勢いよく飛び立ち、悪魔の方へ向かった。
「・・・私の後輩を泣かせるとは、良い度胸・・・『ハローワールド、全機、起動。招集』」
ミルカは見たこともないほど、その表情には怒りが見てとれた。
ゴゴゴ・・・・ガシャン。
配達会社グリフォンフライの建物が2つに割れ、地下室までもが見えた。その中にある人型の機械化された、数十体のゴーレムの目が一斉に赤く光り出した。
「「「「全機、起動完了。行動ヲ開始シマス」」」」
「モグモグ・・ゴクリ。ああ、やっと口の中が治った・・・もっとたくさん、もっと多く・・まだ足らない・・」
悪魔は、再び人々を襲い、身体を大きくしており、その大きさは既に街の家々と変わらないほどになっていた。
「『全機、オート操作に移行。モード殲滅。一斉射撃、開始』」
・・・ドドドドドッ!!
・・・ロックオン完了。ボボボンッ!
「・・・・!?」
悪魔はいきなりの後頭部の衝撃に、思わず前へ体勢を少し崩した。
「・・・お前は許さない」
ミルカは悪魔を睨み付けながら言い放った。
「・・ごはんがたくさん」
振り返った悪魔の第一声は、そんなミルカを気にもとめず、ただ満たされぬ食欲を満たそうとしていた。
「・・・数で押しつぶす!」
ミルカとゴーレムは、散開し、上下左右、悪魔を取り囲むようにして包囲し、至るところから爆撃を開始した。
「うっとうしい」
悪魔は自分の周りをうろちょろするハエを撃ち落とそうとするも、巨大になったその体躯は、持ち前だった俊敏性を失わせていた。
「・・・そんなものなら、当たらない」
ミルカとゴーレム達はスイスイと悪魔の攻撃をかいくぐっていた。
持久戦になるかと思われたその戦いは、悪魔の行動をきっかけに崩れていきだした。
「この、いいかげんにしろ!」
悪魔は怒りにまかせ、家を持ち上げゴーレムの一機に向かって投げた。
「緊急離脱、回避・・不可のッ」
ゴーレムは避けようとしたが、高速で接近するその物体は、避ける空間がないほど大きすぎた。
「あはは、たのしいなこれ」
一機を撃ち落とした悪魔は、次々と家や地面を握りとり、投げ、一機また一機とゴーレムはその数を減らしていった。
「・・・くっ」
ミルカも状況が芳しくないことは理解していた。
「つぎ・・・つぎ・・つっ・・あ?」
悪魔は、楽しく遊んでいたところ、急に足下がぐらつき、尻餅をついた。
「デカくなりすぎだろ・・
その場に現れたのは、グランツ、ロイ、ユリの3人であった。
「これは骨が折れるな・・」
「ミルカさん、全力で短期決戦、全力で一斉攻撃と行きましょう!」
ロイが静かに闘志を燃やし、ユリが作戦を提案した。
「・・・了解した。助かる」
ミルカは頷き、ゴーレム達にも、指示を施した。
「『
「うぐぐ・・こんなもの・・くっ」
グランツの魔法で、地面が隆起し、悪魔の動きを止めた。
「今だ!」
グランツがそう言うと一斉に攻撃を始めた。
「『
「『
「『
「『
「ロックオン完了。魔光砲発射」
「ふん!」
4人とゴーレム達の攻撃が着弾するのと、悪魔が拘束を引きちぎるのはほぼ同時であった。
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