2-6 夫婦漫才
― 昼食を共にするクラスメイト、青波がストーカー被害に遭っているかもしれない…。そう感じた早見たちは、ある人物を助っ人として呼ぶのだった。
青波 美憂の場合
”はい、こちら坂上優、卑屈な高校一年生です!
おめーが自己紹介すんな。
今度って言ってたけど、坂上妙に勘良いときあるし、男手も必要だと思って今連れてきちゃった。”
彼らの自己紹介は、そんな夫婦漫才から始まった。どうやら彼がさっきの、坂上君、という人みたい。目がキリッとしてるとことか、確かに結構かっこいい人だ、怖い系の。
よろしくね、私も、というように、二人はもう自己紹介を終えていた、しっかりワントーン上の、きもちキャピキャピした声で。やっぱりすごいな、この人たち…!
「はいはーい、でね坂上、今回助けてほしいのは、この青波ちゃんのことなんだけど、」
出遅れた私を置いて、渚ちゃんが簡単に事のあらすじを坂上君に伝える。彼はめんどくさそうに首を傾けながらも、しっかりと話を聞いていたように見えた。
「つまり、俺に用心棒をやってほしいってことか?」
頭を搔きながら、気怠そうな視線を渚ちゃんに送る坂上君。その目は、私にはやっぱりちょっと怖いものに見えるけど、渚ちゃんはもうすっかりそれに慣れているみたいで、いつも通りの笑みを彼に返した。
「うん、そうそう!さっすが坂上―、話が早い。」
頼むところは私がしようと思っていたけど、彼は事情を聞いただけで自分に求められていることを察したみたいだ。これが二人の友情なのかななんて、私は少しほほえましい気持ちになりながらそう思った。
”見つけるのとか探すのとかは私たちがするけど、やっぱ私たち女のコだし?いざとなったら壁になってでも助けてほしいなーって、そういう感じ!
おめーならそんじょそこらの男になんて負けないだろ、てか壁かよ!
坂上の腕っぷしには期待してないからそこは大丈夫!
あーうん、そこまで清々しいと文句も出てこないわ。”
ほんと仲いいんだろうなーこの二人、と思っていると、五限の開始五分前に鳴る予鈴が、ほのぼのとした時間にピリオドを打った。
「あ、でもダメだ。俺、放課後サッカーやる約束してて…。」
予鈴が鳴り終わるより先に、坂上君が思い出したようにそう呟く。
「優は、今日はサッカー入れませーん、さよーならー。」
しかし、彼の言葉を聞くも束の間、後方から食い気味に、派手なシャツの上に制服を羽織っている短髪でセットされた髪型の男子が、坂上君の言葉にロボットのように棒読みな言葉を被せた。
「んじゃ、決まりみたいだねー。」
いたずらっぽくニヤニヤする渚ちゃんをよそに、坂上君は、あのバカ、と言った気がした。
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