ガストのモーニング

 ガストは、ファミレスの中では、ちょっと安い代わりに味は一段落ちる、というのが私のイメージである。


 ガストは、いちはやくドリンクバーや小盛りのデザートを導入し、今のファミレスの雛形を作ったファミレスチェーンである。しかし、他のチェーンがそうしたシステムを真似するようになると、ガストならではという特徴は失われた。


 そこでガストは安さをウリにした。300円台で目玉焼きハンバーグを提供するようになった。これが私には不評だった。ハンバーグに鶏肉を使うようになったからである。私は鶏肉入りハンバーグが嫌いである。豚も鶏もそれぞれにうまいのに、わざわざ混ぜてまずくする理由がわからない。

 というわけで、もう長いこと、私はガストに行かなくなっていた。


 その後、ガストは低価格路線を改め、今ではハンバーグは600円程度と一丁前の値段を取る代わりに、ちゃんと牛豚ハンバーグを提供するようになった。それでも、他のファミレスに比べると味が一段落ちることは否めない。私は、ハンバーグが食べたいならブロンコビリーに行く。

 もしくは、コスモス等で売っているジョイフルの冷凍のを買って家で焼く。ジョイフルの冷凍は200円程度だから、かつてのガストよりも安く、よりうまいハンバーグが食えるわけである。こうなるとわざわざファミレスでハンバーグを食う必要があるのか? と思えてくる。



 それが、再びちょくちょく利用するようになったきっかけは、今年8月の節電キャンペーンだった。家の電気使用量を減らすために、ファミレスで長居して電気代よりも高い飲食代を払うという馬鹿なことをしていたのだが、そのときよく利用したのがガストだった。

 その理由は、歩いていけるところにあったから。もし、近所にココスやバーミヤンがあったら、私はそっちに行っていただろう。



 とはいえ、ガストはガストでいいところもある。

 ひとつは、全席コンセント完備で、フリーWifiがあること。ノートパソコンやタブレットを持ち込んで作業するには非常にいい環境である。ただし、これら設備については同じすかいらーく系列であるバーミヤンも同じ。バーミヤンの方が総じて味が良く、店の雰囲気もいいから、もし選べるなら、私はバーミヤンを選ぶ。


 もうひとつは、平日朝8時、休日朝7時から開いていること。つまりモーニングがあるのだが、これがかなりお得。500円くらいでドリンクバーとスープバーが付く。つまりはコーヒー飲み放題である。

 コーヒー1杯で満足なら喫茶店のモーニングでもいいが、1杯では明らかに持たないほど長居するつもりなら、ガストのモーニングはかなりいい。家の節電のために金と時間を浪費しに来ている私のような利用客にはぴったりなのである。



 喫茶店は案外、タブレットやノートパソコンを持ち込むのに適していない。喫茶店の利用客には、ノートパソコンの打鍵音が気になるとか、そもそもその存在自体がムカつくという電子機器嫌いな人がまあまあいて、利用が憚られることがある。というのも、喫茶店は案外、席同士が近かったり、音が店内に響いたりして、近くの客の言動が気になりやすいのである。それはそれでメリットもあるのだが。暇潰しに隣の席の客の世間話を傍受できるとか。


 その点、ファミレスではそういうことを気にする必要がない。席と席との間隔が広いし、打鍵音が気になるほど音が響くわけでも静かでもない。そもそもコンセントとフリーWifiが用意されている時点で、そういう作業をしてもいいよと言われているようなもんである。



 しかし、ガストでノーパソやタブレットを広げて作業している人は意外と少ない。

 かつてのガストは学生のたまり場だったが、今のガストの利用客は、大半が年寄り。休日になると家族連れが増える。いくつか店舗を回ってみたが、どこも客層は似たような傾向だった。

 ついでなので比較すると、ココスは奥様連中が多い。びっくりドンキーはほぼ家族連れ。サイゼリアは多種多様だが家族連れが多めか。

 ビジネスマンの一人客はやはり喫茶店に行くようである。もしくはマクドナルド。マクドナルドは作業している人が多い。ロイヤルホストも昼はビジネスマン多めだが、作業している人はまずいない。

 バーミヤンは1店舗しか行ったことがないので何とも言えないが、近所の工場や会社の人が昼に何か食べに来るという客が多いようである。


 もちろん、こうした客層の傾向は立地に大きく影響される。大学の近くのココスだったら、当然大学生が多くなる。上記の感想は、私がいくつかの店舗に立ち寄って感じた総合的な印象である。



 最近、すかいらーく系列では、配膳ロボを導入する店が増えてきた。しゃぶ葉は結構早くから導入していて、今では普通にロボが肉を運んでくるが、今年の8月あたりから、ガストやバーミヤンでも導入する店が増えてきている。


 しかし、どこの店もいまいち持て余している印象である。ロボに店員が付き添いでやって来て、ロボの意味が全くない運用のされ方をしている店が大半。もっと酷いのになると、店員がロボを手押しして料理を運んでくる。

 ロボの教育もいまひとつ進んでいないようで、なにもないところで「どいて欲しいにゃん」と言って立ち往生していたり。

 客もロボ慣れしておらず、ロボの道を塞いで「お前がどけ」と言わんばかりにふんぞり返るおっさんがしばしばいる。……あんたがどれだけ偉いか知らないが、ロボは絶対退かないから、その張り合いは無駄である。


 そもそも、忙しくないときはロボを使わず店員が料理を運び、忙しくなってきたらロボを使うという方針自体に問題があるような気がする。むしろ、忙しくない時にロボを運用して、問題がないかチェックしたほうがよくないだろうか。忙しくなってからいきなり本稼働しようとするから問題が起きるんじゃないかと思う。


 しゃぶ葉ではすでにちゃんと運用されており、ロボは自動でガンガン肉を運び、客はロボが来たら道を開け、さっさと肉を受け取って完了ボタンを押して帰している。そのノウハウをガストとかにも伝えればいいんじゃないの? と思うのだが。

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