2-7-4 やっぱりすごいや私の相棒
― 青波出発の直後、坂上は早見に真相を話そうとするが…。
早見 渚の場合
「それどういうこと?」
急に、体を張る必要なんてないと、そんなことを言う坂上に、思わず私は尋ねる。
「そのまんまの意味だよ、俺が出る幕はない、というか体を張る必要はないって感じか。」
その言葉を聞いて、私は思った。坂上のこの感じは、一人で勝手に納得したときのやつだと。
「ちょっと、意味がわからないんだけど?」
私は少しイライラする気持ちを抑えてそう言った。
「だから、犯人はおめーらが想像してたような変質者じゃないってこと。」
まだ、私には先が見えない。
「じゃあやっぱり青波ちゃんの勘違いってこと?」
「いや犯人はいる、けどそれはストーカーじゃないし、ましてや変質者でもない。」
そろそろ焦ったくなってきたな。
「じゃあ犯人は誰なの…。」
私はこうなったときの坂上が、とてもめんどくさい人になることを知っている。こういうとき、坂上は答えを言うのをわざと躊躇う。まるで私を試しているかのように、正解を言わせようとするのだ。
「よく考えてみろよ、そうすれば犯人が変質者じゃないことくらいおめーでも…」
・・・坂上、怒るよ?
私は昔の感じを少し取り戻すようにそう言った。こういう時は、こんな感じで怒ったふりをするのが一番効果的なことを私は知っている。その顔は莉子や優衣にも、ましてや青波ちゃんにはとても見せられないようなものだと思うけど、ちょうど三人とは別行動をしていたから助かった。
そうすると思った通り、坂上は少し焦ったように、いや我に返ったようにこう言った。
「わーったよ、ごめんごめん。怒るなって、洒落になんない。」
私は、安心して元の声色に声を戻す。
「それでいいんだよ、坂上は良い子だね、うん。」
それは坂上にとって冗談だと捉えられているかもしれないけど、その実、案外私は本当に坂上を良い人だと思っていたりする。しかし、今はそんな話は二の次だ。
「言っとけ、じゃあ説明するぞ、まずはあのことからなんだけど…」
それを聞いて、私は改めてこうも思った。坂上は良い人なだけじゃなくて、やっぱりすごい人だって。
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