2-5 儚きことかな男の友情
― 平和な学校生活から一転、見知らぬ路地に立たされる坂上。彼の身に一体なにが…!
坂口 優の場合
「あー失敗した。」
このセリフを言うのは、これでもう何度目か。少し暑くなってきた今の気候で、二時間にわたってこのような苦行を俺に強いるのは、もちろんあいつだけだ。でも女子たちの手前用事もないのに断るわけにもいかず、俺はこうして見たこともない路地の隙間に隠れている。そしてこの場所、そもそも入るだけでも苦労したのに、大きなゴミ箱があって匂いは酷いし、ちょうど日差しが当たる場所なのがまた憎い。場所に関してもあいつはここじゃなきゃ見つかるからーなんて言っていたが、絶対もっとマシな場所あっただろと、思わずにはいられなかった。
事の発端は、およそ五時間前に遡る。突如として早見から呼び出された俺は、非情にも簡単に昼食の輪から、そして放課後のサッカーの輪からも外され、ここに送り込まれた。男の友情というものは、なんて儚いものだろう。
―爪弾き!
女子たちが戦乱の世を生きる中、そんなことが起こっているとはつゆ知らず、男子たちはあの女の子いいなーなどと能天気にも自分の好みを共有していたっ!
だがそんな平和な男子たちの社会にも、絶対に行ってはいけない、「タブー」が存在する。
それは・・・抜け駆けだ。
だいたい男子の好みの幅などたかが知れている。彼らがまず挙げたのは、早見渚を筆頭とする、イケイケグループと思わしき勢力。彼らは密かに、あー皆可愛いなあ、などと話しながらも、まだ誰も声をかけられずにいた。
そんな中降って湧いた、昼食、そして放課後のサッカー仲間、坂上優の裏切り。
男の社会において、密かに自分一人だけ女子と仲良くするという行為は、死すら罰にならないほどの重罪だ。巷では、…女子の集団は怖い、などという定説ができあがりつつあるが、男子の集団もまた、裏切り者への制裁は厳しい。この制裁は通称爪弾きと呼ばれ、女子の誘いを受けた者を昼休みの遊びから一日排除し、集団内を浄化するという効力を持つ。そしてこれを受けた者は、一日ちょっと落ち込むという罰を受けることになるのだ。
そしてそれは、彼らも例外ではなかった。
そう、彼らは許せなかった、いや許せるはずもなかった。女子に興味ないですよアピールをしていた坂上が、クラスのイケイケ勢力のトップ早見から、放課後デートに誘われたことを…!
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